M44アンクルブーツ (Schnürschuhe)

下記はドイツ軍のアンクルブーツ(Schnürschuhe)です。海外のコレクターの間ではLow bootsとも呼ばれおり長さの部分で半長靴と明確に区別されています。
2_20110719120430.jpg  
正確には覚えていないのですが、アンクルブーツはドイツ兵から「撤退靴」と呼ばれていたという記述をどこかで読んだ記憶にあります。(追記:靴では無く、短ゲートルGamaschenのことを揶揄していたようです)敗戦色が濃厚になった中期以降、半長靴に代わり兵士に支給されたアンクルブーツ短ゲートルが撤退するドイツ兵のイメージと重なった為、このような不名誉な名がつけられたのかも知れません。

しかしながらドイツ兵=半長靴という正統スタイルというのは思い込みで、アンクルブーツの歴史は意外と古く、第一次大戦の頃から半長靴と共に兵士に支給されていました。
(ゲートルを巻く場合はアンクルブーツでないと無理ですね)

第一次戦後は兵営内用の靴という側面が強く、第二次大戦が始まると戦闘用は半長靴に統一されました。
もちろん戦闘には半長靴が不向きとされる兵科、例えば戦車兵や降下猟兵、山岳猟兵などにはそれぞれの活動に適した靴が開戦当初より支給されました。

9_20110719114940.jpg
30年代のドイツ軍兵営のロッカーの中の様子です。手前にアンクルブーツが写っています。

しかしながら40年8月には革の温存の為、短ゲートル(Gamaschen)と共に戦闘用としても着用され始め、41年頃にはアンクルブーツで戦闘に参加している兵士の写真がちらほら見られるようになります。

バリエーションとしてはメーカーごとに違いがありますが、大きく分類すると戦前に採用されたタイプ(M37)と44年に本格的に採用されたタイプ(M44)の二種類です。M37とM44の外観上の大きな違いは、M37は紐を結ぶ所が穴ではなくフックになっている点です。

1_20110719121854.jpg
現代にも通ずるオーソドックスな形です。

6_20110719121924.jpg

靴底は半長靴と同じく鋲が打ってあります。

4_20110719122040.jpg
踵には馬蹄形の金具が入っています。

3_20110719122144.jpg
左から「29. 4. 44.」そして「9436」と刻印されています。
「29」は長さのサイズ、「 4 」は幅のサイズ、「44」は製造年、そして「9436」は製造番号を表しています。

前述のとおりアンクルブーツが半長靴に代わり採用された背景には物資と人手の不足があると言われています。
しかしながら、実際に手にとって見ると非常に手の込んだしっかりとした作りになっています。

材料はともかく、製造工程については半長靴よりも増えているのは間違いなく末期の悲壮感を感じさせません。

15_005.jpg

BE034911.jpg


FC2 Blog Rankingに参加しています。

←ポチっと応援お願いします!

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...
スポンサーサイト

M44アンクルブーツ後期型 (Schnürschuhe)

アンクルブーツ第二段です。ドイツ軍がイタリアのメーカーに発注したタイプとか、イタリアの靴に似せて作ったとか色んな説がありますが、定かではありません。

前回紹介したアンクルブーツと比べて、なんとなくお洒落に感じるのは気のせいでしょうか。

bootsitaly1.jpg  
くるぶしまでの高さという点は一般のアンクルブーツと同じですが、この靴はつま先が革で補強されています。

bootsitaly3.jpg   
踵の上には革のタブが付いており、片手で持ったり、何かに引っ掛けて干したりすることがし易くなっています。

3_20120116134841.jpg
この靴の特徴は踵の金具が登山靴と同じ仕様になっていることです。この形は岩場でのグリップ力強化に加えスキー板のビンディング固定用とも言われています。
靴底には通常の鋲が打ってありますが、補強金具に換えれば登山靴に変えられるという設計なのかも知れません。

4_20110805152303.jpg
刻印は薄くなっていますが、「26 1/2. 6. 836. 0100」とかろうじて読めます。
26 1/2と6は靴のサイズ、836は製造番号と思われますが、0100が何を示すのかは不明です。(RB Nr?)靴の中にも複数の数字と持ち主の名前らしきものが書かれているのですがこちらは判読不可能です。戦後に誰かが書いた可能性もあります。(ルーン文字で“SS”なんて書いてあったら、余計に眉唾ですが・・・)

いつもの通り、最後に当時の写真を載せようと、ネットの掲示板を見ていたらこんな写真(絵)を見つけました。
アメリカ軍補給将校がドイツ軍の装備についてのまとめたレポートのコピーのようですが、つま先の補強革や靴底の形状が非常に良く似ています。

6_20110805155708.jpg

5_20110805155522.jpg     
細かい部分(リベット、補強金具)は若干違うものの、M-1944すなわちM44アンクルブーツという解釈で良いかな??


