M36野戦ズボン(M36 Langhose) Part2

戦前・大戦初期に使用されたストーングレイ(Steingrau)のフェルト製M36野戦ズボン(M36 Langhose)は過去に一度日記で取り上げましたが、 自分の中でまだ物足りない感があり、ちょうど新しいモノが手に入った機会に細かく見ていきたいと思います。

  stonegray42.jpg  
なお前回と同じ写真の撮り方では面白くないので、今回はマネキンにヘムトと一緒に着装してみました。シルエットが立体的になりズボンのデザインがよく判りますね。

詳細に入る前に、ここでちょっと昔の話を。
人生で初めてストーングレイの野戦ズボンの実物を目にしたのは『コンバット★マガジン』でした。

CM2.jpg CM3.jpg CM4.jpg
1981年10月号の「MP40」の特集でモデルのドイツ兵が履いている青味の強いグレイのズボンは、タミヤMMシリーズの色指定の影響でズボンの色=フィールドグレイ一色と思い込んでいた私にとって衝撃的でした。
他にも1/1実物が満載のこの記事は大好きな“シュマイザー”MP40と相まって私の軍装趣味への第一歩となりました。

さて昔話はここまでにして、野戦ズボンの詳細を見ていきましょう。
stonegray10.jpg
前回紹介したズボンはスタンプが完全に消えていましたが、こちらは内側にスタンプがはっきりと残っています。
青いスタンプの「Lago Salzburg」はザルツブルグのLago(会社名?)で製造、四つの数字はサイズでそれぞれ股下 78cm ウエスト88cm 全長111cm 腰周り102cmという意味です。
また四角いスタンプにある「3 40 RAD BA S」はRAD(Reichsarbeitsdienst=国家労働奉仕団)のBA S(SaltzburgのBekleidungsamt=被服廠)へ1940年3月に納品されたズボンということを表しています。


35065 RAD

RADの制服と言えば茶色のイメージです。ストーングレイのズボンも使用されたのでしょうか?
実はこのRADのスタンプ、陸軍に支給された野戦服やズボン、帽子に押されているのをしばしば見かけます。理由は判りませんが、コレクターの間ではRADが陸軍の被服補給も兼ねていたという見方が一般的です。

stonegray26.jpg
初期の野戦ズボンにはベルトループが無くサスペンダーで吊る必要があります。


stonegray34.jpg    
前側は4つのアルミ製の平ボタンでサスペンダーのループを留めます。


stonegray33.jpg  
背中側にもサスペンダー用の平ボタンが2組あり、どちらかを使用するようになっています。なおウエストを絞る調整ベルトがあるのが判ります。調整ベルトにはバックルが付いており、ウエストを絞ることができます。ちなみにベルトには調整穴は無く、単純にバックルのツメでひっかけて留めるだけのようです。


stonegray14-1.jpg   
この写真のように結構ゆったりとしたサイズのズボンが支給されたようです。
上着との比較が出来ないので履いているのがM36野戦ズボンかフィールドグレイのM40かは不明ですが、白いスタンドカラーのヘムトにM30ガスマスク用のショート缶が写っていることから戦前か大戦初期の写真と思われます。


stonegray37.jpg
ポケットは前に大型のものが2つ、懐中時計用ポケットが1つ、後ろには1つあります。ポケットの間口は広く(前16cm、後15cm)、角度がつけられており、手袋をしたままでもモノの出し入れがし易くなっています。


stonegray16.jpg  
“社会の窓” はジッパーではなくボタンフライになっています。一番上はサスペンダー用と同じアルミ製平ボタン、下4つは牛角製ボタンで留めるのが当時のドイツ軍スボンの標準仕様です。

さて、カラー写真ではフィールドグレイのM36野戦服と、ストーングレイのM36野戦ズボンの色差は明確ですが、当時のモノクロ写真で見分けるのは結構大変です。下記のカラー写真にマウスをあてると・・・
              
いかがでしょうか?カラーでははっきりしていても、モノクロだと“微妙に違うかな・・・?“くらいで、フィールドグレイのバリエーションと言ってもおかしくありません。

conbat magazine-a  
最後に、M36野戦ズボンの日記を書くにあたって古い雑誌を探していたら、もう一つ懐かしいモノを発見しました。
こちらは『コンバット★マガジン』1986年4月号の付録ポスターです。ドイツ歩兵装備のイラストとその名称がドイツ語の発音付きで載っており、M36野戦ズボンも描かれていました。このポスターは私にとってドイツ軍装の参考書であり、ここに書かれた装備を揃えることが目標でした。

夢を与えてくれた『コンバット★マガジン』さんには感謝です。


FC2 Blog Rankingに参加しています。

←ポチっと応援お願いします!

