M31飯盒(Kochgeschirr 31) Part3

先週の日記で報告した追突事故によるむちうち症ですが、コルセットをはめながら2週間過ごした結果、痛みも治まり、なんとか普通の生活に戻ることが出来ました。しかしながら副作用でしょうか?今度は肩こり・頭痛に悩まされ始めました。これまで肩こりとは無縁の人生だったのですが、医者からも最悪の場合持病になるかも・・・と言われており少し気が滅入ってます。でも肩こりがひどくなるのは判っていながらもブログの更新が止められない。。。(こっちの方が重病かも)

さて今週のネタはM31飯盒(最末期型)です。
hangou33.jpg
左から37年製(アルミ製)、43年製(鉄製)、そして44年製(琺瑯製)の飯盒です。

hangou43.jpg
飯盒の詳細に移る前に、飯盒のアクセサリーを簡単に紹介したいと思います。

まずは飯盒用ストラップです。

hangou7.jpg
飯盒を雑嚢やAフレームに取り付ける為の専用ストラップで3つのループが特徴です。革製の他にコットン製もあります。

hangou44.jpg

ドイツ軍が標準使用したストラップを並べてみました。上から装備用ストラップ、コート用ストラップ、飯盒用ストラップです。装備用ストラップとコート用ストラップはほぼ同じ長さで54cm、飯盒用ストラップは68cmです。

hangou41.jpg
続いて飯盒カバー

hangou21.jpg
 
飯盒カバーはコットン製の袋で、上部に開口部を締める為の革製ベルトが付いています。


hangou42.jpg
このように飯盒はスッポリと収まるようになっています。(写真では飯盒が少しハミ出てしまっていますが・・・)

Reibert3.jpg
飯盒の中身で も書きましたが、この飯盒カバーは元々M34背嚢のメインルームに縫い付けられていた飯盒カバーを独立させたものです。背嚢の中に入れて使用することが前提となっている為、汚れ防止というよりは飯盒の塗装を保護することが目的だったと思われます。(初期のアルミニウム製飯盒は塗装が剥げ易かった)

さて、それでは本題に移りたいと思います。


hangou31.jpg
上記は1944年に作られた鉄製の飯盒で、錆び防止対策として琺瑯(エナメル)でコーディングされています。
このような琺瑯の飯盒や水筒は戦争末期によく見られます。

<以下Wikipediaより>
琺 瑯(ほうろう、英: vitreous enamel、米: porcelain enamel)は、鉄、アルミニウムなどの金属材料表面にシリカ(二酸化ケイ素)を主成分とするガラス質の釉薬を高温で焼き付けたもの。(金属材料由来 の)機械的耐久性と(ガラス質由来の)化学的耐久性をあわせ持ち、食器、調理器具、浴槽などの家庭用品や、屋外広告看板、道路標識、鉄道設備用品、ホワイ トボード、化学反応容器などに用いられる。工芸品の琺瑯は七宝あるいは七宝焼きとも呼ばれる。

その歴史は古く、紀元前1425年頃に製作されたと推測される世界最古の琺瑯製品とおぼしき加工品がミコノス島で発見されている。また、ツタンカーメンの黄金のマスクの表面には琺瑯加工が施されている。


琺瑯は以外に古くからある技術だったんですね。(七宝焼きが琺瑯と同じ意味とは知りませんでした)
hangou1.jpg
飯盒や上蓋の内側も琺瑯です。M31水筒(後期型)で錆び防止用の下地処理に使われていた鉛丹(赤鉛)で鉛中毒になる恐れがあると書きましたが、食べ物を入れる飯盒に使われる場合はもっと危険です。それが人体に害が無く耐食性・耐熱性に優れた琺瑯に取って代わるのはしごく当然のことと言えます。
では何故このような新しくは無いが便利な技術が、戦争末期になってやようやく使われ出したのでしょうか?


