M44雑嚢 (Brotbeutel 44) 最末期型

今日は大戦末期に生産されたM44雑嚢(Brotbeutel 44)のバリエーションをアップします。

雑嚢の正式名称はBrotbeutel=パン袋ですが、兵士が常にパンを入れていたのかには疑問符が付きます。
なぜなら通常軍隊では部隊が食糧を管理しており、兵士には日に3度、1食分のみを支給することになっている中で、兵士が主食であるパンを雑嚢に入れて持ち運ぶということはあまり無かったと考えます。(チョコレートやクネッケブロートなどの携行食は入っていたかも知れません)

雑嚢というだけあって食糧以外、例えばノルマンディで捕虜になった第85歩兵師団の兵士が持っていた雑嚢には、雑嚢ストラップ、略帽、ブラシ(歯ブラシ?)、缶切り、エスビット、ラードケース、懐中電灯、髭剃りセットが入っていたようです。

0111a.jpg
投降後、雑嚢の中身を調べられるドイツ軍兵士。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、こちらがM44雑嚢のバリエーションです。(ここでは便宜上〝最末期型〟と呼びます)


BG1.jpgBG4.jpg
一般的な雑嚢の体は成していますが、M31雑嚢はもちろん、M44雑嚢に比べても、かなり省略されています。さらに左右のループの長さが違っているなど、いかにも末期的な造りになっています。

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在庫になっていた雑嚢ストラップを適当な長さに切って縫い付けた感じです。

 
BG5.jpg
M44雑嚢(左)との比較です。最末期型には真ん中のループがありません。

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飯盒や水筒を固定する革ループの形状の比較。最末期型は革ループがひょうたん型でリベット止めとなっています。
BG6.jpg
後ろから見た写真。雑嚢ストラップ用のDリングや、底部にマチがある縫い方は同じです。

この雑嚢は1944年11月に採用されたM44雑嚢よりも、さらに省略されたものなので、M45雑嚢と命名しても良いかもしれません。しかし、敢えてM44雑嚢のバリエーションとした理由は内部を見ていただければ分かります。
BG2.jpg
こちらが内部の写真。M44雑嚢の特徴であるM34クリーニングキット収納ポケットがこの雑嚢にも付いています。
BG3.jpg
写真ではハミ出ていますが、きちんと収納することができます。
BG7.jpg
このように内部の造りはM44雑嚢と共通点が多く、違いは革の節約でしょうか?ストラップが短くなっている点のみです。

ネームタグが縫い付けられています。
BG10.jpg 
官給品は個体差が無いため為、所有者が誰か分るようイニシャルが刺繍されたネームタグを縫い付けることとされていました。

BG14.jpg 
こちらは歩兵操典「REIBERT」の中の装備品に付けるネームタグとスタンプについて記載されたページ。
このようなレギュレーションがあったにも関わらず、実際はほとんど実行されてなかったようで、ネームタグが付いた装備品はあまり見かけません。私も現物を見るのはこの雑嚢が初めてです。

この最末期型の雑嚢ですが、どのような資料本にも載っておらず、果たして大戦当時のものかどうか判断がつきませんでした。そこで、いつも参考にしているフォーラムで写真を載せて意見を募ってみることにしました。

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このフォーラムには詳しいコレクターが多く、真贋については辛口評価で有名です。なので〝戦後改造品〟や〝フェイク〟と評価されるのは覚悟の上でした。

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ほっ、、、大戦末期の雑嚢と判定されました。(コメントをくれたのは2人だけですが・・・)

さて、雑嚢の中身に戻りますが、以前紹介した初期型のM31雑嚢にも同じようなポケットが後付されていることから、クリーニングキットは必須アイテムであることは間違いありません。
B-Bag03.jpg
ところで今日一日、最末期型の雑嚢が写っている当時の写真を探しているのですが、普通のM44雑嚢さえ見つけることができません・・・(涙)
大戦末期の写真は捕虜のドイツ兵を撮影したものが圧倒的多数で、武装解除された兵士のほとんどはウエストベルトを外しており、容量の少ない雑嚢は人気が無いのか持っていないケースが多いです。

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前から4人目の兵士が、ストラップでたすき掛けにした雑嚢がどのタイプかは神のみぞ知るです。


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M43野戦服 (Feldbluse 43)

M43野戦服(Feldbluse 43)は、ますます戦局が厳しくなり物資が窮乏する中、ドイツ陸軍に採用された下士官・兵用の野戦服で、4つポケットが付いた最後のモデルになります。
この野戦服は肩章は無いですが、袖のエーデルヴァイス部隊章から山岳猟兵(Gebirgsjäger)に支給されたものだと分かります。