FC2 Blog Rankingに参加しています。

←ポチっと応援お願いします!

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

M37アンクルブーツ (Schnürschuhe)

先週末は体調を崩し、更新が滞ってしまいました。普通は土曜日の午後にアイテムの撮影を行い、土曜日の夜から日曜日の午前中にかけて画像処理と記事の作成を行うのですが、土曜日は熱で丸一日寝込んでしまった為、何もできませんでした。最近仕事が多忙を極めていたので、たまっていた疲れがドッと出たのかも知れません。


AB-00.jpg  
さて、本日は久々にアンクルブーツ(Schnürschuhe)を取り上げたいと思います。
アンクルブーツは過去にM44タイプを紹介しておりますが、こちらはハトメ上4つがフックになっている点から、1937年に導入されたM37アンクルブーツでは無いかと考えています。

〝考えています〟なんていう、曖昧な言い方をしたのは、このアンクルブーツがいくつか大戦中のドイツ軍アンクルブーツの要件を満たしているものの、どうしても確信が持てないからです。

実は第二次大戦中またはその前後に欧州で作られた編み上げブーツはどれも見た目が同じで、素人目にはちょっと見分けがつきません。そこで、コレクターの間では〝テキストブック〟(教科書どおり)と言って、いくつかのポイントをチェックすることが一般的になっています。※なおこのチェックポイントは半長靴(ジャックブーツ)にも当てはまります。

注意:下記が当てはまらないからと言って、決してドイツ軍が使用したものでは無いとは言え切れません、(あくまで教科書どおりなので)、また実際に兵士が履いていたかどうかというのは別問題ですので何卒ご了承のほどを。

ポイント1:〝シャークノーズであるべし〟

 AB-5.jpg
〝シャークトゥ〟とも言われますが、文字通りサメの頭部のように先端が尖っているシルエットを指します。ただしM44後期型のように必ずしも尖っていないものもあります。なお、この靴はシャークノーズに見えます。

ポイント2:〝靴底は三段構造であるべし〟

      AB-9.jpg

こちらはM44アンクルブーツを使って説明しています。三段構造とは踏み付け部、踏まず部、かかと部(ヒール)がそれぞれ独立しているということです。また鋲の打ち方にもパターンがあります。半月板プレートはあったり、無かったりします。かかと部にはU字アイアンが取り付けられています。なお踵にも鋲が打たれているものはドイツ軍ではありません。

    AB-6.jpg

一方でこの靴の底は三段構造にはなっていますがソールがゴム製になっています。本来工場出荷時は革製なのでゴム製に張替えされたものと思われます。

ポイント3:〝サイズはcm表記であるべし〟

当時のドイツでは、靴のサイズをセンチメーターで表記していました。(現在はEUR表記)しかしなぜか周辺国は現在と同じEUR表記だったので、ドイツ製かどうかを判断する材料となっています。

サイズ換算表(Wikipediaより)

Shoesize.png

AB-13.jpg
通常このようにトップライン(足首の部分)に刻印があります。サイズ(縦・横)、製造年、シリアルナンバーの順です。
またサイズはソールやインナーソールにも刻印されていますが、ミントコンディションの靴にしか残っていません。
AB-2.jpg
このアンクルブーツにも刻印があります。〝28〟〝7〟はサイズ表記と思われますが、その他の番号はシリアルナンバーなのかメーカーコードなのか不明です。
 
なお、刻印の下に補強用の縫い目が見えますが、大戦中に作られたものにはこの部分に縫い目が無いという判断基準もあるのも確かです。

で、このブーツは大戦中のものかどうなのか?
シャークノーズ、三段構造、サイズ表記からドイツ製であるのは間違いないのですが、問題はドイツ軍で使われたものかどうか・・・残念ながら、それは判りません。

<追記事項>
コレクターの調査によると、アンクルブーツには下記のバリエーションがあるそうです。

M37: かかと部が一体型、靴紐を留める金具はホールとフック
M37 簡易版: かかと部が一体型、靴紐を留める金具はホールのみ
M44: かかと部が別パーツ、靴紐を留める金具はホールのみ
M44後期型1: かかと部とつま先部が別パーツ、かかと底はU字アイアン
M44後期型2: かかと部とつま先部が別パーツ、かかと底は山岳靴と同じ鋲
M37簡易版、M44のバリエーション: トップライン内側にウールを貼り付けたタイプあり

M371.jpg  M44-31.jpeg
一体型のかかと部                      別バーツ化されたかかと部

M37はM44後も終戦まで製造が続いたとのことなので、以前M44アンクルブーツとして紹介したのはM37の簡易版という可能性が出てきました。
なお上記のアンクルブーツは、上記に照らし合わせるとM44のバリエーションの一つとなるのですが、M37の特徴であるフックがあるし・・・戦時中に頻繁に見られる部品の融通によるものでしょうか?