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...
スポンサーサイト

野戦服のポケットの中身 Part2

皆様こんにちは。前週に引き続き「野戦服のポケットの中身 Part2」ということで残りのアイテムを紹介したいと思います。その前にちょっとだけ、ドイツ軍野戦服のポケット(腰ポケット)の構造について。

  pocket.jpg pocket6.jpg
ドイツ軍の野戦服のポケットは立体的な構造になっており、上の写真のようにポケットのフロントとサイドにある蛇腹式のプリーツ(ヒダ)により、嵩張るモノも入れることができます。

左側はM36野戦服、右側はM34/35野戦服の腰ポケットです。
pocket7.jpg  
右側のポケットを見るとサイドにプリーツがあるのが判ります。一方左側にはサイドプリーツがありません。この野戦服は外出着によく見られる着丈を詰める改造が施されており、ポケットを一度外して付け直す過程でプリーツが失われてしまったものと思われます。スマートになった反面、容量は減少しますが、外出着は見た目重視、実用は二の次と考えられていたことがよく判ります。

なお、M41野戦服以降は工数削減の為、袋状のポケットを貼り付けた構造になります。
pocket8.jpg
左側はM36野戦服、右側はM41野戦服のポケットです。

さて、それではポケットの中身に移りたいと思います。まずは下の写真をご覧ください
下記は「FELDBLUSE Ther German soldier's feld tunic 1933-1945」から拝借した写真ですが、ノルマンディで連合軍が捕虜にしたドイツ兵のポケットから出てきたアイテムを撮影したものです。

Pocket contents
アイテムが重複していることから、複数のドイツ兵から集められたものと思われます。
前回の記事で紹介した手帳やホイッスル、皮膚洗浄剤や万年筆、裁縫道具などが写っています。捕虜の中には衛生兵もいたようで、医療器具や薬瓶なども見られます。変わったところでは卵型の木型(靴下の修理用)やガーターベルト(彼女からのプレゼントで幸運のお守り?)などのアイテムもあります。


◆ポケットナイフ(Taschenmesser

knife1.jpg

knife2.jpg
上の写真でも複数種類写っているのがこのポケットナイフです。普段の生活に欠かせないナイフはいざという時には武器にもなりました。上の2つのナイフは一般的なタイプで酒保で購入することができました。市販のナイフを購入して所持する場合もありドイツ兵ごとに種類があったと言っても過言ではありません。


◆ 折りたたみ式スプーン・フォーク(Essbesteck)

spoone.jpg
 spoon.jpg

スプーンとフォークがセットになったもの。カトラリー(テーブル食器)は以前雑嚢の中身として紹介しましたが、野戦服のポケットにも入れられていたようです。(写真にも同型のものが写っています)


◆ 缶切り(Dosenöffner)

canopener1.jpg
こちらも雑嚢の中身アイテムですが、この缶切りはポケットに一つ忍ばせておけるくらいのコンパクトさです。


◆ ハンドタオル(Handtuch)

seife2.jpg 3_20121021032516.jpg

紙製タオルです。タオルは折り曲げられており、広げるとヨコ32cmタテ23cmです。このタオルはパリに3箇所あった「Soldatenheim 」(慰安所)で配られたもので写真には写っていませんが側面に住所が印刷されています。また当時の標語「Vorsicht bei Gesprächen. Feind hört mit!」(言動に注意!敵が聞いている)が赤い文字で印刷されています。
その他、ハンカチやちり紙なども入っていました。

