陸軍下士官・兵用バックルとベルト(末期型)

本日は大戦末期に生産、陸軍下士官・兵に支給された鉄製バックルとベルトを紹介します。
1941年のモスクワ攻防戦、42年のスターリングラードの戦いで大敗北を喫し人的・物資的な大損害を受けたドイツ軍は、兵士に支給する装備の省資源化をすすめ、質よりも量を優先するようになります。

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大戦末期(1944~45年)の国防軍兵士の軍装。
M44野戦服M43規格帽M44雑嚢、そして今回紹介する末期型バックルとベルトです。なお、ショカコーラのパッケージも鉄製から紙製に変更されました。

まずは末期型のバックルから。
M44B_1.jpg
鉄製のパンツァーグラウ塗装で典型的な後期型バックルの特徴を持っています。材質についてですが、初期型バックルはアルミで作られていましたが、アルミは航空機の材料で貴重となった為、かなり早い時期(41年頃)に、鉄製に変更されています。(アルミ製品が鉄製に置き換わることになった背景についてはコチラ
末期でも、〝GOTT MIT UNS〟(神は我らと共にあり)」の文字や国家鷲章のデザインは変わっていません。

 M44B_2_1.jpg 
裏側です。42年頃から省略される革タブがこちらにも付いていません。
なおベルト穴を通す爪の部品が、茶色くエナメル加工されていることがお分かりでしょうか?このエナメル加工は、防錆以外にベルト穴の出し入れを滑らかにするという効果があると考えます。

M44B_18_2.jpg  
「J.F.S」の刻印があります。(製造メーカーコードで、Gablonzにあった、Josef Feix & Sohnes社)

次に末期型ベルト(M44ベルト)を見ていきましょう。
M44B_7.jpg

M44ベルトには、それまでのベルトとは外観上違う点があります。

M44B_22-1.jpg
通常の下士官・兵用ベルト(上)M44ベルト(下)との比較。M44ベルトは表からベルト穴が見えます。

M44B_20_1.jpg
通常のベルトはベルト本体と長さ調整用ベルトの二重になっていて、ベルト穴は表から見えないようになっています。

M44B_19_1.jpg
一方、M44ベルトは長さ調整用ベルトではなく、ベルト本体に開けられたベルト穴に爪を通すようになっています。
この省略された長さ調整用ベルトですが、薄い為に切れやすくなっており、切れるとベルトは使えなくなってしまいます。(切れた場合の対処法についてはコチラで記事にしています)

調整用ベルトを無くしたのは、材料の節約と生産性の向上に加え、使い易さを考慮した結果だと思います。

M44B_4.jpg
パンツァーグラウのバックルとM44ベルトは大戦末期の省力化モデルというよりは、兵士の声を反映させた進化形なのかも知れません。

M44B_24.jpg


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山岳帽(Bergmütze)

ご無沙汰しています。今回はドイツ軍山岳猟兵(Gebirgsjäger)のトレードマークである、山岳帽(Bergmütze)をアップします。
山岳帽1
最初に山岳帽の起源について調べました。まずはWikipediaから引用したいと思います。
山岳帽は1868年にオーストリア=ハンガリー帝国軍の新しい野戦軍装(Feldadjustierung)規定において、歩兵、砲兵、騎兵共通の野戦帽(Feldkappe)として山岳帽が採用された。この時点で特徴的な防寒覆いを備えていた。1871年、ひさしを革で補強した新型野戦帽が歩兵および砲兵向けに採用された。


Feldkappe1.jpg  

こちらが、ネットで拾ったオーストリア=ハンガリー帝国軍国土防衛隊のFeldkappeの写真です。
防寒覆い=フラップが前合わせになっている点はドイツ軍の山岳帽と同じです。

Alpenkorps1.jpg 
こちらは帝政ドイツのアルペン軍団(Alpenkorps)兵士。写真ではよく分かりませんが、同じく山岳帽を被っています。

第一次大戦後、山岳帽はスキーや登山時の防寒帽として民間でも使用されることになります。
1930年代のスキーウェアの広告
60.jpg 

防寒性にすぐれた山岳帽はヴェルサイユ条約を破棄し再軍備を進めるナチスドイツ軍でも採用されることになります。

Bergmutze_0.jpg 
こちらは1935年発行のREIBERTに掲載されている制服と階級章のイラスト。(STEINER氏提供) 
この頃には戦中と同じデザインの山岳帽が既に存在していたことが分かります。

ところでライヒスヴェアからヴェアマハト=国防軍に移行するに伴い、1934年2月に制定された国家鷲章を制服の右胸や帽子に縫い付けることが義務付けられましたが、このイラストにはそれ以前の装備も記載されている点が興味深いです。

Bergmutze_1.jpg 
こちらの写真もSTEINER氏からの提供です。エーデルヴァイス章がまだ部隊章として正式に採用される前の山岳猟兵です。(エーデルヴァイス部隊章の採用については後述)
なお山岳猟兵が着用しているのは襟の色と胸の国家鷲章からM34野戦服と思われます。(袖は礼服と同じ折り返し?)

