一級鉄十字章 (Eiserne kreuz 1. klasse)

『戦争のはらわた』を初めて観たのは今から30年以上前で、当時ちびっこドイツ軍ファンの私としては、主役がドイツ軍、舞台がロシアという設定が非常に新鮮でした。
また「バイオレンス描写」(現在の基準ではソフト路線ですが)と「非ハッピーエンド」という内容も他の戦争映画とは一線を画しており、すべてがリアルでカッコよく同時期公開された連合軍が主役の映画が子供だましに思えたものです。
(10年後にオリバーストーン監督の「PLATOON」で衝撃を受けることになります)

この映画、とくに邦題の「戦争のはらわた」については、賛否両論の意見がありますね(“否”の方が圧倒的に多い)
当時、この映画の広告の担当者は戦争の悲惨さ・エグさを〝はらわた〟という言葉で表現しようとしたのでしょう。
もちろん「Cross of Iron」もしくは「鉄十字章」というストレートなタイトルも考えたと思います。
勝手な想像ですが〝鉄十字章〟に観客の視点が固定されてしまい、勲章をめぐる「シュタイナー対ストランスキー」にストーリーが単純化してしまうことを恐れたのかも知れません。

9244544.jpg   
大人になって買ったLD。雪原で斃れた兵士が鉄十字章(実は二級鉄十字章)に手を伸ばしているジャケバージョン。
DVDは廃盤後しばらくオークションでは1万円近い価格で取引されておりました。


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(2000/08/25)
ジェイムズ・コバーン、マクシミリアン・シェル 他

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(現在は再販されてます)

タイトルにもなった一級鉄十字章は、ストランスキー同様、ドイツ軍コレクターにとっても垂涎の的な存在で高額ゆえフェイク(偽物)も多く、自分にとってはなかなか手が出せないアイテムでした。

さて回を重ねるごとに長くなってくる前置きを飽きずに読んでいただきありがとうございます。
ついにパワーストーン、いや一級鉄十字章(Eiserne kreuz 1. klasse)を入手することができたので披露させていただきます。

cross2.jpg  cross1.jpg
専用のケースにこんな感じで入っています。

4_20110519152126.jpg
表側です。鉤十字と制定の年の1939が刻まれております。
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裏側です。ピンで胸のポケットに佩用します。写真を載せていませんが、ピンの裏側にはメーカーの刻印(“20”と“L/52”)が入っております。

実際に手に持ってみて意外に小さいくて軽い感じがしました。素材は貴金属では無く、単なる鉄だから当然です。
『こんな鉄片の為に、戦うなんて馬鹿らしい』というシュタイナーの台詞もなんとなく理解できます。

一級鉄十字章は二級鉄十字章の上位にあたる勲章で、勇敢な戦闘行為、卓抜した指揮を行った兵士に与えられました。
第二次大戦中の授与対象者は約30万人、ただし、末期は戦意高揚の為、授章の乱発もあったようです。
映画のようにお偉いさんが一目おいてくれることは実際にあったのでしょうか?

cross3.jpg
伍長殿の戦闘服にさっそく取り付けました。
シュタイナー曹長のデコレーション方法とは若干が違います。

勲章のコレクションは、歩兵突撃章、戦傷章、二級鉄十字章(リボン)そしてこの一級鉄十字章で一応完結です。
白兵戦章や戦車撃破章、ましてや騎士鉄十字章などは自分の購買能力を大きく超えており、例え資金が用意できたとしても他に使い道がゴマンとある為、ここでアップすることは一生無いでしょう。
(人生において絶対は無いので、なんとも言えませんが・・・たぶん)


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戦傷章-黒章- (Das VERWUNDETENABZEICHEN, Schwarz)

戦傷章(Das VERWUNDETENABZEICHEN)です。 1939年9月1日にヒトラーによって制定されました。
縦4.5cmx横3.5cmの楕円形状にヘルメットと鉤十字、剣のレリーフがあしらわれています。
戦傷章は負傷の程度によって金・銀・黒3等級あり、この黒章は1~2回の敵との交戦による負傷もしくは前線での凍傷を受けた兵士に授章されました。
sensho.jpg  
鋼板をプレスしたもので、授章条件が入院を要する程度の負傷という代償の割には“安っぽい”造りになっています。
裏側は胸ポケットに佩用する為のピンが付いています。鉤十字横にメーカーマーク“3”が見えます。