◆ ハンカチ(Taschentücher)


  handkerchief.jpg

上記は陸軍の兵士に支給されたハンカチです。Soldbuch(兵隊手帳)にも項目があり、通常2枚支給されていました。

handkerchief2.jpg
このハンカチにはRBナンバーのスタンプが押されています。


◆ 野戦糧食(Verpflegung)


cigalliro1.jpgKB4.jpg


  schokakola10.jpg        


野戦糧食は以前の日記で取り上げました。これこそ雑嚢の中身ですが、戦闘中にすぐ取り出して食べられるような行動食を兵士はポケットに入れていました。


◆ 煙草(Tobacco)

tabaco1_20121021042037.jpg

食後の一服のお楽しみ、煙草です。戦場において緊張や恐怖感を和らげるのにも効果がありました。レーションの中身として巻き煙草が兵士に配られた他、煙草紙(Zigarette-Papier)による手巻き煙草も一般的でした。
“Efka”のパッケージには"Allerfeinstes Zigaretten Papier"(他にはない最高級の煙草紙)と書かれています。


pipe1.jpg
パイプ(Pfeife)も当時のドイツ軍ではポピュラーな喫煙スタイルです。こちらはウッドパイプで吸い口はベークライト製になっています。(フランスの老舗パイプメーカー「Bruyere」製)


◆ ライター&マッチ(Feuerzeug und Zündholzschachtel)

lighter.jpg  
match1.jpg

オイルライターは2つとも長さ5.8cmでアルミ製です。ライター、マッチともに煙草に火を付ける以外に、焚き火やストーブ、ランプの点火に使用します。マッチ専用のベークライト製の防水ケースもあります。(下記追加)

◆ マッチコンテナー(Streichholz Behälter)

match container1 match container2
  match container3

防水仕様になっており、マッチを水気から守ります。また中には濡れても大丈夫な防水マッチが入っています。

◆ 洗面用具(Toiletten Artikel)


comb1.jpg

こちらは標準的なアルミ製の櫛(Kamm)です。身だしなみを大切にするドイツ兵にとって必需品だったらしく、持っていない兵士には部隊が給料天引きで支給したそうです。(ハルトマンさん、情報ありがとうございます)


grooming.jpg

本来、鏡と髭剃り道具は背嚢の中身ですが、上の写真に写っているので加えました。


◆ シュカート(Skat)
skat6_20111217154243.jpg

カードゲームはどの国にも共通する兵士の余暇の過ごし方です。ドイツ軍兵士の間ではシュカートが人気で兵営内や移動中の車両、そして前線でも空き時間を見つけてはゲームに興じました。


◆ 軍務用眼鏡(Dienst-Brille)

dienstbrille4.jpg  
軍務用眼鏡は基本的に顔にかけ、ポケットにはケースのみ入れていたと思います。


◆ 財布(Brieftasche)

wallet5.jpg  
財布は酒保や駐屯地での買い物に必要な小銭入れとして以外に恋人や家族の写真を入れておく場所でもありました。


◆ 略帽(Feldmutze)


M34cap3.jpg

略帽は野戦服のポケットに入れて持ち運ぶこととされていました。なお写真でよく見かけるウエストベルトに挟むのは正規の方法ではありません。ちなみに映画「Cross of Iron」で兵士が肩章の間に挟んでいましたが、試してみたところ幅が狭すぎて略帽が入らず・・・


◆ 防寒具

winter1.jpg  
手袋、マフラー、トークです。野戦服というよりもコートのポケットの中身なのかも知れませんが。

他にもポケットに入りそうなものはまだまだありますが、際限が無いのでこのあたりで締めたいと思います。
まとまりの無い内容でしたが、2週に渡ってお付き合いありがとうございました。

Pocket contents1


・・・おっと、重要なものを忘れるところでした。

◆ 包帯(Verbandpäckchen)
bandage.jpg

野戦服には包帯専用のポケットが用意されています。

pocket9.jpg  

こちらのポケットは中身が明確すぎる為、敢えてアップするまでも無かったのかも知れませんが。


FC2 Blog Rankingに参加しています。

←ポチっと応援お願いします!

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

野戦服のポケットの中身 Part1

今日は久々に好評?の"中身シリーズ"でいきたいと思います。テーマはずばり、「ドイツ兵の野戦服のポケットの中身」
当時の写真などでポケットが膨らんでいるのを見るたびに何が入っているんだろう?と疑問に思っていました。できればドイツ兵だった人に聞くのが一番なのですが、もちろんその様な人は知己におらず、いたとしても高齢の為、本人が覚えているかどうか。賛否両論あるかと思いますが自分なりに"こんなのが入ってたのでは?"と想像した内容を紹介したいと思います。