それでは山岳帽の詳細部分を見ていきましょう。

山岳帽1-2 
山岳帽には様々なバリエーションがありますが、こちらはオーストリアやバイエルン地方出身の山岳猟兵に支給されたオストマルクタイプで、他に比べてバイザーが短く、フラップが幅広になっているのが特徴です。

山岳帽5-2 
ベンチレーション用の穴は2x2=4個です。穴が4個というのは、山岳帽の特徴の一つとなっていますが、2個、あるいは無しの山岳帽も存在しています。

山岳帽15-1
初期の青味の強いフィールドグレイのラシャ生地で作られています。


山岳帽2 
帽章は戦中に作られたフィールドグレイのT字型です。他にも初期のダークグリーン地に白糸で刺繍したT字型、鷲章と国家章(コカルデ)が別パーツになったタイプ、M43規格帽に多い逆台形(Trapezoid)の帽章があります。
この帽子のフラップの前合わせは角ばったタイプですが、1930年代の山岳帽のフラップは丸みを帯びています。


山岳帽28 
帽章のクローズアップ。T字型は手縫いが基本ですが、以前紹介したM43規格帽の縫い付け方とは違います。

山岳帽29 
この山岳帽の前合わせのボタンはタグア椰子(独 Steinnuss)で作られています。南米エクアドル産のタグア椰子は別名、象牙椰子(英 Ivory nut)と呼ばれており、古くからヨーロッパで象牙の代用としてボタンやアクセサリーに使用されていました。タグア椰子の他にアルミや樹脂製ボタンのバリエーションもあります。


山岳帽14 
ボタンを裏側から見たところ。糸通し用の溝が掘られています。

山岳帽7-1
ボタンを外してフラップを下したところ。フラップが幅広になっているので、頭部の大部分を覆うことができます。


山岳帽16   
第2山岳猟兵師団第79砲兵予備大隊のオリジナルアルバムから。右側の兵士が被っている山岳帽はフラップが下がった状態です。

続いてエーデルヴァイス部隊章

山岳帽12-2 
山岳帽のエーデルヴァイス部隊章は1939年5月2日に野戦服用記章と共に制定されました。(H.V.39B, Nr. 196)。
本体は亜鉛合金製で中心部分は鉄製の2ピース構造になっております。山岳帽に縫う糸を通す穴が5つあり、帽子へ直接糸で縫われていますが、初期はダークグリーンの台布が間に入っています。

山岳帽5
なお、エーデルヴァイス部隊章の起源についてWikipediaには下記のような記述があります。
両国(注:オーストリア=ハンガリー帝国とドイツ帝国)の山岳猟兵は薄雪草(エーデルヴァイス)の部隊章を共有している。それは1915年5月、南方戦線においてイタリアの攻勢に対し守備していた国土防衛隊にアルペン軍団が救援として駆けつけたとき、国土防衛隊が感謝の意を込めて彼らの部隊章(エーデルヴァイス)をアルペン軍団の兵たちに送ることで敬意を表したことに始まる。エーデルヴァイスは1907年、オーストリア=ハンガリー帝国国土防衛隊のシンボルとして、皇帝フランツ・ヨーゼフI世により制定された。これら部隊は制服の襟にエーデルヴァイスを着けている。

このようにエーデルヴァイスは元々はオーストラリア=ハンバリー帝国国土防衛隊のシンボルで、後にドイツ帝国、そしてナチスドイツ軍の山岳猟兵の部隊章になったとのことです。

M35tunic52.jpg 
こちらは布製の記章。山岳猟兵の野戦服の袖に縫い付けられています

話は変わりますが、陸軍のM43規格帽は山岳帽をベースに作られたとされています。
M43cap1-1_2016100821202821e.jpg
M43規格帽には山岳帽や略帽にあったベンチレーション用の穴が省略されています。戦争末期になると陸軍の鍔付き帽子はさらなる生産性向上の為、M43規格帽に統一されますが、エーデルヴァイス部隊章は山岳猟兵のシンボルとして終戦まで使われ続けます。

山岳帽8
この帽子の内装はテーラーメイドのような造りになっていますが、このような仕様は他の官給の山岳帽でも見られます。
バイザーの裏面も含めてコットンで内張りされており、制帽のような革製のスウェットバンドが付いています。

山岳帽11 
ライナーに押されたスタンプ。ミュンヘンで製造され同地の被服廠に42年に納品されたことが分かります。サイズは53cmです。それにしてもこの山岳帽の持ち主はかなり頭が小さかったようです。

ところで山岳帽は右耳から1cm上(指一本分)、左耳からは3cm上(指三本分)、右の眉毛から1cm上に被るよう規定されていたそうです。(この規定は略帽の被り方と同じです)

山岳兵1 
当時の写真を見ると、前線でも山岳帽を被っている山岳猟兵が圧倒的に多く、山岳帽に対する拘りというか愛着をすごく感じます。まぁ、さすがに戦闘中はスチールヘルメットを被っていたでしょうけど。
しかし登山(訓練)中も山岳帽を被っている写真を見ると、果たして落石などから頭を保護できたのかと不思議に思ってしまいます。


二人の山岳猟兵が「殺人の壁」に挑む映画、『アイガー北壁』。あの時、ヘルメットを被っていれば・・・

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脳内の99%をドイツ軍が占めている、そんなアラフィフ親父です。
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