個人用携帯ストーブ (Esbit Kocher)

最近めっきり寒くなりましたね。私の住む某中米国某市は寒さとは無縁と思われるかも知れませんが、朝晩はダウンジャケットが必要なくらい冷え込みます。このような季節は焼酎か日本酒を飲みながら鍋でもつつきたいのですが、あいにくここでは鍋料理の食材の入手が非常に困難。いつの日か日本に帰ってちゃんこ鍋を腹いっぱい食べるのを夢見る日々です。

さてそれでは本題に入りましょう。以前「飯盒の中身」として紹介した個人用携帯ストーブ「エスビット(Esbit)」ですが、本日は単品としてスポットを当てたいと思います。

  esbit001.jpg        
エスビットはErich Schummによって1933年に設立 されたドイツの会社の名前ですが、固形燃料(Trocken-Brennstoff)やそれを使う携帯式のストーブの名称となっています。(このブログでもエスビットとは携帯式ストーブのことを指します)
エスビットの用途は上のイラストや下の写真を見れば一目瞭然ですね。上記のイラストのようにエスビットを使って糧食を温めなおしたり、コーヒー用のお湯を沸かしました。




なお糧食系の資料本「Rations of the German Wehrmacht in World War II」 によれば、エスビットは各兵士に一個支給というような装備ではなかったとのこと。野戦糧食の記事の中でも書いた通り、ドイツ軍は前線の兵士に調理済みの食事を可能な限り配給した為、個人が調理器具を所持する必要がなかったことが主な理由です。そうは言ってもやはり寒い地域で戦う兵士にとって冷めた糧食を温め直したり、お湯を沸かすのに必需品。ガソリンストーブ(Juwel 33ARARA 37)と共に支給されたようです。
ただし配給の割合はバラバラで、フィンランド北部に駐留していた山岳部隊には猟兵2人に1つガソリンストーブが支給されたとする一方でグロースド イッチュランドの中隊にはガソリンストーブ20個とエスビットが数個しか支給されず、さらに酷い例ではモスクワに近い場所にいたある歩兵部隊の将校の証言によるとガソリンス トーブの所有はゼロ、エスビットの燃料もほとんどなかったとか。
esbit33.jpg
資料本に掲載されている当時の広告です。なるほど調理以外に熱湯消毒用の湯を沸す場合にも使えますね。


esbit.jpg
エスビットの寸法は横9.7cm、縦7.4cm、厚さ2cm、薄いスチール板でできています。(なお資料本には亜鉛製とありますが、磁石が付きます)
「HIER AUF KLAPPEN!」(ここを開く) 「Mod. 9 Ges.  gesch」(モデルNo.9、Ges. gesch=Gesetzlich Geschützt,登録商標くらいの意) なお、「Esbit」の由来はErich Schumm Brennstoff  In Tablettenformの頭文字からとのこと。

esbit14.jpg
サイドパネルを開き、できた空間に固形燃料を置きます。開いたパネルは風防、調理器具を乗せるゴトクになります。

TABLETTEN AUFLAGE(タブレットをココに置く)
Hersteller (メーカー)
ERICH SCHUM (ERICH SCHUMM社)
Esbit Brennstoff-Fabrik(エスビット燃料工場)
Stuttgart-W(Wüttemberg州 Stuttgart工場製)

   esbit13.jpg
ヒンジ部分にある3つのくぼみを使えば、パネルをさまざまな角度に固定するすることが出来ます。

esbit21.jpg
このようにパネルの角度を狭めることで水筒のカップのような底の面積が小さい容器も置くことが出来ます。

 stove3.png
上記は本体に固形燃料を収納した所、下記は固形燃料(Trocken-Brennstoff)のパッケージです。

esbit29.jpg
esbit36.jpg  
一箱に20個のタブレットが入っており、箱ごとエスビットの中に収納できます。パッケージのデザインには上記以外にいくつかのバリエーションがあります。見えずらいですが下のパッケージ裏には、同社製品No.9、No.18、No.3の商品イラストが描かれています。(軍が使用したのはNo.9)

 esbit17.jpg
こちらは下のパッケージの側面のイラストですが、兵士が野外でエスビットを使うシーンが描かれています。

esbit31.jpg
エスビット本体とその紙箱です。兵士がエスビットで調理している様子が描かれています。兵士のイラストと「Der Kocher für den Soldaten」(兵士の為のストーブ)という文章から軍用モデルと言われていますが・・・うーん軍に納品するのにわざわざ専用の箱を作るでしょうか?(古今東西共通して官公庁への納入価格は徹底的に叩かれてコスト的には厳しいはずなのですが・・・)

 esbit37.jpg
上記は紙箱の4側面のイラストですが、ここに書かれているのはすべて民間人たちです。勝手な想像ですが上記のパッケージは一般人向けにも売られていたもので、兵士のイラストを載せることで戦意高揚を狙ったのでは無いでしょうか。

 esbit38.jpg
箱の裏側には使用方法とイラストが掲載されています。
Esbit ストーブモデル9のサイドパネルを開いてことで暖めることができる。固形燃料のタブレットを1つ又は2つ置いてマッチで火をつける。(図2) コーヒーカップのような小さい容器を使用する際はサイドパネルを曲げる(図1)というような意味かと。

 esbit7.jpg
こちらは本体付属のマニュアルです。このマニュアルは超入手困難の為、ネットで拾った画像を拝借しました。



esbit32.jpg
ドイツ軍で使用されたストーブ一式です。JUWEL 33、ARARA 37との比較するとそのコンパクトさがよく判ります。またもや資料本の受け売りですが、一般の兵士は火力の強いガソリンストーブを好み、装備を極力少なくする必要のある降下猟兵や山岳猟兵はエスビットを迷わず選択したというのも納得です。(あーますます鍋が食べたくなった・・・)
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この記事へのコメント

- 鍛冶屋 - 2012年12月03日 01:46:04

>ただし配給の割合はバラバラで、・・・
戦争の勝敗の分かれ目は、やはり兵站ですな。

Re: タイトルなし - エーデルマン - 2012年12月03日 22:25:21

戦争(に限りませんが)には兵站が重要ですね。
まぁ、焚き火という手もありますしこの手の装備の支給は
弾薬や食料に比べて優先度は低かったんでしょうけど。

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