M35書類ケース (Meldekartentasche 35) Part1

こちらは、35年型書類ケース(独;Meldekartentasche M35、英:Report case)です。
地図を入れるという用途が主だった為でしょうか、コレクターの間ではマップケースで通っております。

mapcase01.jpg 
黒く染められており、アーモポーチと同じ模様で型押しされています。同じ型で茶色で染められたバージョンや、フラップが長いタイプ、バックルタイプなど数えたらキリがありません。共通して、ペンホルダーとスケール(定規)を入れるポケットがついております。裏側にはウエストベルトに吊る為のベルトがあり、バックルで調整することができます。
(このベルトは保管方法がマズかったのか、クセでひしゃげてしまっています)

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中は二つに仕切られております。

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こんな感じで腰から吊り下げます。通常は左側に吊ることとされていましたが、この兵士のようにアーモポーチやホルスターを左側に持ってくる場合、右側もしくは後ろ側にも吊ることもありました。

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又この下士官のように、ベルト長を調整してアーモポーチの下に吊ることもできました。この写真の解説で、このようにしたのは狙撃兵の露骨な標的にならない為~とありますが、これだけ書類ケースが目立つとアーモポーチを付けたところで、ほとんど変わらないのでは?

書類ケースは、部隊指揮官や先任下士官のみならず、砲撃観測員、信号兵、野戦憲兵、伝令兵と幅広く支給されました。

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有名なスターリングラード攻防戦における偵察小隊の写真です。詳細な階級は不明ですが、メガネをかけた兵士(小隊長?)と弾薬箱をもった兵士(軍曹?)が持っています。

さて、次回の日記では書類ケースの中身について、いろいろ検証してみたいと思います。

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M35書類ケース (Meldekartentasche 35) Part2

前回の“M35マップケース(Meldekartentasche M35) その1”の続き、中身についてです。
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まずは、こちらが本来のマップケース。

map0.jpg  
文字通り、マップ=地図を入れるケースです。
書類ケースにピッタリのサイズで作られております。

次はお約束の地図です。
map13_20121015050551.jpg  
実際の作戦地図としてに2万5千分の一の縮尺が使用されました。


鉛筆と消しゴム及び葉書


map21.jpg   

ドイツの鉛筆と言えば、“FABER CASTELL”ですね。最古の文具メーカーです。
折れやすい葉書は隊員の分を、まとめて持っていたのでしょうか? 鉛筆はホルダーに挿すことができます。

さて、ペンホルダーの左右にもポケットがあります。
まずは、向かって右側のポケットに入れるのはこちら。

map23.jpg   
分度器です。こちらについては別の機会に詳しく・・・


map19.jpg  

向かって右側のポケットは分度器を収納する為のもの。


map11_20121015045148.jpg
こちらも分度器のようですが、地図上で使うものですね。懐かしいセルロイド製です。

map20.jpg  
こちらも向かって左側のポケットにピッタリ収まります。

続きは、「書類ケース Part 3にて」


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M35書類ケース (Meldekartentasche 35) Part3

さて、前回の続きということで書類ケースの中身を見ていきたいと思います。

と、その前に↓のクリノメーターについて調べましたので非常に簡単ですが解説を。
正式名称は「Deckungswinkelmesser」といい、直訳すれば「Deckungs=射界」「winkelmesser=分度器」となります。

map23.jpg  

scale.jpg
勾配を測ることができ機関銃や迫撃砲の射角を決める際に使用されたようです。

なお、H/6400という刻印は単位が6400ミル(ドイツではシュトリヒ)であることを表します。
ミルは通常の360度を精度を上げる為にさらに6400等分したもので、ドイツの照準測定器の基準角となっております。
(小林源文著『武器と爆薬』より)

