M30ガスマスク用収納缶(Tragebusche für Gasmaske 30)

通称ショート缶と呼ばれるM30ガスマスク(Gasmaske M30)の収納缶(Tragebusche 写真右)は、ブログを始めて間もない頃にロング缶(M38ガスマスク用収納缶)と一緒に紹介しましたが、本日はそのバリエーションについて。
1935年にライヒスヴェーア(共和国軍)からヴェアマハト(国防軍)に変わると同時にガスマスク収納缶のデザインも一新されます。下記の写真の左側が1935年に導入された収納缶、右側は既に紹介していますが1937年に導入されたモデルです。

 M30GASCAN4.jpg

両方とも缶の長さは24.5cm、直径12cmです。前回の日記で書いた通り、1938年に面体がゴム製のガスマスクが導入されてこの缶では納まりきれなくなった為、3cm長いロング缶が導入されることになります。

M30GASCAN29.jpg    
この収納缶、コレクターの間でもモデル名が確立しておらず、“M35収納缶”といった呼称はありません。ときおり左を“35年モデル”もしくは“ファーストモデル”、右を“37年モデル”、“セカンドモデル”と呼んでいるのを見かけます。ここでは便宜上35年モデル、37年モデルとしたいと思います。

M30GASCAN25.jpg
35年、37年モデルの唯一の違いは開閉ラッチの形状のみです。


M30GASCAN21.jpg  
上記は35年モデルの開閉ラッチ部分のクローズアップ。

  M30GASCAN20.jpg   
ストラップを上に引っ張ると開閉ラッチのロックが外れます。

 M30GASCAN24.jpg   
オープン!非常に簡単に開閉することができます。
ただし、この機構は開閉が楽な反面、ロックが外れやすく密閉を必要とするガスマスク缶には相応しくありません。


 M30GASCAN31.jpg  
そこで、改良型としてバネ式の開閉ラッチが1937年に導入されます。この機構は優れていたためその後標準化され、双眼鏡zf41狙撃用スコープのケースなどにも使用されます。

M30GASCAN8.jpg

上蓋の内側には予備の曇り防止用レンズを入れる専用のコンパートメントあります。こちらは35年モデルの写真で、1936と「A H G」を組み合わせたメーカーの刻印があります。納品日でしょうか?「1.2.38」とスタンプが押されているのが判ります。

 M30GASCAN15.jpg
こちらは37年モデルの上蓋の裏側で、ケースを開けたところです。曇り防止用レンズがこのように通常2枚入っています。
ちなみにこちらのコンパートメントの蓋には「1937」の刻印があります。

M30GASCAN33.jpg
35年モデル収納缶と中身。写真の通り、マイク取付けアダプターのついたガスマスクが入っていました。こちらのマスクについてはまだ不勉強なので、調べてから改めて紹介したいと思います。


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M38ガスマスク (Gasmaske 38)

先週末は久々の家族旅行でした。旅行先でもパソコンを持っていって更新・・と思ったのですが、旅行中くらい家族との時間を大事にせねば、ということで一回お休みさせていただきました。(ちょうどネタが無くなったというのもありますが・・・)

さて、今回のネタは以前紹介したM38ガスマスク(ゴム製面体)のフィールドグレイバージョンです。
個人的な感覚ですが、初期型のM30ガスマスク(ゴム引き布製面体)と比べてこのタイプはあまり見かけないような。。。過去の経験では10対1くらいの割合でしょうか?

gasmask56.jpg  
第二次大戦に使用されたドイツ軍のガスマスクはフィルター(キャニスターとも言う)で濾過するシステムで、フィルターは面体に直結しています。(直結式と言います、マスクとフィルターが分離しホースでつながっている形式のものは隔離式です)

gasmask64-1.jpg
面体の内側にいくつか「40」のマークがあることから、この部分は1940年に作られたようです。

gasmask65.jpg
「bwz」はオラニエンブルグにあったAuer-Gesellschaft 社のオーディナンスコードです。

gasmask62.jpg
M30ガスマスク(左)とM38ガスマスク(右)の比較。 浸透性の強いマスタードガスへの防御を高める為、1938年に面体がゴム引き布からゴム製に変更となりました。
なおM38ガスマスク面体の額にある「3」はサイズ「小」を意味するのですが、小さいサイズはあまり生産されなかったのか、他のサイズ(1“大”、2“中”)に比べると残存数が少ないような気がします。

