雑嚢の中身 ~糧食・嗜好品編~

前回の「身嗜み編」から続き、M31雑嚢の中身「糧食・嗜好品編」です。ドイツ兵の雑嚢に入っていた糧食・嗜好品に関係する代表的なグッズを紹介します。    

① ファットコンテナー(Fettbüsche)

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“ファットコンテナー”の名前のとおり、主に脂(ラード、バターや鶏脂)を収納するための容器で全兵士に支給されました。
ベークライト製で、茶色以外に黒やオレンジ色のものもあります。
 
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このコンテナーの容量は220g。兵士一人の一日当たりの脂の摂取量が72gとされていたので約3日分です。
ラードと言えばトンカツを揚げる油を思い浮かべますが、ドイツ軍ではシチューに入れて風味を出したり、パンに塗って食べることで必要な熱量を得ていました。

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② エスビット(Esbit)

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ブリキ製の携帯用ストーブで調理器具として兵士に支給されました。開閉式のカバーがゴトクになります。
内部には固形燃料の箱が収納できるようになっています。


③ ポケットナイフ(Taschenmesser)

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コミスブロート(ライ麦で作った軍用パン)を切ったり、ジャガイモの皮を剝いたり、フォークの代わりにするなど戦場でのポケットナイフの用途は数え切れませんが、必ずしも全兵士に支給されたものでは無いようです。
上(左)のナイフはブレードに「SOLIGEN」、ハンドルの部分には国家鷲章の刻印ありますが実際にドイツ軍が使っていたものかどうか不明です。
下(右)のナイフには、ケーブルの皮膜を剝ぐ為の刃がついていることから工兵用と言われています。
上記以外に兵士が個人で購入するケースも多く、スイスアーミーのような多機能ナイフも使われていました。


④ 折りたたみ式スプーン・フォーク(Essbesteck)

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  spoon4.png

アルミ製のタイプです。1937とヴァッヘンアムト(WaA)、メーカーマークが刻印されています。


⑤ 缶切り(Dosenöffner)


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ドイツの缶切りはかなり凝った造りです。
映画「橋」では、少年兵がミルクか何かの缶詰を銃剣で簡単に開けていたので必需品では無いのかも知れません。


⑥ 缶入りチョコレート(Schokolade Behälter)



 schokakola1.jpg      schokakola4.jpg
 
ドイツ軍が兵士に配給したチョコレート「Scho-ka-kola」です。
この缶のように年号が中央にあるものや、国家鷲章がデザインされたもの、紙製の容器のタイプが存在しています。
チョコレートは戦場でのストレス解消と共に、手軽にカロリー摂取するのに適した食べ物となります。

映画の小道具としてマニアの間では有名で「橋」では少年兵が敗走する負傷兵からもらったり、「スターリングラード」では第6軍の兵士が空中投下されたコンテナーの中にこのチョコレート缶を見つけてむさぼり食うシーンがありました。


⑦ コーヒーバッグ (Kaffee-Beutel)

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焙煎コーヒー豆
のバッグです。代用コーヒー(炒った麦・大豆・タンポポの根から作ったコーヒー)ではなく本物なので
一般兵士の雑嚢には入っていなかったかも知れません。


⑧ 煙草紙(Zigarette-Papier)

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なんといっても兵士の楽しみは食後の一服だったでしょう。
“Efka”のパッケージには"Allerfeinstes Zigaretten Papier"(他にはない最高級の煙草紙)と書かれています。
手巻き煙草の場合、このような紙がない時は新聞紙などで代用していました。(ソ連の「プラウダ」など)
当時のドイツ兵にとってパイプでの喫煙も一般的です。


⑨ マッチ箱(Zündholzschachtel)

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煙草に火をつける以外に、使用目的は山ほどあります。

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今回アップしたグッズは兵士が戦場で食事をし、その後の一杯、一服を楽しむのに最低限必要と思われるものです。
もちろん数え上げればキリがないほど雑嚢の中身は他にもあります。
雑嚢の本来の目的は正式名称(独語でBrotbeutel、直訳すると「パンを入れるカバン」)の通り、パンや乾パンなどの食料品を運ぶことだったのかも知れません。


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配給カード(Lebensmittelkarten)

こんにちは。まだまだ残暑が厳しいですが、夜はだいぶん涼しくなりましたね。
さてドイツ軍ファンとして『月刊アームズマガジン 』の連載記事「リエナクトメントのススメ」をいつも楽しく読んでいるのですが、現在発売中の10月号には戦時中の食糧事情と配給制度について描かれており、今回は便乗で配給カード(Lebensmittelkarten)について記事をアップしたいと思います。

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以前こちらでも記事にしましたが、ドイツは第一次世界大戦中にイギリスの海上封鎖により深刻な食糧難に陥り、76万人の餓死者を出してしまいます。ドイツにとって食糧不足はトラウマであり、1939年に第二次世界大戦が始まると、再び国家による食糧統制が施行されます。

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「ハムスターのように貯め込む汝を恥よ!」
日本でも太平洋戦争による深刻な食糧不足から配給制度が敷かれ、「米穀通帳」などによって配給が行われていたことは、祖父母や両親から聞かされてなんとなく知っていましたが、この記事を書くにあたり改めて調べてみました。

消費統制(Verbrauchslenkung)
消費統制は、原則として、備蓄の放出、輸入促進、生産統制等の供給サイドの管理措置を講じてもなお十分な効果がない場合に限って実施される。消費統制の目標は、消費量の抑制と公正・均一な分配の達成であり、主な手段には次のものがある。