武器と爆薬―悪夢のメカニズム図解武器と爆薬―悪夢のメカニズム図解
(2007/04)
小林 源文

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使い方はこのようになります。
map7.jpg 
『武器と爆薬』に、経験豊富な指揮官は、銃剣と指で概算目測できたとありますのでクリノメーターが無くてもなんとかなったのかも知れません。

w078.jpg
目盛りが見えます。

次々と中身を紹介していきましょう。

Compass2.jpg  
こちらは必需品ですね。コンパスです。シンプルで丈夫そうです。蓋の裏側にはコンパクトのようなミラーが付いており、目標物と針を同時に見ることができます。実はコンパスでも射角の測定が可能ということをTVドラマ「ザ・パシフィック」で知りました。

dnieperoy1.jpg
左端の伍長がコンパス(クリノメーター?)を使って射角を測っているように見えますが、気のせいでしょうか?

次はキルビメーター(マップメジャー) ドイツ名で「kurvenmesser」です。


map22.jpg
表が2万5千分の1、5万分の1、7万5千分の1、20万分の1
裏が2万分の1、4万分の1、8万分の1、10万分の1の距離を測れるようになっています。

分度器各種

map3.jpg  

map1.jpg  
こちらも6400ミルに対応しております。 いずれもセルロイド製

map2.jpg  
テンプレートのようですが、用途はさっぱり判りません。


map24.jpg  
スライドルール・計算尺です。コンピュータの無い時代はこれで換算していました。

map9.jpg  
こういう教書を読めば、地図の読み方が理解できるようになっています。(その前にドイツ語が・・・)

map10.jpg
地図をサっと広げて地形を読み、正しい位置を割り出せるというのは今も昔も変わらず男にとってのある種の憧れではないでしょうか。


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M35書類ケース (Meldekartentasche 35) Part4

書類ケースの中身のアップデートとして、今回は筆記用具にスポットライトを当てようと思います。(代表的なモノだけですが)

mapcase5-1.jpg

当時の一般的な筆記具といえば鉛筆ですね。ドイツいや世界的な鉛筆メーカーと言えば、ファーバー・カステル(FABER-CASTELL)をおいて他には無いでしょう。
ファーバー・カステル社(当時の社名はA.W.ファーバー社)は1761年に家具職人のカスパー・ファーバーによって、ニュルンベルグのシュタインで創設されました。六角形の鉛筆や社名を軸にスタンプするといった現在の鉛筆にも通ずるデザインは同社の発明によるものです。

HIST-NEU-bleistiftma.jpg  HIST-NEUlotha2.jpg
ちなみにファーバー・カステル社の〝カステル〟は四代目ローター・フォン・カステルの孫娘オッテリーと結婚したカステル伯爵の名前が由来です。ファーバー家に婿入りしたカステル伯爵は不慣れな鉛筆製造業に最初はとまどいながらも、やがて優れた商才とリーダーシップを発揮し、1905年に自らの名前を冠した緑色の〝カステル9000番〟鉛筆を発表、大ヒット商品となります。この鉛筆によりA.W.ファーバー社の名はますます不動のものとなり、鉛筆の緑色は同社のシンボルカラーに、商品名のカステルは社名の一部となります。(1942年に社名をA.W.ファーバーからファーバー・カステルに変更)

faber_c1.jpg

ところでヨハン・ファーバー(JOHANN FABER)やエバーハード・ファーバー(EBERHARD FABER)というブランドも存在しています。こちらはコピー商品では無く、A.W.ファーバー社が19世紀中ごろに海外(北米・南米)市場に進出した 際、現地に設立した子会社が独立したブランドです。品質は本家に勝るとも劣らずだったので、のちにA.W.ファーバー社とは市場のシェアをめぐって競合するよ うになります。(ヨハン、エバーハードはローターの実弟の名前です。後年、2社はファーバーカステル社に吸収合併)

pencil1.jpg

さてファーバー・カステル社の説明はこれくらいにして鉛筆の紹介です。この4本の鉛筆は書類ケースを購入した際、一番上の写真のようにペンホルダーにささっていました。一番上はエバーハード・ファーバー社の1717番、その下がA.W.ファーバー社のカステル9101番の鉛筆です。(その下の2つは不明)

