認識票 (Erkennungsmarke)

今日はドイツ軍の認識票(Erkennungsmarke)についてです。認識票は映画で知って・・・と前置きを書き始めたら、止まらなくなってしまいそうなので、長い話は後回しにして先に認識票について書きたいと思います。

ドイツ軍の認識票は横7cm、たて5cmの楕円形に打ち抜きされた、厚さ1mmのアルミ製もしくは亜鉛合金製(Zinc)の板に兵士が所属する部隊名、個人認識番号(Erkennungsmarken-nummern)、そして血液型(A, AB, B 又は O)が刻印されています。なお部隊名はその兵士が1939年8月の時点で、開戦後は最初に所属した中隊名(主に訓練・補充部隊)が刻印されており、後に補充部隊から野戦部隊に転属しても、紛失・破損しない限り新規に発行されることはありませんでした。
dogtag13.jpg
上記の認識票は大戦初期に多いアルミ製で「1.Fu.E.Kp.20, A 410」の刻印があります。これは「歩兵師団 第20通信補充中隊(Funk-Ersatz-kompanie) 個人認識番号410 血液型A」を意味します。(一番最初の“1”が“Infantrie”を指すのか、中隊の上位規模である大隊の序列を表すのかが不明です)

なお認識番号410ですが、1939年開戦当時の中隊規模が170~200人であることを鑑みると、オーバーしているように思えますが、補充部隊には同部隊名を持つ野戦部隊が必ずあり、そこの兵士に1から順に番号付けしていくと補充部隊にいる兵士で410という数字は理解できます。

ところでSoldbuchWehpassの1ページ目にも個人認識番号が記入されていますが、必ずしも認識票の番号とは一致していません。

dogtag26.jpg  dogtag27.jpg
これは転属先の部隊で新たに認識票を発行する場合、認識番号がしばしば変わる為です。もちろん違うのはこのページの認識番号で、それぞれ別のベージには認識番号の履歴を記入することになっていました。


他に代表的な認識票を2つ紹介します。

dogtag1.jpg

左の認識票もアルミ製で「第118歩兵連隊第12中隊 個人認識番号3 血液型O」の刻印があります。非常に珍しい認識番号が一桁台の極初期のタイプです。
上の認識票と違うのは、刻印が上下逆さまになっている点です。これにより、下側(紐を通す穴が一つの方)で首から下げても文字を正対して見ることができます。
また初期の認識票の特徴でもある大文字の刻印となっています。なお、血液型は後で刻印されたようで字体が他の刻印と違い片方にしか入っていません。

dogtag22.jpg  

右は中期以降の認識票に多い亜鉛合金(Zinc)タイプです。「St.Kp.Nachr.Ers.Abt.6」は「第6通信補充大隊訓練中隊(Stamm--Kompanie-Nachrichten-Ersatz-Abteilung)」を意味します。個人認識番号は3650で血液型はA型です。
亜鉛合金製と認識番号が4桁と大きいことから、戦時中に徴兵された兵士のものと思われます。
また規定に反して認識番号が部隊名の上に来ていますが、これは規定通りに刻印すると、部隊名が収まりきれない為の特別処置と思われます。
認識票は一番上の写真の様に80cmの麻もしくはレーヨンの紐で首から下げることとされ、野戦服のポケットに入れたり財布に入れておくことは禁止されていました。
dogtag35.jpg
 
思い切って折り取りを再現。(・・・・というのはもちろん冗談で、上の写真を画像処理しています)
持ち主の兵士が死亡した場合は認識票を半分に折り、紐でぶら下げている上半分(穴が二つの方)は遺体と共に現地にて仮埋葬、下半分を回収し中隊本部に持ち帰り死亡記録として保管されます。
dogtag30.jpg  


次に認識票のポーチについて。
dogtag6.jpg dogtag7.jpg
オーソドックスな革製ポーチです。専用ポーチというよりも、酒保で売っている小銭入れのようです。
dogtag8.jpg
兵士の中には金属の感触を嫌い、このようなポーチを私費購入して収納した状態で首からぶら下げる者もいました。その場合は紐を通す穴をパンチで開ける必要があります。

   E-784d.jpg
こちらのポーチは紐を通す穴を開けてあります。(ネットで拾った画像です)
dogtag9.jpg
こちらは母親もしくは恋人の手作りでしょうか?毛糸で編んだポーチです。