画像にマウスを当てると膨らんだポケットの中身が・・・

それでは、胸ポケットに入っていた(と思われる)アイテムから見ていきましょう。


◆ 兵隊手帳(Soldbuch)
04-17-2011 02;22;22PM.JPG  krete_CT18.jpg

やはりガチなのは兵隊手帳(Soldbuch)でしょう。胸ポケットに入れて常に携帯し、捕虜になる可能性がある場合は破棄するよう規定されていました。


◆ 手帳(Notizbuch)
dairy1.jpg  
全員必携アイテムというわけではないでしょうが、日記やメモを取る場合は必要ですね。


◆ 万年筆(Schreibewaren)
pen0.jpg
"ペンは剣よりも強し"筆記具の王様、万年筆です。ドイツにはモンブラン、ペリカンなど一流メーカーが存在しており、入隊記念に家族や友人から贈られた兵士も多かったのではないでしょうか。ちなみにエーデルマンが学生の頃、胸ポケットに万年筆を挿すのが憧れでした。(おっと、世代がバレますね)
※上記の万年筆は当時のものではありません。今から25年ほど前に購入したものです。


◆ 兵隊歌集(Soldaten Liederbuch)

songbook0.jpg  

兵隊歌集ポケット版は胸ポケットサイズに作られています。そういえば小学生の頃、遠足に行くバスの中で平凡・明星の付録の歌本に載っている歌謡曲を皆で合唱したものです。(う、ますます年がバレるなぁ・・・)


◆ ハーモニカ(Harmonika)

hahner4.jpg


合唱もハーモニカの伴奏があれば完璧です。HOHNERのハーモニカもドイツが誇る名機ですね。

hahner5.jpg

なお、このハーモニカの箱には「第66歩兵連隊第3中隊 Hans Brandt クリスマス 1942」のスタンプが押してあります。
(Hans兵士に送られたクリスマス特別配給品でしょうか)


◆ ホイッスル(Trillerpfeifen)
hoistle1.jpg

こちらは楽器ではなく、下士官用のホイッスルです。ベークライト製で携帯用のランヤードが付いています。一番上の写真のように第2ボタンにランヤードの端を結び、右胸ポケットに入れます。


◆ 皮膚解毒剤(Hautentgiftungssalbe)

haut5.jpg    haut6.jpg

毒ガスが付着した皮膚を洗浄(解毒)する軟膏のボトルとそのコンテナーです。素早く対処できるようコンテナーごと胸のポケットに入れることとされていました。

decontamination.jpg
こちらはタブレットタイプの解毒剤(Hautentgiftungsmittel)で上記同様胸のポケットに入れるよう規定されていました。
これらの解毒剤については改めてガスマスクのアクセサリーで取り上げたいと思います。


◆ コンドーム(Kondom)

condom.jpg  

官給コンドーム(未開封)です。上から押すとゴムの"ぐにゃっ"とした感触があります。


        condom3.jpg

ネットで拾った画像ですが、上記の袋に入っているモノもこんな感じでは無いでしょうか。(確実に使えないでしょうけど)

◆ 抗神経痛剤(Antineuralgie)


            antineuralgie1.jpg

いわゆる鎮痛剤で頭痛や歯の痛みに効き、戦場では必需品でした。他にはバイヤー製薬のアスピリンが有名ですね。

asprin5.jpg  

◆ ニベアクリーム(NIVEA CREME)

nivea0.jpg
ニベアクリームは雑嚢の中身で取り上げましたが、"パン袋"より野戦服のポケットの方が相応しいのかも知れません。しもやけや火傷の手当てに使う以外に面白い使用法が『最強の狙撃手』(Albrecht Wacker著)に書かれています。なんとニベアクリームを食べると黄疸に似た症状が出る為、仮病を装い戦線から離脱する手口に使われたとのこと。


最強の狙撃手最強の狙撃手
(2007/03)
アルブレヒト ヴァッカー

商品詳細を見る
 

◆ 小銃アクセサリー(Zubehör für Gewehr)

cap1.jpg

マズル・キャップ、予備の弾薬クリップの収納はポケットに。

◆ 裁縫キット(Kameradenhilfe)

kameradenhilfe.jpg  

"Kameradenhilfe"(戦友の助け)というDRAHOMA社の裁縫キットです。ドイツ軍は身嗜みに非常に厳しい軍隊で兵士は衣服の管理は自分で行うことが義務付けられており、上記のようなポケットサイズの裁縫キットを携帯していました。

  kameradenhilfe03.jpg
糸針、予備のボタンがセットになっており、ほつれや破れの簡単な修理、ボタンの縫付け位はできるようになっています。
まだまだ「野戦服のポケットの中身」は続きますが、一度この辺りで区切って"Part 2"で残りを紹介したいと思います。


FC2 Blog Rankingに参加しています。

←ポチっと応援お願いします!

