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山岳帽(Bergmütze)

ご無沙汰しています。今回はドイツ軍山岳猟兵(Gebirgsjäger)のトレードマークである、山岳帽(Bergmütze)をアップします。
山岳帽1
最初に山岳帽の起源について調べました。まずはWikipediaから引用したいと思います。
山岳帽は1868年にオーストリア=ハンガリー帝国軍の新しい野戦軍装(Feldadjustierung)規定において、歩兵、砲兵、騎兵共通の野戦帽(Feldkappe)として山岳帽が採用された。この時点で特徴的な防寒覆いを備えていた。1871年、ひさしを革で補強した新型野戦帽が歩兵および砲兵向けに採用された。
-Wikipedia「山岳帽」より-


Feldkappe1.jpg  

こちらが、ネットで拾ったオーストリア=ハンガリー帝国軍国土防衛隊のFeldkappeの写真です。
防寒覆い=フラップが前合わせになっている点はドイツ軍の山岳帽と同じです。

Alpenkorps1.jpg 
こちらは帝政ドイツのアルペン軍団(Alpenkorps)兵士。写真ではよく分かりませんが、同じく山岳帽を被っています。

第一次大戦後、山岳帽はスキーや登山時の防寒帽として民間でも使用されることになります。
1930年代のスキーウェアの広告
60.jpg 

防寒性にすぐれた山岳帽はヴェルサイユ条約を破棄し再軍備を進めるナチスドイツ軍でも採用されることになります。

Bergmutze_0.jpg 
こちらは1935年発行のREIBERTに掲載されている制服と階級章のイラスト。(STEINER氏提供) 
この頃には戦中と同じデザインの山岳帽が既に存在していたことが分かります。

ところでライヒスヴェアからヴェーアマハト=国防軍に移行するに伴い、1934年2月に制定された国家鷲章を制服の右胸や帽子に縫い付けることが義務付けられましたが、このイラストにはそれ以前の装備も記載されている点が興味深いです。

Bergmutze_1.jpg 
こちらの写真もSTEINER氏からの提供です。エーデルヴァイス章がまだ部隊章として正式に採用される前の山岳猟兵です。(エーデルヴァイス部隊章の採用については後述)
なお山岳猟兵が着用しているのは襟の色と胸の国家鷲章からM34野戦服と思われます。(袖は礼服と同じ折り返し?)

それでは山岳帽の詳細部分を見ていきましょう。

山岳帽1-2 
山岳帽には様々なバリエーションがありますが、こちらはオーストリアやバイエルン地方出身の山岳猟兵に支給されたオストマルクタイプで、他に比べてバイザーが短く、フラップが幅広になっているのが特徴です。

山岳帽5-2 
ベンチレーション用の穴は2x2=4個です。穴が4個というのは、山岳帽の特徴の一つとなっていますが、2個、あるいは無しの山岳帽も存在しています。

山岳帽15-1
初期の青味の強いフィールドグレイのラシャ生地で作られています。


山岳帽2 
帽章は戦中に作られたフィールドグレイのT字型です。他にも初期のダークグリーン地に白糸で刺繍したT字型、鷲章と国家章(コカルデ)が別パーツになったタイプ、M43規格帽に多い逆台形(Trapezoid)の帽章があります。
この帽子のフラップの前合わせは角ばったタイプですが、1930年代の山岳帽のフラップは丸みを帯びています。


山岳帽28 
帽章のクローズアップ。T字型は手縫いが基本ですが、以前紹介したM43規格帽の縫い付け方とは違います。

山岳帽29 
この山岳帽の前合わせのボタンはタグア椰子(独 Steinnuss)で作られています。南米エクアドル産のタグア椰子は別名、象牙椰子(英 Ivory nut)と呼ばれており、古くからヨーロッパで象牙の代用としてボタンやアクセサリーに使用されていました。タグア椰子の他にアルミや樹脂製ボタンのバリエーションもあります。