FC2 Blog Rankingに参加しています。

←ポチっと応援お願いします!

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...
Profile

エーデルマン

Author:エーデルマン
脳内の99%をドイツ軍が占めている、そんなアラフィフ親父です。
注)当時のドイツ軍の装備・生活用品に興味がありますが、特定の団体・思想を支持するものではありません。

↓管理人へのMailはこちらからどうぞ↓

Category
FC2 Counter
Comments
Archive
Links
eBay
エーデルマンの参考文献
Ss-brigadefuhrer Und Generalmajor Der Waffen-ss Theodor "Teddy" Wisch
Ss-brigadefuhrer Und Generalmajor Der Waffen-ss Theodor "Teddy" Wisch
個人秘蔵の未公開写真が満載でLSSAHファンは必読の書。著者は友人

WWII ドイツ軍兵器集 〈火器/軍装編〉 (1980年) ワイルドムック
WWII ドイツ軍兵器集 〈火器/軍装編〉 (1980年) ワイルドムック
長年教科書だった本。小宮氏の「ドイツ軍の全貌」の解説がすごい

最強の狙撃手
最強の狙撃手
ドイツ軍No.2スナイパーの回顧録。狙撃シーンもすごいが、当時の兵士の生活も垣間見れる一冊

第2次大戦ドイツ軍装ガイド
第2次大戦ドイツ軍装ガイド
鮮明な写真による軍装品説明はブログ写真撮影の参考にしています

ドイツ軍装備大図鑑: 制服・兵器から日用品まで
ドイツ軍装備大図鑑: 制服・兵器から日用品まで
軍装品のカタログとも言えるボリュームは圧巻。実は密かに打倒を狙っていたり・・・

第2次大戦ドイツの自動火器
第2次大戦ドイツの自動火器
実物のFG42実射レポートを読めるのはこの本だけ

“グロースドイッチュランド”師団写真史―東部戦線におけるGD機甲擲弾兵師団1942‐1944
“グロースドイッチュランド”師団写真史―東部戦線におけるGD機甲擲弾兵師団1942‐1944
ドイツ国防軍好きなら買って損はなし

図説ドイツ軍用銃パーフェクトバイブル (歴史群像シリーズ Modern Warfare MW)
図説ドイツ軍用銃パーフェクトバイブル (歴史群像シリーズ Modern Warfare MW)
ドイツの軍用銃の専門書でビジュアル的に見ていて楽しい

ドイツの小銃拳銃機関銃―歩兵兵器の徹底研究 (光人社NF文庫)
ドイツの小銃拳銃機関銃―歩兵兵器の徹底研究 (光人社NF文庫)
ドイツ軍用銃のバイブル的な書。ドイツ軍スナイパートップ3への一問一答が興味深い

Feldbluse: The German Soldier's Field Tunic, 1933-45
Feldbluse: The German Soldier's Field Tunic, 1933-45
M33からM44までドイツ陸軍の野戦服を網羅。特にM36以前の野戦服は必見

Rations of the German Wehrmacht in World War II
Rations of the German Wehrmacht in World War II
とにかく当時のドイツ兵が食べていた糧食にこだわった一冊

武器と爆薬―悪夢のメカニズム図解
武器と爆薬―悪夢のメカニズム図解
迫撃砲はどうやって砲弾を飛ばすのか?小銃擲弾は?ほかにも大砲や爆弾のしくみを源文マンガでわかりやすく解説

グラフィックアクション GRAPHIC ACTION 1993年 No.17
グラフィックアクション GRAPHIC ACTION 1993年 No.17
このシリーズは市場で見つけたら買うべし

ドイツ武装親衛隊軍装ガイド (ミリタリー・ユニフォーム)
ドイツ武装親衛隊軍装ガイド (ミリタリー・ユニフォーム)
WSS専門だけど全部実物!

鼠たちの戦争〈上〉 (新潮文庫)
鼠たちの戦争〈上〉 (新潮文庫)
映画「スターリングラード」の原作本的な内容だが100倍面白い

鼠たちの戦争〈下〉 (新潮文庫)
鼠たちの戦争〈下〉 (新潮文庫)


スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943 (朝日文庫)
スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943 (朝日文庫)
塹壕から故郷へ送った兵士の手紙が興味深い「クリスマスはドイツ風に」の章は涙なくしては読めません

ケルベロス 鋼鉄の猟犬 (幻冬舎文庫)
ケルベロス 鋼鉄の猟犬 (幻冬舎文庫)
ヒトラーが暗殺された後の撤退戦を描いた架空小説。小道具にこだわるところがマニアっぽい

Flag Counter
QR CODE
QR