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

M35陸軍ヘルメット (Stahlhelm 35)

本日はM35スチールヘルメット(Stahlhelm 35)をアップします。過去にも何度か取り上げていますが、今回はあるコレクター様からヘルメットに関する大変興味深い話を伺ったので、その内容を中心にブログを進めたいと思います。
ここではコレクター様を仮にMさんとさせていただきます。
            M35DDa.jpg
Mさんもタミヤの1/35ミニチュアシリーズのプラモデルがきっかけでドイツ軍ファンになったそうです。

M35t.jpg
多くのモデラーと同様、色に拘るMさんはタミヤ指定色のフィールドグレイと頭の中のイメージとのギャップに悩みました。
タミヤが指定する色(フィールドグレイ)でヘルメットを塗っても何かが違う、本物はどんな色なんだろう?と

実は私にも似たような経験があります。
ご存知の通りパッケージの裏には塗装見本が載っているのですが、ヘルメットはフィールドグレイで塗るよう指定されているのにも関わらず、あるセットは青っぽく、また別のセットは緑に近い色になっており統一感がありませんでした。
当時、色温度などという言葉を知るよしも無い少年にとって、果たして本当の色はどれなのか塗るたびに悩んでいました。

12087931_o2.jpg 15964859_o2.jpg

さて話をMさんに戻します。

中学生になったMさんは当時渋谷にあったアルバンを訪れ、夢にまで見た実物を目にし大変衝撃を受けます。
「これが実物・・・欲しい」 
しかしながら当時中学生だったMさんに「日本一の高級軍装店」と言われたアルバンのヘルメットは高根の花でした。
そらからというもの、タミヤのパッケージのイラストを見てはヘルメットに憧れる日々が続きました。

M35v.jpg
昭和54年(1979年)当時の広告。現在と遜色ない価格です。

一方、エーデルマン少年は、関西、もといドイツの田舎で実物とは無縁の生活を送っており、フィールドグレイにブラックやガンメタを混ぜることで実物(っぽい)色に近づける試行錯誤を繰り返していました。
(そして、だんだんアルゲマイネに近い色になっていく・・・)

Mさんはその後も品揃えでは右に出るものはいないと言われた東京ガンシップに通い本物に触れ目を養っていきます。

gunship.jpg
やがて念願の実物ヘルメットを手にしたMさんは、ヘルメットコレクターとしての道を着実に歩んでいきます。

ちなみに社会人になって上京したエーデルマンが初めて訪れたドイツ軍装店がガンシップです。
当時M35とM40の違いも判らない私にとって敷居の高いお店でしたが、店長(らしい人)に、とても親切にしていただいた記憶があります。(その時はさんざん質問して結局何も買いませんでした。ごめんなさい!)

では、そろそろヘルメットの紹介に移りたいと思います。
 
こちらはドイツ陸軍が使用したM35スチールヘルメットです。ET(Eisenhüttenwerke社)製、シェルサイズは64cmです。
1943年8月23日付け通達で廃止された国家鷲章のデカールが貼られています。
塗装は戦前のヘルメットによく見られる黄色みの強いフィールドグレイ色で「アップルグリーン」と呼ばれています。

なおMさんによると、ドイツ本国には元々アップルグリーンに相当する呼称は存在していないようです。本来のフィールドグレイのペイントが長年の保管の間に、油煙によって黄色みがかったのがアップルグリーンに見える為、後年アメリカ人コレクターによって付けられた「造語」では無いかと。
(ドイツ軍ヘルメット研究の第一人者Goodapple氏はその著作で戦前のM35のペイントを parade finish light green と命名してはいますが、アップルグリーンという呼称は出てこないとのこと)
M35DD2.jpg  
よって厳格なコレクターはアッ プルグリーンという呼び方はせず、フィールドグレイもしくはフェルドグラウで通すとか。
これは全然知りませんでした。。。

  M35DD3.jpg  
反対側には国家色のデカールが貼られています。国家色は1940年3月21日付け通達で廃止されたので、このヘルメットはそれ以前に作られたことになります。