(ⅰ)一般的な販売統制(Generelle Abgabebeschränkung)
一般的な販売統制とは、店頭での 1 人 1 回当たりの販売量を制限することである。これにより、数量が少ない特定の重要な財に対する買占めを防止し、かつ、配給制の採用に至らない場合でも、財を比較的公正・均一に分配することができる。

(ⅱ)配給制(Rationierung)
長期にわたる深刻な供給危機等の場合に、全国民に対して等量かつ最小限の供給を確保するため、「配給カード」(Bezugsausweis)を個別に支給し、各人がこれと引換えに当該物資を購入する制度をいう。十分な準備期間が必要であり、また、管理コストは膨大になる。

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配給カードは、あくまで購入引き換え券だったんですね。(ずっと無料引き換え券と勘違いしていました)
 
配給制度はドイツ軍がポーランドに侵攻する直前の1939年8月28日に導入され、まずは肉、ラード、砂糖やコーヒから統制が始まり、次にパンや卵も対象となります。
配給カードは、物品によって色が分れていて一目でわかるようになっていました。

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ネットで拾った情報なので確かさは不明ですが、開戦当時は1週間分の配給制限として一人あたり肉やソーセージは700グラム、砂糖は280グラム、ジャムは100グラム、パンは2,400グラム、ラードや脂は1/5リットルだったようです。
ちなみに現代のドイツ成人の一般的な肉の摂取量は男性で103グラム/日、女性で53グラム/日だそうで、もし上記が本当なら十分な量かと思います。(もちろん戦争が進むにつれ、どんどん減っていくわけですが・・・)
なお、より栄養が必要な肉体労働者や育ち盛りの子ども、妊婦用の配給カードもあったようです。

それでは、配給カードを見ていきましょう。まずは主食から。

1. パン(Brot)

brot_1.jpg  
Reichsbrotkarte(赤)
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こちらはバーデン=ヴュルテンベルク州シュトゥットガルトのVaihingenで発行された配給カードで、使用期限は1939年10月23日から11月19日となっています。切符の単位は1000・500・50グラムで、購入した量の分、マス目を切り取るか、スタンプを押す、もしくはパンチャーで穴を開けることになっていました。

2. 肉(Fleisch)

rationcard18.jpg
Reichsfleischkarte(青)
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この配給カードはヘッセン州のGießenで発行されたもので、期限は上記のパンと同じ1939年10月23日から11月19日となっています。肉(Fleisch)もしくはソーセージなどの加工品(Fleischwaren)用です。

3. ミルク(Milch)

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Reichismilchilkarte(グレー)
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ミルクは1/4リットル単位の配給となります。マス目には日付が明記されており、使える日が決まっています。

4. 脂肪(Fett)

bacon2.jpg     
Reichsfettkarte(黄)
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対象はバターもしくは澄ましバター(Butter oder Butterschmalz)、チーズもしくはクワルク=フレッシュチーズ(Käse oder Quark)、マーガリンもしくは植物油もしくは人工油もしくは食用油(Margarin oder Pflanzen oder Kunstspeisefett oder Speiseöl)、ラードもしくはベーコンもしくは牛脂(Schweineschmalz oder Speck oder Talg)となっています。

5. ジャムと砂糖(Marmelade und Zuker)


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Reichskarte für Marmelade und Zucker(ベージュ)
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ジャム(ドイツ語でマーマレードはジャムの意味)と砂糖の配給カードです。長期保存が可能な為、他のカードに比べてマス目の数が少なくなっています。

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こちらは卵(Eier)が一緒になった配給カード。購入した会社のスタンプが押されています。

6. じゃがいも(Speisekartoffeln)

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Bezugsausweis für Speisekartoffeln(黄)
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バーデン=ヴュルテンベルク州Heilbronnで1942年に発行された配給カードです。じゃがいもは長期保存が可能な為、期限が約半年間(6月29日から12月13日まで)です。

7. 栄養食品(Nährmittel)

NF-Oatmeal.jpg  
Nährmittelkarte(ピンク)
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こちらはヘッセン州カッセル上級都市で発行された1942年12月14日から1943年1月10日まで有効の配給カードで、オートミールやシリアルなどの栄養食品(Nährmittel)、パスタ(Teigwaren)、澱粉(Sago)、片栗粉(Kartoffelstärkemehl)、プディングパウダー(Puddingpulver)といったいわゆる“粉もの”が購入できました。
droctber1.jpg 
このブログではお馴染みのドクトル・エトカーのプディングパウダーです。以前、油脂も卵も使わない"戦時ケーキ"をこちらで紹介しました。プディングは少ない燃料費で作れるうえに栄養価の高い合理的で経済的な食品だったようです。

このような食糧の他に、石鹸配給カード(Reichsseifenkarte)や衣服配給カード(Reichskleidekarte)なども存在しています。
なお、酒や煙草などの嗜好品は配給カードでは無く20パーセントの税金かけることで消費を抑制したようです。

ration-foods2.png 
終戦までナチスドイツの配給制度は続けられます。当時の事を描いた本には、市民が末期の食糧不足で苦しむ様子が描かれていますが、第一次世界大戦の様な深刻な飢餓状態にはならなかった事を考えると十ニ分に機能していたと思われます。

ベルリン終戦日記―ある女性の記録

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脳内の99%をドイツ軍が占めている、そんなアラフィフ親父です。
注)当時のドイツ軍の装備・生活用品に興味がありますが、特定の団体・思想を支持するものではありません。

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