pencil10.jpg
   pencil11.jpg  
A.W. ファーバー社の鉛筆ケースです。カステル伯爵が考案した〝馬上槍試合をする騎士〟の絵と城のトレードマークが描かれています。余談ですが、左側の倒されて いる騎士が持っている黄色い槍(鉛筆)は当時最大のライバルであった「コヒノール(KOH-I-NOOR)」の鉛筆を意味しているとか。緑色の槍(鉛筆)はもちろんカステル9000番ですね。

pencil9.jpg  
このケース、A.W. FABER "CASTELL"とロゴがあるので1942年に社名が変更される前の製造だと思います。ケースの中にはカステル9000番の鉛筆が12本入って売られていたようです。(なお、A.W.は創設者カスパー・ファーバーの息子の名前「Anton Wilhelm」から来ているそうです)


castellep_20130524080910.jpg

こちらは当時のカステル9000番です(ネットにあった写真を拝借しました)


さて、次は鉛筆削りです。
           

sharpner10.jpg
革製ケースに入った真鍮製の鉛筆削りでファーバー・カステル社のライバル、コヒノール社製です。鉛筆を削る穴が二つあり、それぞれに長短の刃が付いています。

sharpner16.jpg
当時の広告には刃の使い分けによる芯の削り方のイラストが載っています。1と3はすぐに折れそうですね・・・

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刻印のクローズアップです。「TUTIOR JUWEL PATENT MADE IN GERMANY」の刻印があります。この「TUITOR JUWEL PATENT」はA.W.ファーバーや他社の鉛筆削りにもあるので2つ穴に対する特許かも知れません。

sharpner15.jpg

こちらは大戦当時使われていたオーソドックスな形の鉛筆削りです。輸出用でしょうか?上のものにはGERMANYの刻印があります。

次に消しゴムも必需品ですね。


eraser3.jpg  

どれも小型で使いやすそうです。よく見かけるのは〝Rona〟と〝KORREKTOR 500〟でしょうか。

最後の筆記用具は色鉛筆です。ドイツ軍では地図にマーキングをする際、色鉛筆を使いました。

map2_20130525095131.jpg
上記はスターリングラード近郊の1942年12月24日の前線地図です。青もしくは黒は友軍の前線、赤は敵の前線を示すようです。

map3_20130525102845.jpg
こちらは手書きの地図です。赤い矢印はソ連軍の攻撃で真ん中にはPanzer T34の文字が!青い矢印は友軍を示すようですが、逆向き・・・撤退したのでしょうか?

colorpen12-1.jpg   
上記のような地図にマーキングするのは色鉛筆の出番となります。上記はメカニカルなペン、いわば当時のシャープ・ペンシルであるエバーハード・ファーバー製「TAKTIK No.542」です。革製のケースに赤・青・黒・黒鉛のペンと替芯ケース、消しゴムが収納できるようになっています。

taktiketui06wf4.jpg taktiketui07qa8.jpg
当時の広告。『Taktik-Etui 542』というのが正式名称です。
colorpen17.jpg
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頭部の丸い部分を回すと芯が出てくる仕組みになっています。なお黄色いペンは黄色い芯ではなく黒鉛です。

 meldeblock01.jpg
こちらはケースの裏表です。裏側にはベルトループと野戦服のボタンに留める為のホールがあります。


meldeblock02.jpg
エバーハード・ファーバー社のロゴとNo.542の刻印があります。ちなみに540番と541番は通常の色鉛筆のセットとなります。

map1_20130525095104.jpg
「軍は自前の地図ばかり使っていたわけではなく、定期的に更新される市販の道路地図も頼りにした」ということでミシェランガイドにもマーキングされています。