山岳帽14 
ボタンを裏側から見たところ。糸通し用の溝が掘られています。

山岳帽7-1
ボタンを外してフラップを下したところ。フラップが幅広になっているので、頭部の大部分を覆うことができます。


山岳帽16   
第2山岳猟兵師団第79砲兵予備大隊のオリジナルアルバムから。右側の兵士が被っている山岳帽はフラップが下がった状態です。

続いてエーデルヴァイス部隊章

山岳帽12-2 
山岳帽のエーデルヴァイス部隊章は1939年5月2日に野戦服用記章と共に制定されました。(H.V.39B, Nr. 196)。
本体は亜鉛合金製で中心部分は鉄製の2ピース構造になっております。山岳帽に縫う糸を通す穴が5つあり、帽子へ直接糸で縫われていますが、初期はダークグリーンの台布が間に入っています。

山岳帽5
なお、エーデルヴァイス部隊章の起源についてWikipediaには下記のような記述があります。
両国(注:オーストリア=ハンガリー帝国とドイツ帝国)の山岳猟兵は薄雪草(エーデルヴァイス)の部隊章を共有している。それは1915年5月、南方戦線においてイタリアの攻勢に対し守備していた国土防衛隊にアルペン軍団が救援として駆けつけたとき、国土防衛隊が感謝の意を込めて彼らの部隊章(エーデルヴァイス)をアルペン軍団の兵たちに送ることで敬意を表したことに始まる。エーデルヴァイスは1907年、オーストリア=ハンガリー帝国国土防衛隊のシンボルとして、皇帝フランツ・ヨーゼフI世により制定された。これら部隊は制服の襟にエーデルヴァイスを着けている。

このようにエーデルヴァイスは元々はオーストラリア=ハンバリー帝国国土防衛隊のシンボルで、後にドイツ帝国、そしてナチスドイツ軍の山岳猟兵の部隊章になったとのことです。

M35tunic52.jpg 
こちらは布製の記章。山岳猟兵の野戦服の袖に縫い付けられています

話は変わりますが、陸軍のM43規格帽は山岳帽をベースに作られたとされています。
M43cap1-1_2016100821202821e.jpg
M43規格帽には山岳帽や略帽にあったベンチレーション用の穴が省略されています。戦争末期になると陸軍の鍔付き帽子はさらなる生産性向上の為、M43規格帽に統一されますが、エーデルヴァイス部隊章は山岳猟兵のシンボルとして終戦まで使われ続けます。

山岳帽8
この帽子の内装はテーラーメイドのような造りになっていますが、このような仕様は他の官給の山岳帽でも見られます。
バイザーの裏面も含めてコットンで内張りされており、制帽のような革製のスウェットバンドが付いています。

山岳帽11 
ライナーに押されたスタンプ。ミュンヘンで製造され同地の被服廠に42年に納品されたことが分かります。サイズは53cmです。それにしてもこの山岳帽の持ち主はかなり頭が小さかったようです。

ところで山岳帽は右耳から1cm上(指一本分)、左耳からは3cm上(指三本分)、右の眉毛から1cm上に被るよう規定されていたそうです。(この規定は略帽の被り方と同じです)

山岳兵1 
当時の写真を見ると、前線でも山岳帽を被っている山岳猟兵が圧倒的に多く、山岳帽に対する拘りというか愛着をすごく感じます。まぁ、さすがに戦闘中はスチールヘルメットを被っていたでしょうけど。
しかし登山(訓練)中も山岳帽を被っている写真を見ると、果たして落石などから頭を保護できたのかと不思議に思ってしまいます。


二人の山岳猟兵が「殺人の壁」に挑む映画、『アイガー北壁』。あの時、ヘルメットを被っていれば・・・

40.jpg 


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山岳帽(Bergmütze) 末期タイプ

 こんにちは、エーデルマンです。週末は台風14号が直撃するかと思いましたが、Uターンして南の方角に戻っていきましたね。今後も矢継ぎ早に台風が来ることは間違いなく、避難することも想定し保存食の準備はしておきたいと思います。