佩用位置は鉄十字章、歩兵突撃章の有無によって違います。

cross3.jpg  
一級鉄十字章、歩兵突撃章、戦傷章の一般的な佩用位置。歩兵突撃章と戦傷章の位置が逆のケースも見られます。

こちらは、戦傷章の所有証明書です。縦20cmx横14cmの厚紙製で授与対象者の氏名や階級、負傷した日付・証明者のサインなどが記載されています。

  paper1_20110613081703.jpg

-Besitzzeugnis(所有証明書)
-Den[Name,Dienstgrad](氏名,階級):Heinz-Ulrich Kurrle, Gefreiter (兵長)
-[Truppenteil,Dienststelle](所属部隊):2. / Gren Regt. 683 (第683擲弾兵連隊第2大隊)
-ist auf Grund (授章理由)
-seiner am 8,februar 1943 erlittenen:1943年2月8日に被った
-ein maligen Verwundung ― Beschädigung :1回の負傷もしくは損傷
-das Verwundetenabzeichen in Schwarz:戦傷章・黒章
-verliehen worden. Graudenz,den 27.4 1943.:Graudenzにおいて1943年4月27日授与
-Stabsarzt u. Chefarst(軍医大尉・軍医長)

所属部隊と負傷した時期から類推するに、Kurrle兵長は、スターリングラードで勝利し攻勢に転じたソ連軍とWoroschilowgradで交戦し負傷したようです。

所有証明書と一緒に入手した写真です。左から二人目の眼鏡をかけた人物がKurrle兵長その人です。
恐らく1943年の3月か4月頃にGraudenzの病院で撮影されたものでしょう。
 
photo.jpg
この写真を見る限り、負傷したのは足のようです。
明るい病室に広いベッドと清潔なシーツ。表情もリラックスしており悲壮感を感じさせません。
1943年はスターリングラード攻防戦で第六軍が大敗北を喫し、撤退戦へと転じる年ですが、Kurrle兵長同様、多くのドイツ兵は第三帝国の巻き返しを信じて疑わなかったはずです。

Kurrle兵長は退院後、スターリングラードで壊滅した第71歩兵師団、第194擲弾兵連隊へ転属、44年12月に再度戦傷章(銀)を授章します。


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二級鉄十字章 (Eiserne kreuz 2. klasse)

“2鉄”こと二級鉄十字章は佩用リボンのみ(下記写真)で済まそうと思っていましたが、一級鉄十字章を入手したら案の定比較対象として興味が出てきてしまい、知り合いの欧州のコレクターから譲ってもらいました。
I got interested in Iron Cross 2nd (Eiserne kreuz 2. klasse)after obtained Iron Cross 1st and bought from an European collector.

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二級鉄十字章(Eiserne kreuz 2. klasse)は一回の勇敢な戦闘行為を行った将兵へ与えられる戦功章として1939年9月1日に制定されました。

EK2-1.jpg
一級鉄十字章とサイズは同じですが、リボン取り付け用リング、裏面にもデザインが有る点が違います。

こちらは二級鉄十字章の勲記です。授与対象者は戦傷章で紹介したHeinz-Ulrich Kurrle兵長です。
(名前が“Hans”となっていますが、恐らく誤植でしょう)

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Im Felde(前線にて) 1945年1月20日に授章しています。
Kurrle兵長は43年4月に退院した後、第194擲弾兵連隊に転属、授章時にはLeutnant(少尉)に昇進しています。

ここで一つ疑問が・・・それは下士官の最下位、兵長から少尉へ短期間(約1年数ヶ月)で昇進できるのか?です。
兵長から少尉までは、伍長・軍曹・曹長と長い道のりがあります。
Kurrle兵長は1944年11月に戦傷章(銀)を授章しているのですが、その時点ですでに少尉となっています。
鉄十字章で最下位である二級鉄十字章を終戦間近で授章する人物が戦功で大出世するとは思えません。

とすれば、Kurrle兵長は

・もともと尉官であったが、懲罰等でそれまでの授与歴を剥奪・格下げされていた。
・陸軍士官学校出の士官候補生(Fahnenjunker)であった。

映画のようなことがなければ、間違いなく後者でしょう。(病室の写真を見ると顔にどことなく気品が感じられます)

前線における授与者の記念写真です。

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授与当日は写真のようにメダルとリボンを上着の第二ボタンから吊り下げておくことが伝統だったようです。