筆記用具とくればノートですね。書類ケースに入っていたのは野戦報告ノート(Meldeblock)です。
meldeblock6.jpg  
野戦報告ノートは書類ケースに必ず入っており、これで行動を本部へ報告することになっていました。ちなみにインクは水に濡れると流れる為、必ず鉛筆を使うこととされていました。

meldeblock1.jpg
一枚目は地図の記号一覧です。裏にも同様になっています。



こちらのフォーマットに部隊の出発、到着地点の座標とその名称、日時や詳細を記入します。
(マウスを画像に当てると作成例が見えます)

meldeblock8.jpg

裏はグリッドが付いており記号を参考に手書きの地図を書き込めるようになっています。

以上、ざっと当時の筆記用具を紹介しました。各国の軍隊ではタイプライターが既に多用されていましたが、前線、特に移動を頻繁に行う歩兵部隊においては、重い・メンテナンスが必要なタイプライターなど無用、やはり持ち運びの容易さで一本の鉛筆に勝るものはありませんね。
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M35書類ケース (Meldekartentasche 35) Part5

ドイツ軍の書類ケースの左側にはヨコ6cm xタテ19cmサイズのポケットがありますが、このポケットに何が入れるのか?コレクターの間では様々な意見が交わされております。

mapcase1-1.jpg

以前このブログでは、セルロイド製の分度器を収納できると紹介しました。

map11_20121015045148.jpg

map20.jpg 

確かにぴったりなのですが、この分度器自体一般的なアイテムでは無く、どうも本来左ポケットに入れるアイテムでは無さそうです。

書類ケースの中身を指示した教本や当時の写真があれば良いのですが・・・

ドイツ軍装資料本を見ると、木製の定規らしきものがポケットには挿入されています。
mapcase7_20160717133714274.jpg


ネットにアップされている写真を調べてみると、木製の定規を収納していることが多いです。

kurvenmesser 01

mapcase6.jpg 

このようなシンプルな定規は多目的に使われるので、書類ケースには間違いなく入っていたでしょうし、サイズ的にも問題ありません。

上記の写真と同じタイプの木製定規を入手しました。
mapcase10-1.jpg
問題なく収納できます。しかし左ポケットの幅は定規には少し大きいし、わざわざ一般的な定規に専用のポケットを作るのかどうか??どうもすっきりしません。

mapcase11.jpg


mapcase12.jpg 

そんなある日、某フォーラムで左ポケットの正規アイテムはSchußweitenmesser(射程距離計)では、というコメントを発見しました。

MAP CASE RULER_EF_#547_1938 
画像検索すると、こちらが“Schußweitenmesser”のようです。
目盛と10万分の一のSchußweiten=射程距離が刻まれています。写真ではスチール製のように見えますが、プラスチックかも知れません。

本当に正規アイテムなのか、左ポケットにぴったりと収まるのか入手して試してみることにしました。(と、簡単に書いていますが、入手するのにかなりの費用と時間を要しました・・・)

mapcase13-1.jpg
こちらが苦労して手に入れた射程距離計です。表側?には Höltgebaum & Heinicke AG Berlin N.W.7(所在地)の刻印、反対側には22cmの目盛り、重火器とその射程距離が刻まれています。材質は薄いスチール製です。


mapcase3_20160717135312978.jpg



mapcase4-1.jpg 
おー、左ポケットにジャストフィットです。全く隙間がありません。
やはり、この射程距離計が正規アイテムなのかも知れません。


mapcase16.jpg

射撃距離計のクローズアップ写真
重火器の種類とそれぞれの有効射程距離の表示があります。

射程距離が短いものから、l.M.W、m.M.Wとあります。

mapcase16_20160717135651568.jpg 
M.WはMinenWerfer=迫撃砲のようです。(lはleichte, mはmittlererの意味でしょうか)

“s.M.G”は言わずもがなですね。
smg.jpg

ちなみに一番射程距離の長いのは15cm K.16 (15cm カノン砲 16型)」で22キロとなっています。

他にもF.K 16(FeldKanone 16型)が表示されているので、このスケールは戦前に作られたようです。
一次資料が無いので断定はできませんが、この射程距離計が書類ケースの標準装備アイテムとしても不思議では無いでしょう。


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注)当時のドイツ軍の装備・生活用品に興味がありますが、特定の団体・思想を支持するものではありません。

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