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白兵戦章 (Nahkampfspange) 

こんにちは、エーデルマンです。本日は以前こちらでアップした白兵戦章(Nahkampfspange)について詳細に記事にしたいと思います。

白兵戦の語源は刀や剣、ナイフなどの武器を白刃と呼ぶことからだそうです。近接で殺し合う白兵戦は、弓矢や石弓が存在していた中石器時代のみならず、小銃やさらに短機関銃といった遠距離武器が発達した近代においても、勝敗を決する時にはしばしば行われました。

CCCsilver4_2020053117031210b.jpg CCCsilver5-1.jpg
ドイツ軍の教本(ヘルメットの形状からナチス政権時代に発行されたと思われる)に掲載されている銃剣攻撃を防御する方法(左)と銃剣攻撃の訓練するドイツ軍兵士(右)

shovel0-1.jpg 
銃剣やナイフや以外に、スコップも即席の打撃武器として使用されたことは良く知られています。
白兵戦は戦士として本来の資質と勇敢さが必要とされる戦いであり、それに勝ち残った兵士は称賛に価されました。

ドイツ軍は勇敢な兵士を称える為、1939年12月20日に歩兵突撃章(Infanterie-Sturmabzeichen)が陸軍総司令部のヴァルター・フォン・ブラウヒッチェによって制定されました。

Brauchitsch.jpg 
ヴァルター・ハインリヒ・アルフレート・ヘルマン・フォン・ブラウヒッチュ(長い・・・)は1881年にシレジア貴族で代々軍人の家系に生まれます。士官学校を卒業後、貴族出の軍人らしく順当に少佐まで昇進。第一世界大戦後はライヒスヴェーアで少将になったところでナチス政権が樹立、ヒトラーに陸軍元帥に任命されます。

歩兵突撃章(銀章)
IAB1.jpg 

歩兵突撃章(銅章)
PD17_11.jpg
機械化歩兵や山岳猟兵に対しては銅章が1940年6月1日に制定されます。

歩兵突撃章の授章条件は、その名の通り、突撃を3回以上行い、それぞれで第一線で武器を取り、肉弾戦を行った者となっていました。
CCCsilver13.jpg
しかしながら1941年に独ソ戦が始まると、戦闘はこれまでにない程に激しさを増し、歩兵突撃章の上位の戦功章が求められるようになります。

CCCsilver12-2.jpg
セヴァストポリの戦い(1941年9月~1942年7月)で負傷した戦友を運ぶドイツ軍兵士

そこで、1942年11月25日に白兵戦章(Nahkampfspange)が制定され、戦闘日数によって金章(III. Stufe)、銀章(II. Stufe)、銅章(I. Stufe)が授与されることになりました。(なお重度の負傷により、これ以上の戦闘続行が不可能と判断された場合、規定の日数はそれぞれ40日、20日、10日に短縮されます)

15日:銅章(I. Stufe)
CCC.jpg 

30日:銀章(II. Stufe)
CCCsilver1-1.jpg

50日:金章(III. Stufe)
CCCgold1.jpg

授章対象は国防軍兵士他、武装親衛隊で銅章が3万6400人、銀章が9500人、金章が631人に授与されたようです。

CCCsilver6_20200531101511c28.jpg
金章の栄誉は騎士鉄十字章にも匹敵し、ヒトラーが直々に授与することもありました。

CCC14.jpg 
こちらは銅章のバックプレートと刻印。A.G.M.u.K(Arbeitsgemeinschaft Metall und Kunststoff)はメーカー名でGABLONZは工場があった地名(ズデーデン地方の都市 現:チェコ共和国)です。A.G.M.u.K製の白兵戦章にバリエーションが6種類あり、こちらは"ラージフォント"と呼ばれています。
CCCsilver9-1.jpg
銀章、金章には3つの〇にそれぞれF、L、Lの文字が入った記号があります。これはメーカー名でFriedrich Linden, Lüdenscheidを表します。また、金・銀・銅いずれも左側に"FEC.W.E. PEEKHAUS BERLIN"の刻印がありますが、"FEC"はラテン語の"Fecit"の短縮形で“~製”、"W.E. PEEKHAUS"は、多くの戦時メダルをデザインしたグラフィックアーティストのWilhelm Ernst Peekhausを意味します。