さて、ここまでが認識票の紹介で、ここから先はチラシの裏なので興味の無い方はどうぞ無視して下さい。(あ、自分のブログなので別に“チラ裏”とは言わないか・・・)

今から27年ほど前にオリヴァー・ストーン監督の映画「PLATOON」が大ヒットしました。映画と共に世間では兵士が付けていた認識票(ドッグタグ)も大流行し、当時高校生だった私も大阪アメリカ村の某軍装品店でレプリカを購入し、500円で名前や誕生日を打刻してもらった記憶があります。

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そしてそれから10年後、今度はスティーブン・スピルバーグ監督の映画「プライベート・ライアン」が大大ヒット。途中に出てくる“ドッグタグ・ポーカー”のシーンで薄い金属が出す独特のチャリン音を聞いたら、またドッグタグが欲しくなり今度はアメ横の某軍装店で実物を購入してしまいました。

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米軍の話ばかりになりましたが、もちろんドイツ軍の認識票についても語りますよ。

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まずはドイツ兵が主人公の映画といえば「戦争のはらわた」

冒頭のシュタイナー率いる偵察分隊がソ連軍を急襲するシーン。ニット帽のせいでロシア兵にしか見えないクリューガーが認識票を口に咥えてロシア兵を絞殺するシーンは衝撃的でした。(最初、認識票を咥えているとは判らず、ヨダレを流しているように見えたのは私だけでしょうか・・・)

そして本隊に戻ったシュタイナーがマイヤー少尉に死んだ部下の認識票を渡すシーン。

dogtag32.jpg
認識票を紐ごと全部渡していますが、なんか違うような・・・まぁ細かいことは気にしない次いきましょう。

マイヤー少尉の誕生パーティーから始まる塹壕内兵舎のシーンでは認識票が兵士のはだけたシャツの合間から見えます。子供の頃に見た時、退屈だったこのシーンも、今改めて見れば髭剃りや服の繕いなどのドイツ兵の日常が描かれているお宝映像だったんですねぇ。

さて、お次は1993年公開のドイツ版「スターリングラード」

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この映画もドイツ兵が主人公ということで認識票の印象深いシーンがいくつかあります。

なんと言ってもすごいのは味方の兵士の認識票を折り取るシーンでしょう。しかもその兵士はまだ生きているのにです!
戦闘中に恐怖で動けなくなった兵士を、死んだものと看做しているわけです。うまい表現ですね。
漫画『北斗の拳』で有名なセリフ「お前はもう死んでいる」をつい思い出してしまいました。
dogtag33.jpg
よく見るとスリットの形状が大戦中のドイツ軍の認識票とは違いますね。(※西ドイツ軍の認識票のようです)

話は冒頭に戻り、アフリカ戻りのフリッツ伍長らがイタリアで海水浴を楽しむシーン。半裸の兵士の胸元には認識票が。
しかしここで、また疑問が・・・遊泳中の兵士が認識票を付けている当時の写真を見たことがありません。
認識票を付けるという行為は戦闘で惨い死に方をしても誰だかが判るようにする為です。海水浴ができるような安全な場所で果たして認識票は必要だったのでしょうか??

しかし下記の海水浴の写真を見たら、さもありなんかなと。
german_troops01.jpg
この写真は1940年6月6日にフランス・ブローニュ付近の海水浴場で撮影されたもののようです。寝そべっているのはイギリス本土上陸作戦「アシカ作戦」に備えて待機中に休暇を取る第1山岳猟兵師団とのこと。

dogtag20.jpg
認識票を胸にぶら下げて歩いているドイツ兵が写っています。
ただ、叉銃した小銃も写っていることから、完全に安全な場所ではなかったのかも知れません。

dogtag21.jpg
しかし一番危険なのはこのトップレス女性だったりして・・・

以上、結局だらだらと話が長くなってしまいましたが、今回は前置きでは無く本題の後ろに持ってきたのは少しは成長した証?
dogtag31.jpg
ドイツ兵の認識票はこれまで気になりつつも、なかなか踏み切れなかったアイテムでブログを始めて98回目でようやくアップすることができました。ブログ通算記録100回まで残り2つ、どんなアイテムを紹介するか悩んでいます。
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注)当時のドイツ軍の装備・生活用品に興味がありますが、特定の団体・思想を支持するものではありません。

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