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兵・下士官用制帽(Schirmmütze)

 こんにちは、エーデルマンです。米大統領選も大詰め、どうやら第46代大統領はバイデン候補に決まりそうですね。ただトランプ大統領もSNSなどで不正票があると主張、法廷闘争まで持ち込むでしょうからまだまだ波乱は続きそうです。

さて、本日は兵・下士官に支給された制帽(Schirmmütze)を取り上げたいと思います。
これまで制帽は興味はありながらも、バリエーションの多さから何となく近寄りがたく、正直見て見ぬフリをしていました。
それが最近、幸運にも素晴らしい制帽コレクションに触れる機会があり、急に興味が出てきて、ついに禁断の制帽を手に入れてしまいました。

ほとんどの方はご存知だと思いますが、ドイツ軍の制帽は官給品と私費購入品の2種類があり、兵・下士官には官給品が支給されますが、将校(と一部の下士官)は自費で揃えることになっていたようです。

ちなみにWikipediaによれば、制帽の定義は組織により制服の一部として着用が定められた帽子全てを制帽と呼び、制帽という形の帽子はない、そうです。
ドイツ語のSchirmmützeはSchirm=鍔、ひさし、Mütze=帽子を組み合わせた造語であり、『鍔付き帽子』が適訳となります。(ただ、このブログでは日本で一般的に普及している"制帽"を使用したいと思います)

前置きが長くなってしまいましたが、今回アップするのは山岳部隊に支給された制帽となります。

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テラーフォルム(Tellerform=皿型)と呼ばれる、典型的な官給品の特徴を持つ帽子でミントに近いコンディションです。トップはトリコット(ウールの編み方の一種)生地でフィールドグレイ色、はちまき(バンド)はフェルト製でダークグリーン色というM36野戦服の本体と襟と同じ配色となっております。
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制帽には肩章と同じく兵科を表す色のパイピングが頭頂部と鉢巻の両端に取り付けられています。パイピングの直径は2mmで、この帽子の場合はライトグリーンで山岳部隊となります。

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鍔はデザイン的なもので、短くあまり実用的ではありません。材質は革のようですが、木材パルプや綿を原料とするバルカンファイバーという素材です。

バルカナイズドファイバーとも。塩化亜鉛で処理して作った硬質耐水性の紙または板紙。原紙を濃塩化亜鉛溶液に浸し,表面を膠化(こうか)したのち,水洗し乾燥するか,膠化したものを数枚重ねて水洗し,ぬれているうちに圧着させて乾燥する。電気絶縁材料,箱,かばん,スポーツ用具の部品などに加工。
-百科事典マイペディアより-

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横からみたところ。鍔が申し訳程度についていることが分かります。チンストラップはエナメル皮革でボタン留めとなっています。

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チンストラップは幅1.5cm、鉄製バックルで長さを調整できます。制帽のチンストラップは飾りとしての要素が強く、実際に使われることはほとんど無かったと思います。

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皿型と言われるだけあって、頭に丸い皿を載せたようなフォルムですね。これとは別に、ザッテルフォルム(Sattelform=鞍型)と呼ばれるトップが持ち上がったタイプもあります。

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帽章。柏葉リースは艶消しアルミ製。その真ん中に旧型のベースが平らなコカルデが付いています。

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国家鷲章もアルミ製で規定どおりの位置に取り付けられています。こちらは1936年に導入された新型帽章で、旧型は翼が短く材質がニッケル製となっています。

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内装は褐色のコットン製。菱形に縫い目のある箇所にサイズスタンプ”55 1/2”が押されています。この帽子は失われてしまっていますが、通常セルロイド製のシールとネームポケットがあり、所有者の名前を書いた細長い紙を入れることができます。

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鍔の裏側は内装と同じ色に塗装されています。スウェットバンドは人工皮革で紙のようにペラペラです。白い紙が見えますが、保管時に型崩れを防止する為に入れられたもののようです。

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スウェットバンドの裏のスタンプ。1938年Clemens Wagner製です。CW社は1898年創業のBranschweigに本社のある会社で陸軍や空軍ほか、武装、一般親衛隊の帽子も製造していました。

製帽のメーカーとしてはEREL社が有名ですが、当時のドイツ(含オストマルク)には個人商店も含めると90社以上あったようです。

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この帽子のライナーには第100山岳猟兵連隊第一大隊第4中隊のスタンプが押されています。

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第100山岳猟兵連隊については、こちらで記事にしております。写真のFriedrich伍長が被っている制帽はザッテルフォルムで生地もドスキンのようなので官給品では無くオーダーメイドなのかも知れません。


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兵・下士官用制帽(Schirmmütze)その2

こんにちは、エーデルマンです。3連休の中日いかがお過ごしでしょうか?政府からは我慢の3連休と言われていますが、昨日・今日のような快晴だと我慢できずにGo toしてしまうのは仕方が無いですね。しっかりと感染対策をして外出しましょう。

今回も前回に続き、制帽(Schirmmütze)を記事にしたいと思います。

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こちらはテラーフォルムの兵・下士官用で、ライヒスヴェーアからヴェーアマハトへ移行直後に生産された制帽と思われます。

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1939年製の制帽との比較。鉢巻のフェルトの色が左から右に変わるのは、野戦服の襟が1935年10月にモスグリーンからダークグリーンに変更されたタイミングと完全に同期しています。(襟の変更の時期についてはM34野戦服の年表を参照下さい)

