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M31水筒 (Feldflasche 31) Part10 末期型

こんにちは、エーデルマンです。本日は"シンドラーの水筒"と呼ばれている非常に珍しい水筒(Feldflasche 31)をご紹介したいと思います。(牛島えっさい氏のコレクションをお借りしています)
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以前紹介した末期型のM31水筒と同じ構造ですが、鉄製カップが錆止めの為、琺瑯(エナメル)で加工されています。この水筒は、ポーランドのクラクフにあったシンドラーのエナメル工場(D.E.F=Deutsche Emailwarenfabrik )で製造されたと言われています。

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当時のD.E.F。中央にオスカー・シンドラー氏が写っています。この工場では水筒以外に飯盒、フードコンテナーの内容器などを製造していました。

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映画「シンドラーのリスト」の一コマ。

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琺瑯の利点と欠点をWikipediaから引用します。
利点
・表雑菌が繁殖しづらく、化学変化を起こさないので食材の味や風味を変化させにくい。
・においの強い食材を入れても、においが移りにくい。
・酸や塩分の高い食材に強い。
・中身が金属のため熱伝導率が良く、放熱性に優れている。
・熱に強く、直火、オーブンでの使用が可能。
・耐久性に優れており、また、環境ホルモン等をほとんど出さない。
欠点
・製造時に釉薬がかかりきらない部分や、使用していく上で釉薬が欠けた部分が、水分や塩分に長期間晒されると、さびが生じる場合が多い。
・中身が金属であるため、一般的な琺瑯製品は電子レンジで使用できない。
・陶磁器ほどではないが、耐衝撃など取り扱いに慎重さが要求される。
・熱に強いが、急な温度変化には陶磁器同様の扱いが要求される。
-Wikipedia「琺瑯」より-

電子レンジ云々は除いて琺瑯は利点が多い為、第一次大戦の軍装品にも多く見ることが出来ます。

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こちらは、第一次大戦中に製造された琺瑯引きのM1910飯盒です。製造年(1917?)から100年以上経っても、琺瑯加工された本体は綺麗な状態を保っています。
時代が変わって1931年に導入された新型の水筒や飯盒にはアルミニウムが使用された為、焼き付け塗装のみとなりますが、第二次大戦が始まり戦争が激化するにつれ、貴重なアルミニウムは使用できなくなり、材料がスチール製になると琺瑯加工も復活します。
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1944年に作られたスチール製のM31飯盒です。
本体は黒い塗料で琺瑯加工されています。水筒や飯盒がアルミからスチール製に代わるのは1942年頃ですが、当初は琺瑯では無く塗装が一般的でした。しかしながら塗装の下地に使用された鉛丹(赤鉛)により鉛中毒になる恐れがあることから、人体に害が無く耐食性・耐熱性に優れた琺瑯が再び採用されます。

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シンドラーの水筒に戻りましょう。こちらは琺瑯加工されたスチール製カップです。メーカー名や年号などの刻印はありません。
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当然、カップの内側も琺瑯加工されています。
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カバーを外したところ。ボトル本体も青い釉薬で琺瑯加工されています。
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カップよりも濃い青色です。飲み口の部分は釉薬欠けたようで錆ていますが、琺瑯の残存率は非常に良いです。
カップと同様に本体にも刻印はありません。これまで数個シンドラーの水筒の実物を見ましたが、いずれも刻印はありませんでした。
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カバーは再生ウール製です。再生ウールは糸屑や裁断屑などを解きほぐして繊維に戻した「再生繊維」から作られたもので、末期の水筒カバーによく見られます。

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ストラップの留め金の裏側には宛て布があります。カバーの布も青っぽいですね。

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カバーのボタンも青い顔料で琺瑯加工されています。再生ウールのカバーの口はコットン製の縁取りがされており、~中期まで4つあるボタンは3つに減っています。

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ナス環+キャップとバックル部分が2分割されるのは、末期型のストラップの特徴です。
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ナス環は後期の統一色、ダークイエロー(ドゥンケルゲルプ)で塗装されています。
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見れば見るほど軍用とは思えないルックスで、まるで芸術品のようです。
最後になりましたが、貴重な水筒を貸して頂いた牛島えっさい氏に感謝の意を表します。


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M43野戦ズボン(Keilhose 43)

皆さま明けましておめでとうございます。令和最初の正月をいかがお過ごしでしょうか?
私は12月頭に引いた風邪がこじれてしまい、ちょっと大変な状況になってしまいました。幸いにも重症化することは無く、今はブログも出来るくらいに回復しましたが、やはり普段から適度な運動が重要であることを実感した次第です。

