M31ツェルトバーン (Zeltbahn 31) Part1

私は登山をするのですが、山に行く時は標高に関わらず非常時に備えて必ずツェルト(簡易テント)を持っていくようにしております。経験値の高い登山家でも必ずザックに忍ばせておくアイテムで、時と場合によっては無線機や食糧よりも重要なものとなります。
事実、マイナス40度の冬山で遭難者が雪洞を掘り、ツェルトで外気を遮断したお陰で凍死せずに済んだという話はよく聞きます。その反対に夏にも関わらず、雨に濡れた体をそのまま放置していた為、低体温症で死亡したというケースが少なくありません。すごくシンプルですが、山では極力体を濡らさないこと・冷やさないことが重要なのです。

もちろんテントやレインコートなら、より確実に目的を果たすことが可能です。しかし持って行く荷物が限られる登山の場合一つで二役も三役もするツェルトの魅力は大きいわけです。

そんな現代でも重宝する便利なツェルトを、非常時が日常である軍隊が装備として採用しないわけがありません。

前置きが長くなってすみません。本日のネタは軍用ツェルト、ドイツ軍が31年に採用したツェルトバーン(Zeltbahn 31)です。
下記は実物で1939年製の国防軍仕様です。
P1018284.jpg   
迷彩色はドイツ語で“Buntfarbenaufdruck”、一般的にはスプリンターパターンと呼ばれています。

Zelt01.jpg  
工場名"WEBBER & OTT"と製造年を示す“1939”がスタンプされています。

zelt3.jpg
広げたところ。“夏”側です。

zelt1-1.jpg
こちらが“秋”側。色彩が鮮やかな方が、夏用っぽいのですが・・・

P1018282.jpg
これだけ違います。

Zelt31.jpg
ツェルトバーンは底辺が2.5m、二辺が2m、高さが1.9mの三角形の防水布製で、複数枚使うとテントを作ることができます。

powcamp_dieppe.jpg
テントを作るのに4・8人分のツェルトバーンを使用しています。

gjr98-1#
こちらは、単色の初期型ツェルトバーン(右側)と組み合わせた写真。てっぺんに乗せたヘルメットは雨よけの役割を担っています。

写真はどれもスプリンターパターンと呼ばれる国防軍特有の迷彩色ですが、武装親衛隊が採用したオークリーフパターンのツェルトバーンもあります。 (非常に希少で売値は国防軍の数倍はするシロモノですふらふら

テント以外にも工夫次第で個人の野営装備、ポンチョにも早変わりし、加工してヘルメットカバーに応用する例もよく見られます。

Grenadiers koloriert
真ん中に開いたスリットから頭を出してポンチョとして、手前の兵士はヘルメットカバーにも使用しています。

携帯方法については次回の日記で触れさせてさせていただきます。


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M31ツェルトバーン (Zeltbahn 31) Part2

M31ツェルトバーンの携帯方法を説明するのに、手っ取り早く(手抜き)当時の写真を使おうかと思いましたが、実際に再現してみることにしました。装着方法に入る前にテント設営の必需品、ポールとそのバッグです。

zeltbarn0.jpg  
ポールは木製で先端が鉄で補強されており、これを支柱にしてテントの設営を行うわけです。
このバッグはツェルトバーンの中に巻き込んだ状態で収納していたようです。
バッグを中に入れた状態で、ツェルトを折り込んでいきます。

zeltbarn1.jpg  
 
zeltbarn2.jpg
くるくるっと筒型にして・・・

zeltbarn3.jpg
最後は装備ベルトで巻いて完了。この形が基本となります。(しまった、余ったベルトの先端を丸めるのを忘れてた!)
いよいよ、ツェルトを体に装着します。

■基本形 その1 -ベルトへの装着-

zeltbarn4.jpg
2本の装備ベルトで腰ベルトへ固定します。Yストラップが普及する以前は極めて一般的な装着方法だったと思われます。

■基本形 その2 -Yストラップへの装着-

zeltbarn5.jpg
YストラップのDリングに装備ベルトで固定します。Yストラップが普及するにつれ、こちらが主な方法となったようです。
当時の写真で一番よく目にします。