M35f_20121008104448.jpg M35e.jpg
デカールのクローズアップ写真です。国家色のサイズはタテ40mm x ヨコ33mm、国家鷲章は38mm x 31mmです。
一種類に見えるデカールも細かく分類するといくつか種類があるようです。
国家色は陸・海・空軍、国家鷲章は陸軍と海軍のヘルメットに貼られました。(ただし海軍の鷲章は黄色みを帯びている)
また淵を見ると薄っすらと色が違うことが判ります。
これはデカールを保護する目的で製造工場で行われたラッカーコートの皮膜です。


M35n.jpg

ヘルメットのM31ライナー(内装)です。
ドイツ軍ヘルメットのライナーシステムは非常に優れており、通常8つある革タブ(海外ではfingerとも言う)が頭にしっかりと密着し、激しい動きでもずれないようになっています。


M35k3.jpg  

上部から見たところで、矢印の位置でライナーバンドがヘルメット本体(シェル)にリベット留めされています。

M35l.jpg
M35スチールヘルメットのリベットは真鍮もしくはニッケル製で、錆止めの亜鉛メッキがされています。
M35m.jpg
このヘルメットに付いているライナーバンドは1937年製でチンストラップ取り付け部が写真の通り一重になっています。この部分は非常に破損し易く1938年にライナーを二重にする改良が行われました。

下の写真でも判るとおり、片方のライナーバンドが破損しています。。。
M35w.jpg
初期のライナーはシープ/ゴートスキンで作られていましたが、その後、牛・豚革に置き換えられます。
丸で囲まれた56のスタンプはライナーのサイズが56cmという意味で、シェルサイズ64cmのヘルメットに付けられました。
(シェルサイズ64cmには57cmのライナーが付けられることもあり)

 M35 EF64 #3521 L
頭頂部内側のクローズアップ。この写真で見ると確かにフィールドグレイです。
薄っすらとですが、ドームスタンプが残っています。ローマ数字の「Ⅰ」と「193?」が辛うじて読めます。
このスタンプは品質検査に合格したというという証で、国防省(Reichskriegsministerium)から派遣された検査員によって押されました。
なおロットから抜取り検査なので、全てのヘルメットに押されているわけではありません。


      M35x.jpg


こちらがドームスタンプ(陸・海軍用)です。ローマ数字は検査員によって変わり、年号は製造年となります。

M35j.jpg
チンストラップ取り付け金具のクローズアップ。角ばった形状の金具はアルミ製で1940年には鉄製に変更されます。

M35i.jpg
チンストラップの先端には「R.LARSEN BERLIN 1938」の刻印があります。

さて、ここからはヘルメットコレクターのMさんに伝授いただいたヘルメットのメンテナンス方法を公開したいと思います。
(間違って書いてしまうとまずいので、いただいたメールの文章をそのまま転載します)

(転載ここから)
シェルの防錆対策については、ドイツのヘルメットは材質が良いのでそのまま何もしないで良いと思います。
湿気がなければ錆は拡がりません。(30年の経験から言います。)
むしろ、防錆のためにとオイルを塗るのはよくありません。
鉱物質のオイルは塗装を明らかにダメにします。鉱物油を長年つけたままにしますと、塗料の密着度が悪くなり、最悪の場合、こすっただけでベロリとはがれてしまいます。
ドイツヘルメットの焼付塗装は品質が高いので、そんなことにはならないと思いますが、一般的に、鉱物質のオイルは塗膜を溶融させる性質があるので絶対に使ってはいけません。
あと、シェル内側の頭頂部にオリジナルの艶消しの塗装が残っている場合、それはとても大切ですから何も塗ってはいけません。

錆の対策で何よりも大切なのは、湿気です。(中略)湿気にさえ気をつければ錆の心配はいらないと思います。

シェルに塗布してもOKなものがあります。
80年代に出版され今でも評価の高い著作「GERMAN HELMETS 1933-1945 VOL.2」 の中で著者のGood Apple氏が勧めている「白色ワセリン」です。
(製品名ではありません。日本薬局方のワセリンです。薬局・ドラックストアで安く買えます。)


waserin1.jpg  

ワセリンをごく薄く塗ってウエスでべた付きがなくなるまで拭き取るだけでOKです。
塗 装の微細な傷を目立たなくしますし、塗膜が古くなって白化(チョーキング:塗膜が劣化して粉を吹いたように白くなってしまうこと)したペイントの本来の色 を取り戻してくれます。また、全体的な光沢も均質にしてくれますので、見栄えがグッとよくなります。ワセリンが最も害がなく、安価でお勧めです。