さて、本日は末期の山岳帽(Bergmütze)を取り上げたいと思います。

Bergmutze_late1.jpg
以前、こちらでステレオタイプの山岳帽を取り上げましたが、今回紹介するのはM43規格帽(Einheitsfeldmütze M43)にエーデルヴァイス帽章が付いたタイプとなります。

Bergmutze_late6.jpg
M43規格帽は山岳帽を見本としておりデザインされており、Einheits(統一規格)+ Feldütze(野戦帽)という名前の通り、すべての野戦帽の規格を統一、生産性の向上を目的に1943年6月に導入されました。

Bergmutze_late8.jpg
当然、統一される対象には規格帽の親とも言える山岳帽も含まれており、このようにM43規格帽にエーデルヴィス帽章を取り付けた帽子が山岳猟兵には支給されました。

Bergmutze_late5.jpg
正面からの画像です。山岳帽の帽章はT字が多く、逆三角形(Trapezoid)は規格帽になってからの採用となります。ボタンのバリエーションは、茶色いタグア椰子製ボタンの他、金属や樹脂、動物の角製ボタンなど多岐に渡ります。
Bergmutze_late7.jpg 
帽章のクローズアップ。イタリア製ウールに刺繍のタイプ。ボタンは動物の角製のようです。

Bergmutze_late11.jpg
横から見たところ。よく見るとエーデルヴァイス帽章の取付方向が反対・・・コレクターが付け間違えた???
Bergmutze_late3.jpg

M43規格帽なのでベンチレーションホールは当然、省略されています。
Bergmutze_late12.jpg
後頭部。いたって普通です。

Bergmutze_late9.jpg
トップは一枚布で作られています。
Bergmutze_late10-1.jpg
インナーはアノラックや末期水筒の裏地と同じ生地です。

M43_tunic_9.jpg
写真は『FELDBLUSE The German soldier's field tunic 1933-45』からお借りしたもので、ノルマンディで英軍兵士に荷物検査を受ける山岳猟兵。左端の山岳猟兵が被っている帽子はつばの広さからM43規格帽ベースの山岳帽のようです。

Feldbluse: The German Army Field Tunic 1933-45
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最期にエーデルヴァイス帽章ですが、花びらの方を前に取り付ける例もあったようで、ちょっと安心・・・

Gebirgsjäger Die Woche magazine cover 

追記:エーデルヴァイス帽章を反対向きに縫い付けるのは、山岳ガイド(Heeresbergführer)の証って書き込みを見つけました。

We had the honor at one of our local collectors gatherings to have a German G/J veteran attend. He was an Austrian Lt. and had photos of him in uniform...his edelweiss was sewn on in the reverse direction......he explained it meant that he was qualified for high mountain guides and that was their symbol for this qualification.

「地元のコレクターの一人がドイツ軍の山岳猟兵だった老人を集まりに連れてきた。彼はオーストリア人の元少尉で軍服姿の写真を見せてくれたんだけど、彼のエーデルヴァイスは反対方向に縫われていたんだ。彼は高地山岳ガイドの資格を持っており、これ(反対方向のエーデルヴァイス)はその証だと説明したんだ」

さらに追記:永瀬一式さんのコメントの通り、オストマルク(オーストリア)出身者は、エーデルヴァイス帽章を花が前向きになるよう付けた説が有力のようです。下記はオストマルクの首相エンゲルベルト・ドルフース(1934年7月25日にナチス党員により暗殺)とその山岳帽(Feldkappe)及びオストマルクSAのケピ帽です。いずれもエーデルヴァイス帽章の花が前向きになっています。

Bergmutze_late14.jpg

大ドイツ主義を唱えるナチスドイツにより1938年、オストマルクはドイツに併合されドイツ民族の一員に加わりますが、一方でオストマルク国民はドイツ人の中でも落ちこぼれの「二流市民」として扱われることになります。 普墺戦争以前から、ドイツ民族間でも北のプロイセンと南のバイエルンとの対立意識などから、オストマルク出身の山岳猟兵は、敢えてエーデルヴァイス帽章を反対に付けることでオストマルク人としてのプライドや誇りを表したのでは無いでしょうか?


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