■基本形 その3 -Aフレームへの装着-

zeltbarn6.jpg
まずはツェルトバーンと飯盒をAフレームに装着。次にAフレームをYストラップに固定します。
当然Aフレームが支給された部隊に限られます。

以上の3つがツェルトバーン携帯方法の主なパターンですが、もう一つ少し変わった方法があります。

■基本形 その4 -飯盒へ装着-

zeltbarn7.jpg
私はこのパターンを「ドイツの小銃 拳銃 機関銃」(光人社 広田 厚司著)のP.252に掲載されているZB26を撃つ兵士の写真でしか見たことがありません。すぐに取り出せない、超長い装備ベルトが必要、YストラップのOリング一点止めなのでグラグラする、などあまりメリットが無い気がしますね。

最後はお得意の(?)当時の写真で締めたいと思います。
archive_pic_mggunner_small.jpg
基本形 その1の変則スタイルです。ガスマスクも前にあります。背中にラフェッテや大型装備を背負う場合はこのような装着方法を取っていました。

mortar_duck.jpg
基本形 その2とその4の中間スタイルです。背負子はなにを運ぶものでしょうか?

Verwundeter in Frankreich koloriert
Aフレームに装着。ケガの治療を受けている兵士だけAフレームを持っていることが興味深いです。


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M31ツェルトバーン (Zeltbahn 31) 後期型

皆さんこんにちは。ゴールデンウィークをいかがお過ごしでしょうか?私は昨夜一週間の出張から帰ってきたばかり。来週に備えて家でのんびりと疲れを癒しております。(なお悲しいかな、現在GWとは無縁の国に住んでおります)
さて、本日は陸軍のM31ツェルトバーン(Zeltbahn 31)後期型を紹介したいと思います。

zelt45-01.jpg
こちらは1945年に製造されたツェルトバーンです。パッと見はいたって普通のツェルトバーンですが、通常のものとは細かい点でいくつかの違いがあります。(後期型といってもメーカーや時期によっていろんなパターンもあるのでバリエーションに一つとお考え下さい)

zelt45-04.jpg
まずはスタンプから。"Reichsbetriebs(RB=国家工場)"とその番号、製造年の"1945"が押されています。
この製造年が1945年という点、やはり色々と考えさせられますね。西から東から連合軍の包囲網が狭まり、戦線がドイツ本国に迫ってくる一方で、国内の主要都市は英米の昼夜を問わない無差別爆撃で壊滅状態。。。

zelt45-26.jpg

 zelt45-25.jpg  
そのような状況下で工場は通常運転できたのか、材料や工作機械を動かす燃料はどう調達したのか?工員への給料はきちんと支払われていたのか?前線までの輸送手段はどうしたのか?等々、なんとか現物から読み取ろうとします。

ちなみに、戦争末期の44-45年に生産されたものは"Last-ditch"(最後までがんばる,死力を尽くしての意)と呼ばれ人気があります。物資難の中で生産工程、材料を削らざるを得ず、耐久性・外見の面ではそれ以前の比較的豊かな時代に作られたものより明らかに劣るのにも関わらず、コレクターを魅了して止まないのはそういった探究心を刺激するからかも知れません。

さて、それではこの"Last-ditch"のツェルトバーンの細部を一つずつ見ていきましょう。

zelt45-02.jpg
一番上の写真と見比べて下さい。同じ写真のようですがこちらは反対側。裏表のパターンが同色となっています。

zelt39-05-1.jpg
上記二つの写真は1939年製のツェルトバーンの両面です。ノーマルパターンはこのように"秋"と"夏"用で違う色になっています。両面を同じ色にしたのは省力化の為、それとも2パターンの無意味さに気づいたのか・・・今となっては判りません。


zelt39-07-1.jpg  zelt45-22-2.jpg
こちらは裏表の差が判りやすい写真です。上がノーマルで下が後期型です。


zelt45-07.jpg
その他にはボタンがアルミ製からスチール製に変わっています。これは末期という理由よりは、42年頃からアルミ製の水筒や飯盒がスチール製に変わったのと同じ理由でしょう。なお、スチール製以外に亜鉛やベークライト製のボタンも存在しているようです。


zelt45-08.jpg
ボタンホールはキーホール形からスクウェア形になっていますが、これはメーカーの違いによる可能性もあります。


zelt45-09.jpg
大小グルメットがスチール製から亜鉛製に変更になっています。

zelt45-05.jpg
底辺両サイドと中央にある小グルメットの数も2つから1つに省略されています。


zelt39-04.jpg zelt45-06.jpg
最後にスプリンターパターンの比較です。後期型(下)の雫模様はノーマルに比べて細くて薄く間隔も空いています。クオリティも落ちていますが、1939年と45年のドイツ国内の生産事情の変化を考慮すれば、むしろ高度な技術である迷彩プリントの品質がこれだけ保たれているのは賞賛すべきことかも知れません。

