ストレートスコップ (Kleines Schanzzeug)

1943年冬の東部戦線。赤軍は「ウラー」の雄叫びと共にドイツ軍の塹壕になだれ込み、接近戦の火ぶたが切って落とされた。こんな時は単発のライフルは全く役に立たたず、短機関銃も全弾撃ち尽くしたあとは弾倉を交換している暇などない。銃剣やヘルメット、その他手近にあるものはなんでも武器にして闘わなくてはならず、食うか食われるかの原始的な戦いが繰広げられる。 ― フランツ二等兵は予めベルトに挟んであったスコップを抜き、敵の攻撃を待ち構えた・・・

ノンフィクション風の文章で始まりましたが、本日のネタはドイツ軍用スコップ(Kleines Schanzzeug)です。
歩兵の重要な任務、すなわち塹壕堀りの必需品であるスコップですが、武器としても戦場では頻繁に使用されました。

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当時の写真では前線に近いほど、とっさの場合に取り出しやすいようスコップをベルトに挿している兵士が多く写っています。
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超有名なアルデンヌ攻勢の親衛隊員も白兵戦に備えてスコップをベルトに挿しています。

このような携帯方法とその目的については、幼年時の軍装の教科書であるタミヤのパッケージには一切書かれておらず、子供の頃は純粋にスコップ=100%穴堀りの道具であると信じていました。しかし大人になるにつれ、いろいろ学んでいくうちに武器としての用途を知った時のショックはかなりのものでした。スコップを武器として人体に行使した場合、凄まじいほどの打撃力により想像するも恐ろしい結果になったでしょう。ブレードの淵などそもそもは土を掘りやすくする為なのか、グランダーで刃みたく削ってますからね・・・

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スコップで機銃陣地を構築するドイツ兵。全長50cmと、一般的な穴掘り用のショベルに比べて短く、深さ1メートル以上の塹壕を掘るのは、かなり骨の折れる作業だったと思われます。

下記はドイツ軍ストレートタイプのスコップです。
平たい四角形のブレードはヨーロッパではポピュラーなスタイルで、ドイツ軍も第一次世界大戦から採用しておりました。

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アムトや製造年の刻印はありません。メーカーマークでしょうか?スペードの中にAB&Cが入った図柄があります。

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ブレードのスポット溶接と柄へのリベット止めがドイツ軍スコップの特徴です。

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ベルトに挿さずに携帯する場合は、専用ケースでベルトに吊ります。

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こちらは人造皮革(圧縮されたボール紙製)のスコップケース(Trager)。43年製。

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銃剣と一緒に吊るケースが多いです。(タミヤのフィギュア模型で非常にポピュラーですね)

なお、ストレートタイプ以外にも下の写真のような折りたたみ式のスコップをドイツ軍は使用していました。
(こちらは未入手なので又の機会に・・・)

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折り畳み式スコップ (Klappspaten)

折り畳み式のスコップがやっと届きました。フランスを出発して到着するまでかれこれ3ヶ月です。オークションで落札したのですが航空便が高かったのでケチって船便で送ってもらったら、3ヶ月もかかってしまいました。
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折り畳み式スコップです。1938年11月12日に採用されました。

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折り畳んだ状態で人工皮革製キャリングケースに収納されており、そのまま腰に携帯できます。

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ヒンジの部分を延ばすと全長68cmのスコップとなります。スコップというよりショベルという表現が適切かも知れません。

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ヒンジ部のアップです。ベークライト製のネジで固定します。
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左が戦前から使われているストレートスコップ。折り畳み式に比べて生産工数も少なく終戦まで作り続けられました。
     shovel127.jpg
折り畳んだ状態ではストレートスコップとほぼ同じ長さですが、伸ばすと15cmほど長くなります。
支点(ブレードと柄の接合点)と力点(柄の先)の距離が長いとそれだけ掘るのがラクになります。小学校の時に習ったてこの原理ですね。
またブレードの先が尖っているので地面に突き刺して掘りやすくなっています。

shovel22.jpg
ブレードには“gyr 1942”の刻印があります。(gyrはSolingenにあるDeltawerk社のコード)