さて、今年最初のアップは、戦争後期に支給されたM43野戦ズボンを紹介したいと思います。
ドイツ語の"Keilhose"のKeilは楔(くさび)の意味で、hose=ズボンと合わせて楔形ズボンとなります。(英訳ではTapered Trousers、日本語直訳だと「裾絞りズボン」)
また"Rundbundhose"(英訳:Waistband Trousers =ウエストベルトが使えるズボンの意)とも表記されることがあり、いずれもM36M40野戦ズボンなどストレートズボン(Langhose)とは機能で区別されています。(ここでは便宜上、M43野戦ズボンで呼称を統一したいと思います)

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M43野戦ズボンは1942年頃から本格的に導入されたアンクルブーツ(編上靴)と短ゲートル(Gamaschen)に合わせて、それまで使用されていたストレートズボン(Langhose) の後継モデルとして1943年6月28日付けの通達で導入されました。(HV 43B, No. 398)

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アンクルブーツと短ゲートル。戦況の悪化に伴い物資が困窮するにつれ、革の温存の為に半長靴から置き換えが進みます。


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Keilhoseを楔形ズボンと呼ぶように、膝から裾にかけて幅が急激に狭くなっています。山岳猟兵部隊に支給された山岳ズボン(Berghose)をベースにしているのか、ウエスト両サイドの調整ベルトや股の補強布が見られます。ちなみに1944年6月24日付の通達により山岳ズボンは廃止され、M43野戦ズボンに統一されます。(HV 44B. No. 253) *HV=Heeres Verordnungs

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ズボン裾には幅2cm 長さ22cm、その先には幅1.2cm長さ25cmの紐が縫い付けられており、紐を通す為のアイレット(鳩目)が3か所空いています。
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本来、紐は土踏まずの下に渡し、アイレットに通した後に結ぶようになっていますが、がっちり結びすぎると激しい屈伸運動の時のズボンの抵抗で膝を痛めるので、この方法は1944年には禁止となったようです。

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最初から裾を絞ってあるので、ストレートズボンでは面倒だった半長靴や短ゲートルへ裾をたくし込む必要がなくなりました。

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M43野戦ズボンの導入のもう一つの目的はベルトループの追加です。サスペンダー以外にもベルトが使えるようになっています。
ポケットは両サイドに大型のものが2つ、フラップ付きの懐中時計用ポケットが右側に一つあるのも従前の野戦ズボンと同じです。

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社会の窓は6個のプラスチック製ボタンで留められています。上2個のボタンはフィールドブレーで下4個は黒のボタンです。内側にフィールドグレイのサスペンダー用のボタン2個が両サイドに付いています。

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サスペンダー用ボタンにサスペンダーを取り付けた状態です。

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後ろ側。ベルトループは裏側にもボタンが付いており、展開するとサスペンダーが取り付けられる様になっています。

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ベルトループを伸ばして、サスペンダーに繋げます。
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ベルトループにサスペンダーに取り付けた写真。アンクルブーツの兵士はM43野戦ズボン、半長靴の兵士はM40野戦ズボンを履いています。左から二人目の兵士は靴下でズボンの裾を巻き上げているように見えますが、この行為は1944年6月5日付けの通達で禁止となり、必ず短ゲートルを着用することが義務付けられました。
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アンクルブーツと短ゲートルを装着。スマートな半長靴に比べてどこか野暮ったいこの組み合わせは兵士からは不評でした。

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裏地は白いコットン製で、サイズやRB.ナンバーなどスタンプが押されています。

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RBナンバーとサイズスタンプ。RB. Nrの0/0320/0055は ザクセン州Halleにあった製造会社"Kurt Renne Uniform und Ausrustungswerkstatten"、E.44はエアフルト補給廠 1944年製を意味します。

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ボタン穴側の裏地はレーヨン生地のヘリンボーンツイル(HBT)になっています。

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裾の補強生地もHBTです。

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ウエストのサイズ調整用ベルトの裏地もHBTです。バックルはM40野戦ズボンで紹介したのと同じPRIMAブランドです。

上(規格帽)から下(アンクルブーツ)まで44年製で統一してみました。(一部、画像を合成しています)

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このM43野戦ズボンは以前紹介した1944年製のM43野戦服と同じ、後期の特徴である人造繊維(ビスコース・レーヨン)の割合が高い生地に経済的なバット染料で茶色味の強いフィールドグレー(フェルトグラウ44)となっています。一方、ベルトループは初期の野戦服で見られるような灰緑色のフィールドグレーです。個人的には初期の青っぽいフィールドグレーの野戦服が好みですが、このような茶色っぽい野戦服も良いですね。

最後に、昨年のように年初の目標を書こうかとも思いましたが、一つも実現できていないのでやめました。。。(2019年の目標はこちら)ただし今年も地道にドイツ軍装品の記事はアップしていきたいと思いますので、引き続き弊ブログを応援いただければ幸いです。


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脳内の99%をドイツ軍が占めている、そんなアラフィフ親父です。
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