M30GASCAN16.jpg
面体が嵩張るゴム製になったことで、従来の収納缶(左)では収納出来なくなり、縦に3cm長いM38ガスマスク用の缶(左)が導入されました。


gasmask69.jpg  

M30ガスマスクのハーネスは7点、M38ガスマスクのハーネスは5点支持です。

gasmask66.jpg
今度はM38ガスマスクどうしの比較です。1943年製のガスマスク(右)と並べて見ても構造は全く同じ、違うのは面体、金属パーツの色のみです。

gasmask67.jpg   

gasmask68.jpg

バルブの比較です。どちらもbtc(Honsel Werke A.-G, Meschede)社製で上は41年製、下は44年製です。それぞれ面体よりも一年の後の製造です。“青い塗装は鉄製を意味する”ということで磁石で実験してみました。フィールドグレイのバルブには磁石が付かず、青の方には付くという当然の結果となりました。

面体のバリエーションは他にもゴム引き布+青金属パーツというものがありますが、そっちはフィールドグレイのゴム面体よりさらに珍しく入手が困難です。もし見つけたら購入することをお勧めします。


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裁縫キット(Nähzeug "Kameradenhilfe" )

裁縫キットは野戦服のポケットの中身としてアップしましたが、今回はキットの中身と収納ケースのバリエーションを紹介したいと思います。
 
kameradenhilfe031.jpg  
ドイツ軍は伝統的に身だしなみに厳格で、野戦服の修繕は出来る限り兵士自身によって行われることとされていました。
よって兵士は上記のような携帯用裁縫キットで兵営、前線で時間を見つけては破けやほつれ、ボタン外れを修繕しました。また昇進時にトレッセや徽章の縫いつけ、勲章の佩用ループなどの作成から、怪我の応急処置まで幅広く使えます。

kameradenhilfe17.jpg
第一次大戦前の兵営で野戦服のメンテナンスをする兵士

裁縫キットの中身から。
                 kameradenhilfe13.jpg


             kameradenhilfe9.jpg
まずは針です。上の紙の包みには大小さまざまな針が入っています。一番長い針で7.8cm、何に使うんでしょう?

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縫い糸各種。上2つはどちらも太さが30番で20m、白とフィールドグレイの色違い。下の糸の番手はわかりませんが太いので、セーターや靴下など毛糸製品用と思われます。

Mending socks

       kameradenhilfe10.jpg
象牙ヤシのボタンが15個袋入り、他にも野戦服のボタン(アルミ、圧縮紙製)が入っています。


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安全ピンは前線での応急の修繕、略帽の頭頂部の折り返しが開かないよう止めるのに使われました。

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"Kameradenhilfe"のgerade schere(直はさみ)。小型サイズで収納ケースに入る大きさです。

最後に裁縫キットを収納するケースの紹介です。

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初期の収納ケースで人工皮革で作られています。


kameradenhilfe02-1.jpg  
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コットン地で出来た収納ケース。表には"Kameradenhilfe"、裏にはDRAHOMA社のロゴが入っています。

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冒頭で書いたように、ドイツ軍は服装に対する規律が厳しく、点呼等で上官から厳しくチェックされました。兵士にとって裁縫キットはまさに"Kameradenhilfe"(戦友の助け)だったのでしょう。

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M1910飯盒 (Kochgeschirr 1910)

第二次大戦のドイツ兵の飯盒と言えばM31飯盒(Kochgeschirr 31)ですが、そのM31飯盒のご先祖様、いや兄貴分と言うべきM1910飯盒(もしくはM10飯盒)を本日はネタにしたいと思います。


MK1910-0-1.jpg  
こちらがM1910飯盒です。採用は帝政ドイツ時代の1910年、まずは第一次大戦で使用されます。


フランスの納屋で休息中のドイツ帝国軍兵士。M1910飯盒が写っています。(マウスを当てると拡大されます)