以上、後期型、それも末期に作られたツェルトバーンの紹介でした。
なおスプリンターパターンのみという印象の陸軍のツェルトバーンですが、他にもいくつかのバリエーションがあります。また機会があれば、別のパターンも紹介していきたいと思います。


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M31ツェルトバーン (Zeltbahn 31) イタリア迷彩

本日はドイツ軍がイタリア軍から摂取した迷彩生地で作った珍しいツェルトバーンを紹介します。

italian-02.jpg   
1943年9月8日にイタリア王国が連合軍に降伏。その直後、ドイツ軍によるイタリア軍の武装解除作戦が開始されます。昨日までの盟友は敵となり、兵器や軍用車両などは摂取されドイツ軍が使用することになります。
また被服も徴発対象で、イタリア軍の被服倉庫は真っ先にドイツ兵に"襲撃"されたようです。

-おなじみの黒シャツは粋というので特に人気があった。ほかにもマウンテンブーツ、ベルト、褐色のつなぎの飛行服なども徴発され、以降、彼らの間で重宝がられた-『ヴィットマン LSSAHのティーガー戦車長たち』の中の一文です。

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また完成品のみならず被服材料も摂取の対象となりました。その中にはイタリア軍の迷彩パターンが印刷された生地も大量に含まれており、その材料を使って野戦服やジャケット、今回紹介するツェルトバーンも作られます。

italian-03.jpg   
イタリアの迷彩模様は一般に"まだら系"と呼ばれるパターンです。迷彩効果に優れているため、ドイツ軍には人気で戦後もイタリア軍で使用され最近まで現役でした。(戦後のパターンはもっと明るい色合いのようですが)


anonym.jpg
アルデンヌ ノルマンディーのW-SS兵士の写真です。イタリア迷彩生地で作ったつなぎを着用しています。

さて、ここからはイタリア迷彩パターンのツェルトバーンの紹介です。

italian-3JPG.jpg

生地はイタリア迷彩パターンを使用していますが、ドイツ軍ツェルトバーンと同じ仕様の三角形です。

italian-4JPG.jpg
こちらは裏面です。ドイツ軍のツェルトバーンは両面印刷ですが、イタリア迷彩の生地は片面印刷の為、リバーシブルでは使えません。

italian-10JPG.jpg
両端が違う布地で出来ていることが分かります。もともとイタリア軍のポンチョは四角形で生地もそのサイズに合わせて作られていた為、ドイツ軍のツェルトバーンを作るには両端に別の布地をつなぎ合わせる必要があったからです。

italian-13.jpg
点線のところでつなぎ合わされています。


italian-8JPG.jpg
ポンチョ用のスリットもドイツ軍仕様と同じく設けられています。

 
italian-5JPG.jpg  
生地の裏のスタンプです。


italian-6JPG.jpg  
センターのつなぎ目にはメーカー名と思われるスタンプが押してあります。
"AMERICA"という文字が見えますが、米国製のリプロではなく、こういう名前のメーカーだったようです。

なお、このツェルトバーンにはテントを作成する際に使用するボタンやグルメットがありません。

italian-11JPG.jpg

これは戦争末期でボタン等の取り付けが省略され前線に送られたという意見と、製作工場で未加工の状態で見つかったものという二通りの考え方があります。

もし後者のみが正解であればすべて新品に近い状態のはずですが、使い古された状態のモノも見つかっており前者の考え方もなきにしもあらずの気がします。(もちろん、後者のモノが戦後に使われた可能性もありますが・・・)


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注)当時のドイツ軍の装備・生活用品に興味がありますが、特定の団体・思想を支持するものではありません。

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