   hangou36_20120930103704.jpg

上記琺瑯製の飯盒は1910年に採用され第一次大戦で使用されたタイプです。琺瑯製飯盒がどこまで一般的だったかは判りませんが少なくとも琺瑯を軍用に使うのは第二次大戦に始まったことでは無いということです。
私見ですが大量生産・低コスト化が可能となるなんらかの技術革新が第二次大戦中にあったのではないでしょうか。

   hangou3.jpg
上蓋のハンドル部分は琺瑯では無く通常塗装です。「WJ44」の刻印はOberweißbachにあったHasag, Hugo Schneider AGで1944年に製造されたという意味です。

hangou51.jpg
刻印の位置の違いです。1937、1943年製は上蓋の金具、1944年製はハンドル部分にあります。


 hangou15.jpg  
上蓋を外した状態です。初期型アルミ製飯盒にあった500ccの目盛りは省略されています。


hangou27.jpg
初期型(左)のハンドル基部と比べると最末期(右)は鉄製飯盒と同様、鋼板を折り曲げただけの簡素な作りになっています。

最後にドイツ軍、琺瑯と聞いて映画「シンドラーのリスト」で有名なOscar Schindlerを連想する人は多いと思います。実際映画の中でもシンドラーがユダヤ人に対して琺瑯のコーティングの仕方を教えるシーンがありました。


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映像の中でシンドラーの工場は軍需用品(洗面器?)を作っており、Wikipediaにもドイツ軍の厨房用品を製造していたとありますが。飯盒や水筒は作っていたのでしょうか?


hangou46.jpg
ポーランドのクラクフに現在も残るシンドラーの琺瑯工場。


       schindler canteen
上記はコレクターの間で「シンドラーの水筒」とよばれる琺瑯の水筒です。実際シンドラーの工場で作られたものかどうか判りませんが芸術品のような青い美しい琺瑯模様と実際の稀少性も手伝って非常に人気の高いアイテムになっています。
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この記事へのコメント

- 鍛冶屋 - 2012年10月01日 13:26:26

飯盒って、古今も東西もこの形なんですが、オリジナルは何処なんでしょうか?。
それと、飯を炊かない欧米人の調理器具を”飯盒”っと称するのも変な話・・・
訳語ではどうなっているのでしょうか?。

Re: タイトルなし - エーデルマン - 2012年10月01日 17:21:19

> 鍛冶屋さん
Wikipediaで飯盒を調べると起源はヨーロッパとなっていますね。上蓋に取っ手がついた飯盒をスイス式と呼ぶので登山や狩猟時に使用された食器がベースになっているのでは無いでしょうか。(水筒も同じような起源)
次に「飯盒」という言い方ですが、「飯」を「米飯」では無く「食事」と考え、それらを入れる「盒」(蓋の付いた入れ物)と考えれば良いと思います。
ちなみにドイツ語「Kochgeschirr」をそのまま訳せばKoch=調理をするgeschirr=器具になるのですが、ドイツ軍では兵士が自分で材料から食事を作るというのは極めて限られたケースで調理と言ってもせいぜいお湯を沸かしたり冷めたシチューを暖め直したりする程度だったようです。

シンドラー社 - ハント - 2012年10月04日 13:20:47

エーデルマンさん、こんにちは。
事故大変でしたね。
お見舞い申し上げます。どうかご自愛ください。

飯ごうと琺瑯のお話、大変興味深く拝読致しました。
何ヶ月か前に、サムズミリタリ屋さんのホームページで、シンドラー社のマーキングがある、デッドストックの青いホーローカップが販売されているのを思い出し、色々と合点がいきました。
きっと様々な種類のホーロー製品を作っていたのでしょうね。

Re: シンドラー社 - エーデルマン - 2012年10月04日 22:26:29

> ハントさん

こんにちは。

> 事故大変でしたね。
> お見舞い申し上げます。どうかご自愛ください。

ありがとうございます。なかなか良くならないですが、じっくりと治したいと思います。

> 何ヶ月か前に、サムズミリタリ屋さんのホームページで、シンドラー社のマーキングがある、デッドストックの青いホーローカップが販売されているのを思い出し、色々と合点がいきました。
> きっと様々な種類のホーロー製品を作っていたのでしょうね。

まだホームページに載っていますね。シンドラー社のメーカーコードが「mtd」だとは知りませんでした。
水筒のカップはトルコ石に近い色なのですが、このカップはかなり深い青色ですね。
シンドラー社はドイツ軍の御用業者で多くのユダヤ人を工場労働者として保護していたのは映画の通りですが、実際にこれらが彼らの手によって作られたものと思うと水筒も含めコレクションに加えるのは少々重い気持ちになりますね。

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