もう一点、私が長年使用しているのは製品名「革の達人」という保革油です。(ネットで検索すればいくらでも出てきます。)
ワセリンに密ロウ、ホホバ油が添加されているようです。良くあるシリコン系のテカッとしたぎらつきになることなく、自然な半光沢に仕上がります。
私はかれこれ10年程、使っていますが、トラブルは全くありません。
ワセリン・革の達人共に、使用は最小限度に。べた付きが残るようでは付け過ぎです。
(転載ここまで)

ちなみに「ラナパー」は革の達人の成分と同じようです。(値段は革の達人の方が安い)

Ranapur.jpg
なおラナパーも革の達人も基本は保革油。Mさんに革のライナーには使用できないか質問してみました。
この問いに対してもMさんから親切丁寧な回答が得られましたので転載させていただきます。

(転載ここから)
ラナパーはこれまでのユーザーの評価や実績からしても信頼性があり、革のライナーにも使用出来そうですが、光沢成分が入っているので要注意です。オリジナルのライナーに使用されているシープ/ゴートスキンには、本来そのような光沢は無いからです。
ホームセンターで普通に入手出来る保革油、たとえばミンクオイルとかは使用厳禁です。絶対にデリケートなシープ/ゴートスキンに使用しては いけません。そもそもそれらの品は、実用本位の現代の革製品に使用するためにあるもので、長年を経過し、これから100年先も生きながらえるアンティーク皮革のためにはつくられていないからです。基剤となる油脂成分は不明ですし、シリコンや芳香剤、皮革軟化剤、研磨剤等、どんな添加剤が含まれているかもわかりませんから、怖くて使えません。

私がお勧めなのは、ワセリンです。これは前著でGoodapple氏が勧めています。ワセリンは軟膏の基剤としても使われているくらいですから、革に与えるダメージは少ないと言えるでしょう。勿論、不自然な光沢が出ることもありません。

もうひとつ、私が使用し、経過を観察していて良好なものがあります。製品名はLEDERBALSEM。オランダ製の羊毛油です。シープスキンに羊毛油。気分的にもマッチングしますね。この製品の優れているところは、シリコンや香料などの余計な添加物が入っていないところです。乳化状になっているので、塗リやすく、軽く指で伸ばすだけでひろがります。劣化したライナー皮革は大変デリケートで、指で強くこすっただけで、はがれてしまうこともあるので、この塗りやすさは重要です。

15363_1.jpg
ワセリンもLEDERBALSEMも、使用することによって、乾いてガサガサになっていた皮革が「生き返る」のが実感できます。(良くしようと思って、塗り過ぎてはいけません。ごく少量が基本です。念のため。)

確かに保革油によりライナー皮革の状態は良くなりますが、良いことばかりではありません。オリジナルのライナー 皮革は、その多くが出荷時はタン色です。使用で痛むと茶色く変色してゆきます。製造後70年あまりを経たライナー皮革は当然痛んでいますから、保革油を塗ると、過去にカビが発生したところは黒ずんでシミがあらわれてしまいます。全体的にも色が濃くなってコンデション・グレードが下がります。(本来のタン色が残っているほうがコンデションが良いと判断されます。)

また、私は経験がないのですが、保革油は塗り過ぎるとカビが生えやすくなったり、その時は保革油を入れて良くなったように見えても、長年の経過で逆に皮革自体を劣化させることがあるとも聞いています。 ドイツ軍装備品の多くで使われている堅牢な牛革と違って、ヘルメットのライナー皮革はその扱いがとってもデリケートです。 手入れの誤りで貴重な歴史的遺品をダメにしてしまいかねません。ですから、実は何もせずにそのままカビが生えないよう注意して保管するのが最良の選択なのかも知れません。
(転載ここまで)

さっそくMさんのアドバイスにしたがい、シェルにラナパーを塗ってみました。慎重にごく少量のラナパーを一番ダメージの大きい頭頂部から広げるように塗っていき最後にウエスでふき取るとしっとりとした半光沢が出ていい感じになりました。

M35z1.jpg

最後になってしまいましたが長年の経験で会得されたノウハウを惜しみも無く教えていただき、ブログを通じて公開することを快諾いただいたMさんに感謝の意を表したいと思います。今後も宜しくお願いします。

M35p.jpg 


FC2 Blog Rankingに参加しています。

←ポチっと応援お願いします!