M43_tunic_1.jpg

ドイツ軍の野戦服とは思えない茶色味の強いフィールドグレイですね。(フェルトグラウ44と言うようです)
この頃の生地はウールと再生繊維の混紡率が高くなっており、初期のウール100%の野戦服に比べると厚みもなく手触りも良くありません。
1939年以降、占領国から摂取したウールが戦闘による消耗で枯渇してきたことがうかがい知れます。
ドイツや占領国で生産されたフェルト生地以外に、緑色味の強いイタリア生地もこの頃の被服には多く使われています。
pocket04.jpg   
ポケットのスタイルの変遷。M40/M41野戦服からM42野戦服に変わった時にポケットにあったプリーツが省略され、M43野戦服ではポケットの雨蓋(フラップ)がフラットな形となります。
これは生産性の向上が主な理由とされています。プリーツの省略はともかく、雨蓋の変更はそれほど変わらないような気がしますが、後世のコレクターにとってはバリエーションの収集という苦しみ楽しみを与えてくれます。

M43_tunic_2.jpg
こちらは後ろから見た写真。それ以前の野戦服とほとんど違いはありません。


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内装は光沢のある合成繊維。レーヨン製、あるいはナイロン(ペルロン)製のどちらかだと思いますが、素人の私には見分けが付きません。



Ruhetag The Day-to-Day Life of the German Soldier in WWII: Health and Hygiene

この本では大戦中のドイツ兵の日常品の実物が鮮明な写真でたくさん紹介されているのですが、巻末に当時の繊維産業についてかなり詳しい情報が載っています。

たとえばフランス占領後に、どれだけ大量の羊毛が摂取されドイツ軍で使用されたか、やレーヨンやナイロン(ペルロン)合成繊維の種類や歴史、ウールの染色方法、そして当時の繊維の見分け方などが11ページに渡って書かれています。

M43_tunic_8.jpg 
合成繊維の特徴や『Signal』や『Der Adler』と言った兵士向けの雑誌に掲載された記事。

さて繊維の見分け方ですが、確実なのは顕微鏡検査だそうで、他にも化学検査、燃焼検査があるそうです。
一般的なコレクターにとって一番手っ取り早いのは燃焼検査ですが、貴重な野戦服に対してそんな愚行を犯すコレクターはいないでしょう。もちろん、私にもそのような気持ちは毛頭ありません。

内装の続きです。

M41野戦服までは内蔵サスペンダー(Tragegurte)は別個に存在していましたが、M42野戦服でライナーと一体化し、M43野戦服もそれを受け継いでいます。
M43tunic11.jpg
ベルトフック用ループのクローズアップ。
ループには専用に造られたタイプと、内蔵サスペンダー(Tragegurte)を再利用しているタイプの2通りがありますが、この服のループは後者のようです。なお右から二番目のループの穴の径が他の3つとは違うものになっています。


M43tunic10.jpg 
サイズのスタンプ。WB. 43はヴュルツブルクにあった被服廠もしくは補給所に1943年に納品されたことを意味します。


M43_tunic_5.jpg 
この襟章は40年制定の共通兵科でマウスグレーとなります。


M43tunic16.jpg 
襟の裏側は定番のヘリンボーンツイル。


M43_tunic_6.jpg  
胸章はフィールドグレー地にマウスグレーの刺繍タイプです。
この胸章は上辺を最初に縫い、その後下に折り返して下部をミシンで縫うという、M43規格帽の帽章と同じ方法で縫い付けられています。



M43_tunic_7.jpg 
山岳部隊章

M35tunic10-1.jpg 
こちらはM34/35野戦服の山岳部隊章ですが、デザインが違います。


ところで山岳部隊では、歩兵部隊で〝Schütze〟と呼んでいる二等兵のことを〝Jäger〟と言うようです。
ただし一等兵についてはOberjägerでは無く、通常通りOberschützeと呼んでいます。
(ちなみに山岳部隊では、OberjägerはUnteroffizier=伍長となります。ややこしいですね・・・)

M43_tunic_9.jpg
最後に『FELDBLUSE The German soldier's field tunic 1933-45』からお借りした写真。
ノルマンディで英軍兵士に荷物検査を受ける山岳猟兵。
左端と右から二人目の兵士がM43野戦服を着用しています。
どこか少年の面影を残している右端の二人は、記章からもJägerと思われます。


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脳内の99%をドイツ軍が占めている、そんなアラフィフ親父です。
注)当時のドイツ軍の装備・生活用品に興味がありますが、特定の団体・思想を支持するものではありません。

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