MK1910-18.jpg
こちらの写真にはM1910飯盒の他に水筒やGew.98、銃剣などが鮮明に写っています。

hangou36_20120930103704.jpg
なお当初はアルミニウム製でしたが、第一次大戦後半の1917年頃からスチール製に変わり琺瑯(エナメル)でコーティングされたものが使用されたようです。

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第一次大戦後はヴァイマール共和国軍(ライヒスヴェーア)、ナチスが政権を取った後もSA(突撃隊)、NSKK(国家社会主義自動車軍団)、HJ(ヒトラーユーゲント)といった国内の準軍事的な部隊によって使用が続けられます。また当時の写真を見るとSS-VT(初期のSS戦闘部隊)やHeer(陸軍)でも使用されていたことが判ります。


MK1910-9-1.jpg  
左がM31飯盒で右がM1910飯盒です。
右側のM1910飯盒をずーっと見てると、見慣れたはずのM31飯盒が寸詰まりに見えるから不思議。


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M1910、M31飯盒共にキドニー(腎臓)型と云われる扁平な形をしており、ハンドルが付いて持ち運び出来るようになっています。M31はM1910を縦に3cm短くした形をしており、それにより容量はM1910は2.2リットルに対してM31は1.7リットルとなっています。M31には500ccの目盛りが3つのところM1910には目盛りが4つあるのが判ります。

IMG_NEW.jpg
これは1941年頃に撮られたオランダに駐留する工兵中隊の写真ですが、左の襟がダークグリーンの野戦服を着た兵士はM1910飯盒、その他の兵士はM31飯盒を使っています。

それではM1910飯盒のディティールです。

MK1910-20.jpg  
上蓋に刻印があります。RZMはReichszeugmeisterei (党需品管理局)の略、M6/17/38の数字は、M6がアルミニウム製、17はメーカーコード 、38は1938年製を意味します。


MK1910-5.jpg
ハンドルの基部にも上蓋と同じ刻印があります。

次にM1910飯盒の携帯方法について

MK1910-23.jpg
上記の写真の通り、M1910飯盒の特徴はハンドルにベルトを通す金具が水平と垂直両方向にある点です。

まずは水平方向のベルト通しを利用した携帯方法
MK1910-21.jpg
上記は第一次大戦のドイツ兵の行軍装備で、背嚢に2本のストラップで飯盒を装着しています。


12_006.jpg
ヒトラーユーゲントも同じ装着方法を採用しています。HJの装備は第一次大戦のものとほとんど同じですね。


MK1910-25.jpg
こちらは垂直方向のベルト通しを利用した携帯例です。写真ではツェルトバーンと一緒に固定していますが、この方法だとかなり長いストラップが必要になります。恐らく2本の装備ストラップを連結しているものと思われます。

なお、M1910飯盒には折りたたみ式スプーン・フォークを収納できる機能があるものがあります。

 
   rwmk_04.jpg

上記画像はTom氏のサイトから借用しました。
この写真では判りづらいですが、飯盒の淵にはスプーン・フォークの両端をひっかける為の突起が付いています。
しかしながら、この飯盒にはそういった突起は一切ありません。生産工数の削減によるものでしょうか?

その代わりと言うか、この飯盒には中蓋が付いていました。

      MK1910-6.jpg
第二次大戦中のドイツ軍の飯盒には、果たして中蓋があったのか?
後期のM31飯盒には中蓋がついていたらしいのですが、初期、それもM1910飯盒に存在しているという話は聞いたことがりません。しかしいざこうやって現物を見ると、ひょっとして・・・なんて思ったり。

MK1910-24.jpg
両側に四角い穴が開いている所はオーストリア軍の飯盒の中蓋にそっくりなので、ひょっとしたら戦後に組み合わせた可能性もあります。(オーストリア軍の飯盒もドイツ軍と同じサイズ?)ちなみにM31飯盒にはぴったりと収まりました。

MK1910-8.jpg

四角い穴はこのようにして上蓋のハンドルの端に中蓋を引っ掛ける為のものです。
当時の写真をネットで探しましたが、M31飯盒を含めて中蓋を使っている写真は見つからず・・・上記のような使い方は後処理も含めて面倒、ということで中蓋は部隊で回収してしまったのでしょうか?

MK1910-26.jpg


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