【キャリングケース】

 shovel9.jpg shovel10.jpg


折り畳みスコップ用のキャリングケースです。ほとんどの部分は人造皮革(圧縮した紙=Presstoff)で作られていますが、一部ベルトループなどは革製です。
裏面にはケースをウエストベルトに通すループと銃剣を挿すベルトがあります。
キャリングケースには前期型と後期型があり、こちらは後期型となります。


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写真に写っているのは前期型のケースです。


shovel126.jpg
上蓋を開閉してスコップを取り出します。前期タイプのケースにはこの蓋がありません。


shovel128.jpg  shovel129.jpg
収納ケースには“XC 41”の刻印と内側にXC 41およびWaAのスタンプがあります。


Bild 183-B22173
ストレートスコップ同様、近接武器としても用いられました。
白兵戦時にすぐに取り出せるよう、ウエストベルトに挿している兵士の写真をよく見かけます。

Bundesarchiv_Bild_101I-695-0403-31,_Warschauer_Aufstand,_deutsche_Soldaten_neben_Brunnen


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折り畳み式スコップ用キャリングケース (Träger für Klappspaten)

皆さんこんにちは。週末恒例のブログ更新です。以前折り畳み式スコップ(Klappspaten)と共に紹介したキャリングケース(Träger)ですが、今回別のタイプが入ったので初期・後期の2つを比較してみたいと思います。

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これまで私の認識では上の写真だと、左が初期で右が後期だったのですが、どうも海外のコレクターの認識は逆みたいです。一般的に右の上蓋付きの方が先に作られたのでファーストモデル、左が後なのでセカ ンドモデルと呼ばれています。
それに合わせ、ここでも上蓋付きをファーストモデル、蓋無しをセカンドモデルとします。


       Fshovel11.jpg    Fshovel2.jpg

折り畳み式スコップは1938年11月12に採用されましたが、キャリングケースがいつ採用されたのか、どの時点で生産が切り替わったのかははっきりとしていません。とりあえず2つのキャリングケースの違いを見ていきましょう。

 shovel9.jpg      Fshovel3.jpg  

ファーストモデルはスコップが飛び出ないよう上蓋が付いていますが、セカンドモデルは蓋が無く、代わりに幅広の革ベルトで押さえるようになっています。セカンドモデルが後に作られたのであれば、上蓋の材料分を省力化したと言えます。


     shovel10.jpg      Fshovel4.jpg

後ろから見るとファースト・セカンドモデルともにウエストベルトと銃剣を通すループが存在することが判ります。この銃剣用のループは柄付き手榴弾を運ぶのに使われたりしたようです。

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ストレートスコップ同様、キャリングケースに銃剣を挿した写真は意外と少なく、このような写真は稀です。


Fshovel25.jpg Fshovel26.jpg
ベルトループにあるポッチ金具でウエストベルトを外さずにケースの取り外しが出来るようになっています。

ベルト側                                        地面
  Fshovel22.jpg
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折り畳み式スコップはキャリングケースの上からスコップを挿し込みます。一方ストレートスコップは下から。ストレートスコップの場合、キャリングストラップを結ばなければストンと落ちますし、ストラップが切れてしまうと以後スコップを保持することができません。折り畳み式の方はケースの形状と締め付けで十分保持することができ下に落ちることはありません。


shovel14.jpg     Fshovel13.jpg
セカンドモデルの下部には補強金具が取り付けられています。落下防止及びケースの端部分の損傷を防ぐことが目的かと思われます。

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セカンドモデルのベルトループには、“ jml Munchen 1943 ”の刻印があります。

今回紹介したキャリングケースはどちらも紙を圧縮した人造皮革(独:PresstoffもしくはPress-stoff)で作られております。これは革を温存する為に1938年1月26日に出された命令によるもので、キャリングケース以外にもドイツ軍の革を用いた装備には人造皮革が多く使用されています。


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脳内の99%をドイツ軍が占めている、そんなアラフィフ親父です。
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