MG42 (MASCHINENGEWEHR 42)

上陸下士官として、私は舟艇から兵士を引きずり降ろしては、どうにかして崖の麓までたどり着かせようとした。しかしそれは恐怖に満ちた作業だった。―兵士たちは、砂にまみれて凍りついたまま、まったく動くこともできなかった。私と行動をともにしていた通信兵は、ほんの3ヤードしか離れていない私の目の前で、頭を吹き飛ばされた。ビーチは無数の死体で覆われていた。―ある者は脚を失い、ある者は腕を失い―。おお神よ、むごい。あまりにもむごすぎます。

―第一波上陸部隊・F中隊所属 軍曹ハリー・ベア『D-デイの声』より (「プライベート・ライアン」竹書房)

ノルマンディに上陸した米軍兵士を恐怖のどん底に陥れたのは、海岸から何も遮蔽物が無い中で立体交差射撃が可能なように巧妙に配置されたドイツ軍の野砲・対戦車砲、迫撃砲、そして機関銃からの正確な射撃でした。映画『プライベート・ライアン』の序盤のオマハ・ビーチ上陸のシーンでは、ハリー・ベア軍曹が体験した惨劇の様子がリアルに再現されています。
特にMG42が上陸用舟艇から降りようとするレンジャー部隊兵士を肉塊に変えるシーンは何度見ても鳥肌が立ちます。ドイツ軍マニアから見て細部に?な部分が多い映画ですが、この序盤20分のシーンによって歴史に残る映画になりました。

プライベート・ライアン [DVD]プライベート・ライアン [DVD]
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トム・ハンクス、トム・サイズモア 他

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『プライベート・ライアン』を見た後もしばらくはMG42の発射音が頭から離れず、当時の自分はどうやらMG42の持つ魔力に取り付かれてしまったようです。やがてDVDが発売されるや否や購入したのは言うまでもありません。その後、しばらくして、『メダルオブオナー アライドアサルト』というFPSゲームが発売され、仮想空間ではありながらも機関銃を撃ちまくれる快感に浸りました。(こんな書き方をすると危ない人に思えるかも知れませんが、一応はまともな社会人のつもりです)

    メダル オブ オナー アライドアサルト オリジナル版 日本語版メダル オブ オナー アライドアサルト オリジナル版 日本語版
(2003/09/18)
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このゲーム、発射音は実銃のものを録音して使用しており、実際の戦闘に身を置いているようでした。その後に出た同タイトルの続編『コールオブディーティー』シリーズなどはバージョンを重ねる毎に銃本体やマズルフラッシュのグラフィックが実物を撃っているかのようにリアルになり、さらに弾道計算も反映されてますます脳内のアドレナリンの分泌量は増える一方でした。

段々とタイトルとはかけ離れて映画やゲームのレビューになりつつあるので、それそろ本題に入りたいと思います。
しかしいくらリアルになっても所詮は仮想空間の中だけであり、モノとして欲しくなってくるのが物欲コレクターの性。悩んだ挙句、以前MP40を購入した某ショップでMG42の無可動実銃を購入してしまいました。

MG42c.jpg

dfbの刻印があるグストロフ社44年製です。小銃や短機関銃と比べると相当重いです。
MG422.jpg

MG42(MASCHINENGEWEHR 42) 仕様

種別         汎用機関銃
口径         7.62mm 
銃身長        533mm ライフリング4条右まわり
使用弾薬     7.62×57mm
装弾数        ベルト給弾式, ドラムマガジン式
作動方式     ローラーロック式ショートリコイル
全長           1220mm
重量           116000g
発射速度     1,200-1,500発/分
銃口初速     975m秒/884m秒
有効射程     1000m

やや精巧すぎ価格も高く悪条件下では故障しやすいMG34の改良版としてMG42は1937年からグロスフス社のグルナー博士の下で開発が始められ1941年に完成しました。ローラーロッキング・オープンボルト方式は泥や砂が入ってもジャミングが起きにくく、またプレス加工を多用した為、工数はMG34の半分、費用も25%ほど削減することが可能となりました。1942年初めには制式化され翌年までに17,000挺がグロスフス社で製作され戦場へ送られました。