所有証明書:BESITZZEUGNIS
PD21
Besitzzeugnis (所有証明書)

(Dienstgrad)(階級)
Dem Unteroffizier(伍長)
 
(VOR-UND FAMILIENNAME)(氏名)
Heinrich Stretz  (ハインリヒ・シュトレッツ)

(TRUPPENTEIL)(所属部隊)
StabII. / Pz.Gren.Rgt.40
(第40装甲擲弾兵連隊第2大隊司令部)


VERLEIHEICH FÜR TAPFERE TEILNAHME 
AN 15 NAHKAMPFTAGEN

(勇敢な15日間における近接戦闘参加に対し)

DIE 1.STUFE DER 
NAHKAMPFSPANGE

(白兵戦章 銅)

(ORT UND  DATUM) (場所・日付)
Im Felde, den 1.6.1943
(1943年6月1日前線にて)

(UNTERSCHRIFT)(署名)
gez. Henrich
*gez=gezeichnet 署名省略

(DIENSTGRAD UND DIENSTSTELLE)(階級と職務)
Oberst und Rgt.-Kdr.
(大佐 連隊長)


Für die Richtigkeit(代理署名)
Lt. und Rgt.Adj. (少尉 連隊長副官)


この勲記は第40装甲擲弾兵連隊第2大隊司令部(StabII. / Pz.Gren.Rgt.40)所属のハンイリヒ・シュトレッツ 伍長に授与された銅賞の勲記です。1943年3月初旬~中旬にハリコフ第3次攻防戦での戦闘で授章条件を満たしたようです。(詳細はこちら

/GR103-4-2.jpgBesitzzeugnis (所有証明書)

(Dienstgrad)
(階級)
Dem Unteroffizier.(伍長)
 
(Vor-und Familienname)(氏名)
Karl Lindner  (カール・リントナー)

(Truppenteil)
(所属部隊)
I. / Pz.Gren.Rgt 103
(第103装甲擲弾兵連隊第1大隊第1中隊)

Verleihe ich für tapfere Teilnahme
an 15 Nahkampftagen
(勇敢な15日間における近接戦闘参加に対し)

die 1.Stufe der
Nahkampfspange

(白兵戦章 銅)

Rgt.-Gef.-St., den 28.12.1944.
(1944年12月28日連隊司令部にて)

Oberst u. Rgt.-Kommandeur
(大佐 連隊長)


Walter Palm大佐による署名 。1945年3月20日に最後の第14装甲師団長として就任。

※こちらの所有証明書はゼラチン複写版=ヘクトグラフ(Hektograph)で作られています。印刷された証明書が手元にない場合、仮発行用とされました。

こちらは第14装甲師団第103装甲擲弾兵連隊第1大隊第1中隊(I/Panzergrenadier-Regiment 103)のカール・リントナー伍長の勲記。クールラント包囲戦で行われた15日間の近接攻撃参加により1944年12月28日に銅章を授章しました。(詳細はこちら
CCCsilver0-3.jpg
上記で紹介した白兵戦章の所有証明書とハンリヒ・シュトレッツ伍長のポートレート。歩兵突撃章や白兵戦章は現場対応能力が問われる戦功章で、子供の頃からケンカが苦手でヘタレ(関西弁で"臆病な")な自分としてはずっと憧れの存在でした。


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Author:エーデルマン
脳内の99%をドイツ軍が占めている、そんなアラフィフ親父です。
注)当時のドイツ軍の装備・生活用品に興味がありますが、特定の団体・思想を支持するものではありません。

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