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二級鉄十字章は上記の紙袋に入れて兵士に贈られました。

二級授章後は、一級そして騎士鉄十字章とステップアップして行くのですが、多くの場合二級リボンを佩用し続けました。
リボンがフィールドグレイの野戦服にマッチする優れたデザインだったのも要因かと思います。

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あるいは初めて経験した女性のことを男はいつまでたっても忘れない、そんな心理と似ているのかも知れません。

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戦傷章-銀章- (Das VERWUNDETENABZEICHEN, Silber)

戦傷章(Das VERWUNDETENABZEICHEN)の銀章を入手しました。
銀章は戦傷章のうちで黒章の一つ上のランクで、授章資格は前線での負傷が3回もしくは4回、また一回であっても
手肢を切断するような負傷、片目の視力あるいは聴力を失うことでした。

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デザインは黒章と同じく、M35ヘルメットに剣、柏葉となっています。

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裏面はフラットになっております。
刻印“65”はKlein & Quenzer of Idar/Oberstein社製を表します。

戦傷章(黒章)二級鉄十字章で紹介したHeinz-Ulrich Kurrle兵長の銀章所有証明書です。

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1944年12月14日に、シュレージエン(現ポーランド)のレグニツァ Liegnitzで授章しています。
そういえば、『戦争のはらわた』のスタイナーも銀章を付けていましたね。


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東部戦線従軍記章 (WINTERSCHLACHT IM OSTEN 1941/42)

こちらは戦傷章(銀章)と同時に入手した東部戦線従軍記章(WINTERSCHLACHT IM OSTEN 1941/42)です。
バルバロッサ作戦の冬季戦(1941年-1942年の冬の東部戦線)において一定の活動を行った枢軸軍兵士や民間人を対象として1942年5月26日に制定された従軍記章です。

1941年11月15日から1942年4月15日までの間、特定地域において以下の諸条件を満たす必要がありました。

・14日間戦闘に参加した者(空軍兵士は30回の出撃)
・60日間非戦闘活動に従事した者
・戦闘で負傷した者
・戦死した者
・戦傷章に値する程度の凍傷もしくは冬季の風土による負傷をした者

上記のような比較的緩い条件だった為、短い期間にも関わらず約250万~300万人が授章したと考えられています。
メダルの製造と授章に時間がかかった為か、授与期間は1944年10月15日までとされました。
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横36 x 縦40mmの亜鉛製で23の工程で作られています。

表面(左側)には国章の鷲と鉤十字・柏葉、裏面(右側)には「WINTERSCHLACHTIM OSTEN 1941/42」の文字と剣・柏葉がデザインされています。上部にはM35ヘルメットとM24柄付き手榴弾をモチーフにしたレリーフが刻まれています。ヘルメットが白色にペイントされているものもあります。
リボンの色は赤地に白2本と黒1本のラインで構成され、これら3色は国家色であるのと同時に赤は兵士の勇気・戦火・血、白は雪、そして黒は悲しい記憶(戦友の死など)の象徴とされています。

佩用方法としては、二級鉄十字章と同じくリボンのみ第2ボタンホールに縫い付けて着用することになっていました。

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二級鉄十字章のリボンと併用する場合は上記のように下に重ねます。

Wehrpass(軍隊手帳)Soldbuch(兵隊手帳)で紹介したErich Riedel軍曹も1941年6月から東部戦線で従軍した為、東部戦線従軍記章を授章しています。

04-17-2011 02;23;50PM.JPG
小さくて見えづらいですが、左胸にリボンバーを佩用しています。(剣付二級戦功十字章及び東部戦線従軍記章)

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Soldbuchの22ページ目にある記録によると、1942年8月10日に授章となっています。

東部戦線における戦意高揚を目的として作られたにも関わらず兵士からはシニカルな愛称(?)で呼ばれました。
例えば実際に凍傷による授章者が多かった為「冷凍肉勲章」と呼ばれたのは有名な話ですが、その他に41年冬の消耗戦がその後の撤退戦の原因になったことから「撤退勲章」、ロシアの厳しい冬を表現した「霜メダル」「ツンドラ勲章」「オーロラ勲章」、面白いのは「ヘルメット雪だるま」など32個も呼び名があったようです。
またリボンも両端の赤色を「赤軍」に見立て、ソ連軍に包囲された厳しい状況を表現することもありました。

なお東部戦線従軍記章は大量に作られた為、実物でもレプリカと変わらない金額で入手することができます。
非常の興味深い私の好きな従軍記章です。

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