仕様にある通り、当時の一般的な機関銃の2倍以上1200~1500発/分という脅威の速射が可能で、その発射音と破壊力から英米連合軍兵士の間では「Hitler's buzzsaw(ヒトラーの電動のこぎり)」、またドイツ軍兵士からも「Knochesage(骨切りのこぎり)」という名で呼ばれ恐れられました。

①                    ②                     ③
MG422-3.jpg MG422-4.jpg6-1.jpg
④                                                    ⑤                     ⑥
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(画像はクリックすると拡大します)
①フロントサイトは起立式で使用時以外は倒しておくことで破損を防ぎます。
②リアサイトはタンジェント式で2000mの照尺が付いています。Vノッチも起立式になっていて破損防止に一役買っています。(写真は倒した状態です)
③フルとセミの切り替えが可能なMG34と違い、MG42はフルモードのみになった為トリガーシステムはシンプルです。
④⑤MG42のローラーロッキング方式のボルト。無可動加工の為、この位置で溶接されています。
⑥フィードカバーの裏側には独自の装弾機構が見えます。この仕組みはその後、M60にも採用されました。

MG422-2.jpg
フィードカバーを開けてベルトリンク付きのダミーカートを装着したところです。
写真のとおりこの機関銃は全体的に使用感はほとんどありません。某ショップに入荷した中で最も綺麗な部類といっても良いでしょう。普段実物にはできるだけ使用感を求める私でも、このような綺麗なものをつい選んだしまったのは例の映画のせいかも知れません。

さてD-デイのドラマは『プライベート・ライアン』や『バンド・オブ・ブラザーズ』など攻撃側の連合軍兵士の視点で作られることが多く(最近公開された『マイウェイ』は例外でしょうが)、守り側のドイツ軍兵士については指揮官を除きほとんど無名、冷血なサイボーグのような印象を持ってしまいがちです。しかし一兵卒でありながら“オマハの獣(The beast of Omaha)”と呼ばれた有名なドイツ軍兵士がいたことを小林源文著の『ノルマンディー1944』で知りました。

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小林 源文

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こちらが“オマハの獣”ことハインツ・ゼーフェロー伍長です。
Heinrich  Severloh
ドイツ軍第352歩兵師団 ハインツ・ゼーフェロー(1923年6月23日-2006年1月14日)
21歳の誕生日を目前に控えたゼーフェロー伍長は1944年にノルマンディ、オマハビーチのWn62(Widerstandsnest=防衛拠点)にフランツ・ゴッケル二等兵と共に機関銃手として配置されます。

franzgockelkn2.jpg
フランツ・ゴッケル二等兵(1925年12月30日-2005年11月23日)

wn62-1.jpg
Wn62の俯瞰図。兵員31名が7.5cm野砲 2門(I)、5cmPAK38 2門(L)、5cm迫撃砲トブルク2基(K)、機関銃4挺と共に配置され“イージレッド”と“フォックスグリーン”に上陸してくる敵に対して交差射撃(十字砲火)で攻撃することができました。なおゼーフェロー伍長達がMG42で守備していたのはJの地点。

wn62 667 02w
今も残るWn62の廃墟。

ゼーフェロー伍長は上陸開始の午前6時から午後3時までの9時間でMG42を約12,500発、Kar.98Kを400発撃ち1000人から2000人のアメリカ兵を死亡させたと言われています。(しかしオマハビーチ全体の死亡数が3千なのに、この数はかなりオーバーと考えられます)

“オマハの獣”という名前の由来はもちろん多くの敵兵を死に至らしめたからですが、果たして獣が獲物を狩るかのごとく冷静に9時間も機関銃を撃ち続けられたのでしょうか?Wikipediaによればゼーフェロー伍長はこの戦闘で初めて人を撃った可能性が高くきっと下記の兵士と同じような心情だったに違いありません。

海は水平線の彼方まで、何千という艦船であふれ返っていた。アメリカ兵を満載した上陸用舟艇が押し寄せてくるのがはっきりと見える。やがて何千という兵士たちが一度に上陸し、海岸にあふれ出した。生きた人間に向かって発砲するなど、生まれて初めてのことだったが、私はMG42機関銃に飛びつくや、撃って、撃って、撃っちまくった!しかし何人アメリカ兵を打ち倒しても、それに数千倍する兵士たちが押し寄せてくるのだ!

―ドイツ第352師団所属 国防軍一等兵フランツ・ラッハマン『D-デイの声』より (プライベート・ライアン「」竹書房)

WN62-3.jpg


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