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こちらは山岳部隊へ支給された制帽ということで入手しましたが、パイピングの色が1938年製の制帽と比べると若干暗いグリーンの為、軍属(Beamten)向けの可能性もあります。なおドイツ軍の軍属についてネット上の説明を引用します。

ドイツ軍における軍属のほとんどは将校と同等にランク付けされました。中には上級下士官(Unteroffiziere mit Portepee)ランクも存在していました。彼らは陸戦法によれば軍隊のメンバーでしたが、ドイツ軍の定義では「兵士」ではありませんでした。軍属としての権限はその専門分野に限り拡大、兵士とは異なり、その権限は上位の者にまで及ぶものの、部隊の指揮を執るまでは不可能でした。(中略)人事、供給、ロジスティクスの機能を実行するものに加えて、牧師、医師、バンドマスター、獣医も軍属でしたが、彼らの制服は基本的に区別できる記章を持つ現役の将校のものであるという点で他の役人のものとは大きく異なりました。
-Administrative Officials (Beamten) - Landser-
※Google翻訳なので不自然な表現があることはご容赦ください。

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陸軍工廠の主計官。襟章は士官用ですが、肩章から上級曹長と思われます。(軍属はランクに限らず自費で勤務服・制帽の購入が義務付けられていましたが、特別に士官グレードの衣服・徽章を選択することが出来ました)

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こちらは米軍が1943年に作成した国防軍の兵科色(Waffenfarben)の一覧表で、山岳猟兵(Gebirgsjäger)と猟兵(Jäger)がライトグリーン、軍属(Beamte)がダークグリーンとなっています。

少し脱線しますが、この表の山岳猟兵と装甲擲弾兵(Panzergrenadiere)の兵科色があべこべになっているのでは?と思った人は山岳オタクです。

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この図はドイツ語のWikipediaの"Waffenfarben des Heeres (1935–1945)"の兵科色一覧から抜粋です。(※Panzergrenadiertruppe ab 1943は1942の間違い)

現在はこの配色が正しいと認識されており、実際、当時の略帽のソーターシュや肩章のパイピングもこの通りとなっています。ただし、山岳の肩章についてはJägergrünとWiesengrünが混在して使われていたようで、同じ部隊で2色が使用された例も散見されます。(恥ずかしながら今までJägergrünという表現があることを知りませんでした)

参考までに山岳=ライトグリーンとなったのは、39/40年のドイツ軍の資料に"Hellgrün(明るい緑):Jägerbataillon der Infanterieregimenter, Gebirgs-Jäger-Regimenter"とあった為だが、これは当時の誤記であり、本来この二兵科は異なったグリーンの兵科色で区別される規定になっていた、とドイツ軍研究家の方から情報をいただいたことを付記します。恐らく、その資料を入手した米軍がライトグリーンと直訳、現在に至ったのでは無いかと思われます。
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それでは話をこの制帽の兵科色に戻しましょう。
後頭部の真ん中のパイピング(矢印)に注目下さい。この部分のパイピングはトップに隠れる為、オリジナル状態が保たれ易く、兵科色の判断にも役立ちます。明るいグリーンの色合いから軍属では無く山岳部隊と思いますがいかがでしょうか?

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皿がトップ入っているかのような形が、テラーフォルムと言われる所以です。中央が高い新しいタイプのコカルデが付いています。

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内装は典型的な褐色のコットン製で鍔の裏側はタン塗装となっています。セルロイド製のシールが残っており、サイズスタンプ”56”が押されています。

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最期に製帽の歴史について少し記述したいと思います。

鍔付き帽子の原点はプロイセンが1867年に導入した士官帽とされていますが、当時はチンストラップが無く、トップも低いシンプルな形でした。

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M1867制帽です。鍔付きは士官用で兵用は鍔無しでした。プロイセンのコカルデが付いていますが、当時は領邦国家体制だった為、ドイツ国家色(赤白黒)のコカルデはありません。(1871年のドイツ統一後、国家色のコカルデが頭頂部に付くようになります)

第一次大戦前にフェルトグラウへの変更(1907)、チンストラップの導入(1910頃)、またトップも筒型からテラーフォルムやザッテルフォルムの原型と言える形状への変化も見られます。

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第一次大戦前から戦中にかけて制帽は左から右に変化していきます。なお、制帽の鉢巻が青色だったり赤色と目立つ色だったのは、当時の戦場は黒色火薬の使用で煙が蔓延する中で士官の居場所を把握する為だったようです。第一次大戦では小銃の性能が向上、目立つ色は狙撃の標的になり易い為、フェルトグラウなど目立たない色に変更されます。


一連の写真は『German Army Visor Caps 1871-1945』からお借りしました。制帽の歴史を豊富な写真で説明しており、大変勉強になります。(加えてこちらのサイトも参考にしております)

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柏葉リースはヴァイマール共和国時代、アドラー(国家鷲)は1935年10月に採用されます。左が旧型のニッケル製の帽章で、右が新型のアルミ製の帽章です。

製帽は服と同じく官給・私費購入に関係なく改造、少しでも恰好良く見せる工夫がいたるところで見られます。今回は無改造の官給品を紹介しましたが、今後、将校用やクラッシュキャップなども入手する機会があれば順次アップして行きたいと思います。


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