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...
Profile

エーデルマン

Author:エーデルマン
脳内の99%をドイツ軍が占めている、そんなアラフィフ親父です。
注)当時のドイツ軍の装備・生活用品に興味がありますが、特定の団体・思想を支持するものではありません。

↓管理人へのMailはこちらからどうぞ↓

Category
FC2 Counter
Comments
Archive
Links
eBay
エーデルマンの参考文献
Ss-brigadefuhrer Und Generalmajor Der Waffen-ss Theodor "Teddy" Wisch
Ss-brigadefuhrer Und Generalmajor Der Waffen-ss Theodor "Teddy" Wisch
個人秘蔵の未公開写真が満載でLSSAHファンは必読の書。著者は友人

WWII ドイツ軍兵器集 〈火器/軍装編〉 (1980年) ワイルドムック
WWII ドイツ軍兵器集 〈火器/軍装編〉 (1980年) ワイルドムック
長年教科書だった本。小宮氏の「ドイツ軍の全貌」の解説がすごい

最強の狙撃手
最強の狙撃手
ドイツ軍No.2スナイパーの回顧録。狙撃シーンもすごいが、当時の兵士の生活も垣間見れる一冊

第2次大戦ドイツ軍装ガイド
第2次大戦ドイツ軍装ガイド
鮮明な写真による軍装品説明はブログ写真撮影の参考にしています

ドイツ軍装備大図鑑: 制服・兵器から日用品まで
ドイツ軍装備大図鑑: 制服・兵器から日用品まで
軍装品のカタログとも言えるボリュームは圧巻。実は密かに打倒を狙っていたり・・・

第2次大戦ドイツの自動火器
第2次大戦ドイツの自動火器
実物のFG42実射レポートを読めるのはこの本だけ

“グロースドイッチュランド”師団写真史―東部戦線におけるGD機甲擲弾兵師団1942‐1944
“グロースドイッチュランド”師団写真史―東部戦線におけるGD機甲擲弾兵師団1942‐1944
ドイツ国防軍好きなら買って損はなし

図説ドイツ軍用銃パーフェクトバイブル (歴史群像シリーズ Modern Warfare MW)
図説ドイツ軍用銃パーフェクトバイブル (歴史群像シリーズ Modern Warfare MW)
ドイツの軍用銃の専門書でビジュアル的に見ていて楽しい

ドイツの小銃拳銃機関銃―歩兵兵器の徹底研究 (光人社NF文庫)
ドイツの小銃拳銃機関銃―歩兵兵器の徹底研究 (光人社NF文庫)
ドイツ軍用銃のバイブル的な書。ドイツ軍スナイパートップ3への一問一答が興味深い

Feldbluse: The German Soldier's Field Tunic, 1933-45
Feldbluse: The German Soldier's Field Tunic, 1933-45
M33からM44までドイツ陸軍の野戦服を網羅。特にM36以前の野戦服は必見

Rations of the German Wehrmacht in World War II
Rations of the German Wehrmacht in World War II
とにかく当時のドイツ兵が食べていた糧食にこだわった一冊

武器と爆薬―悪夢のメカニズム図解
武器と爆薬―悪夢のメカニズム図解
迫撃砲はどうやって砲弾を飛ばすのか?小銃擲弾は?ほかにも大砲や爆弾のしくみを源文マンガでわかりやすく解説

グラフィックアクション GRAPHIC ACTION 1993年 No.17
グラフィックアクション GRAPHIC ACTION 1993年 No.17
このシリーズは市場で見つけたら買うべし

ドイツ武装親衛隊軍装ガイド (ミリタリー・ユニフォーム)
ドイツ武装親衛隊軍装ガイド (ミリタリー・ユニフォーム)
WSS専門だけど全部実物!

鼠たちの戦争〈上〉 (新潮文庫)
鼠たちの戦争〈上〉 (新潮文庫)
映画「スターリングラード」の原作本的な内容だが100倍面白い

鼠たちの戦争〈下〉 (新潮文庫)
鼠たちの戦争〈下〉 (新潮文庫)


スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943 (朝日文庫)
スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943 (朝日文庫)
塹壕から故郷へ送った兵士の手紙が興味深い「クリスマスはドイツ風に」の章は涙なくしては読めません

ケルベロス 鋼鉄の猟犬 (幻冬舎文庫)
ケルベロス 鋼鉄の猟犬 (幻冬舎文庫)
ヒトラーが暗殺された後の撤退戦を描いた架空小説。小道具にこだわるところがマニアっぽい

Flag Counter
QR CODE
QR