カメラ(Kamera)

第二次大戦中、ドイツ軍はもっとも兵士個人が戦場にカメラを持ち込んだ軍隊と言われています。宣伝的な映像記録は陸軍で40個、海軍・空軍でそれぞれ10個編成されていたPK(Propagandakompanie=宣伝中隊)が行っていましたが、兵士の日常生活を撮影したものとしてはプライベート写真が量的にもPKのそれを遥かに凌駕しており、軍装研究の貴重な一次資料となっています。
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兵士によって多くのカメラが戦場に持ち込まれたのは、30年代に安価なコンパクトカメラが登場し一般市民の間で普及したこと、ドイツ軍は兵士が個人で購入したカメラの所持を禁止しなかったことが理由と考えられます。
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本日はドイツ兵が戦場へ持って行ったカメラの一つ、Agfa社の折り畳み式カメラ「BILLY RECORD 1:8.8」を紹介します。
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このカメラはオークションで入手しました。ライカやツアイスの35mmカメラはコレクションアイテムで高価ですが、中判の折り畳み式カメラは比較的安価で入手することが可能です。

BILLY RECORD 1:8.8 データ
タイプ : 中判 折り畳み式
生産期間 : 1933 - 1942
レンズ : JGestar f7.7/105 Anastigmat
シャッター : ProntoVS, 100, 50, 25, バルブ
絞り : F8.8, 11, 16
フィルムタイプ : 120 ブローニー 8枚撮り
フィルムサイズ : 6 x 9 cm
外形寸法 : 幅150mm x 高90mm x 奥行35mm
質量 : 550g

ドイツ製カメラと聞くとツアイスやライカの名が真っ先に思い浮かびますが、Agfa社(名前の由来は「アニリン製造株式会社」(Aktien gesellschaft für Anillinfaktoren )の頭文字から)は世界初のネガカラーフィルムプロセスを開発し、1939年にはネガカラーフィルムプロセスによるアグファカラーネガフィルムを販売するなどカラーフィルム開発にも大きな足跡を残しており、知る人ぞ知るメーカーです。同社の代表的な折り畳み式カメラ「BILLY RECORD」シリーズは1930年に発売され1950年代まで製造が続けられました。

agfa catalogue
発売当時のカタログで価格は19.5RM(ライヒスマルク)となっています。現代の貨幣価値に換算するといくら位なのか気になったので調べてみました。こちらの資料によるとP08ルガー拳銃が35RM日本円で60円(1941年当時)となっているので、33円として現代の物価指数をかけると(約2000倍)ざっくり6万円となります。現在ならちょっと高級なコンデジいったところでしょうか?
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フレームはクロム合金・レジン製で折り畳むと幅150mm x 高90mm x 奥行35mm、重さは約550gとなります。野戦服の胸ポケットにすっぽり入る大きさです。

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レンズカバーの取っ手を引っ張ると、蛇腹式のレンズがヌルっと出てきます。レンズは固定焦点で最短焦点距離は2m、シャッタースピードと絞りは切り替え式です。

カメラの構え方
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このように、臍の辺りで縦に構えます。反射ファインダーを上から覗き、画角を決めて右手の親指でシャッターを切ります。そして右手でフィルムを巻き上げまたシャッターを切るという動作の繰り返しです。




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フィルム交換用の裏ブタを開けたところです。赤い丸はフィルム送り用の赤窓でフィルムカウンターになっています。
なお中判カメラのフィルムは、ブローニーフィルム(120フィルム、220フィルム)という名称で販売されており、現在でも入手可能です。

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撮影し終わったフィルムはどこで現像したのでしょうか?これまで多くのプライベート写真を見た限りでは訓練中に撮ったものが圧倒的に多く、非番の時などに駐屯基地の近くの町の写真館(Fotohaus)に持って行って現像したものと思われます。(前線はPKにおまかせ?)

下記はプライベート写真と一緒に付いてきたものですが、写真館がフィルムの受け渡しに使用した袋のようです。

film6.jpg  film7.jpg

現像後のフィルムをこの袋に写真を入れて渡したのでしょうか。裏には顧客の名前、現像のサイズや枚数などを記入する箇所があり、ちょっと興味深いスタンプを発見しました。
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このようなスタンプは写真の裏にしばしば押されていることがあります。

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例えば、こちらは兵営で兵士が作業着を洗濯しているところを撮影した写真ですが、
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裏を見ると同じようなスタンプが押されています。どうやら一列目のFoto-BadorやBlumenscheinは写真館名、3列目は所在地のようです。2列目のA560やB113が何を意味するかは不明です。

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こちらは裏のスタンプが一致しています。間違いなく同じ写真館で現像したものでしょう。このスタンプについてまた何か判り次第、別途取り上げたいと思います。

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中判カメラは35mmフィルム、そしてデジタルカメラが全盛となった後も、引き伸ばしにも耐えうる高画質、大判カメラとは違いロールフィルムを使え ることによる気軽さや携行性・取り回しの良さでプロには根強い支持があり、現在もなお使用されています。また独 特の風合いとデジカメには無い撮影・現像の手間ひまを愛好するアマチュアカメラマンもいるようです。http://whotalking.com/flickr/Record+8.8(←でBILLY RECORDの作例が見れます)
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この記事へのコメント

- 鍛冶屋 - 2012年08月22日 12:08:44

カメラと鉄砲って、なんか通じるものがありますよね。

Re: タイトルなし - エーデルマン - 2012年08月23日 12:20:17

>鍛冶屋さん
そうそう外観以外にもパトローネ(フィルム)をローディングして、ショット(撮影)なんて用語も共通していますよね。ただカメラと鉄砲は似て非なるもの。カメラは鉄砲より強しと言いたいですが、残念ながら紛争は世界のどこかで起こっています。

寝顔 - marute - 2012年08月23日 18:45:43

子供の寝顔は撮りたい気になりますが、同僚の顔を写真に収めようとはおもいません。
何だか死体ごっこみたいです。

この当時は『工業力=カメラの普及』だったのかもしれないですね。
工作精度が低くて水冷エンジンやターボチャージャー作れない日本が無茶な戦争を仕掛けたのがよく分かります。

Re: 寝顔 - エーデルマン - 2012年08月26日 02:43:44

>maruteさん
当時のドイツでいかにカメラが普及していたのかがよく判る写真ですね。子供の寝顔はともかく同僚の寝顔なんて撮りませんもんね。(さらにそれを別のカメラが撮ってるわけですよ)
工業力=カメラの普及、確かにそういう一面はあるかも知れません。こういう国は戦争になると生産能力を総動員できるので強いです。アメリカも同様ですね。ソビエトは軍事工業に特化したので、まったく当てはまりませんが。

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脳内の99%をドイツ軍が占めている、そんなアラフィフ親父です。
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