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双眼鏡 (Doppelfernrohr) Part3

それにしても改めて過去の記事を見返すと文章の拙さ・誤字脱字に加え、単なる憶測による情報が多いことに気づきます。また乏しい語彙や表現力を補完するべき写真もまだまだの領域だったり・・・(まぁ、今も“まだ”ですが)
個人的な趣味のブログといえど軍装コレクションの紹介という性質上、できるだけ正しい情報、ちゃんとした写真を載せたいという気持ちはあり、“電子日記”(この言い方は変ですね)なのを良いことに問題箇所を見つけてはこっそり修正・追加してたりします。
本日のネタの双眼鏡(Doppelfernrohr) も適当な文章と大雑把な写真で前々からやり直したいと思っていたアイテムNo.1。ちょうど新しいネタも無いし、この機会に全面改訂したいと思います。(あ、古い日記を消すのはちょっともったいないのでそのまま残します)


   bino3.jpg  

ご存知の通りドイツは伝統的に光学技術に優れており、カール・ツァイスを始めとする光学機器メーカーが第一次大戦から統一仕様の双眼鏡を軍に納品していました。

     czjlogo.gif

  bino38-1.jpg

1846年にイェーナで創業し1889年「カール・ツァイス財団」傘下に入ったドイツの光学機器製造会社カール・ツァイス社のロゴ(上)と1902年に開発されたGoerz Berlin社のPernox 6 x30双眼鏡(下)。

 bino29.jpg bino28.jpg
第一大戦後はカメラと同様、外貨獲得の為、双眼鏡は世界各国に輸出されました。左の広告には販売拠点の都市の名が記載されています。右は当時の広告で、6x30タイプの双眼鏡が121RM(ライヒスマルク)となっています。なおカメラの記事の中で当時のルガーP08拳銃の値段が35RM、カメラが19.5RMと紹介しましたがそれらに比べるとかなりお高いですね。ハイパーインフレ時の値段でしょうか?

bino42.jpg
なお文献『Military Binoculars and Telescopes for Land, Air and Sea Service』(Hans Seeger著)には、ライヒスヴェアー時代、兵士は自己購入可能だったとあります。ちなみに値段は115RMだったとか。(広告の121RMに比べると若干安いですね。兵士向け特別価格でしょうか?)

bino41.jpg  
1939年にドイツ軍はポーランドに侵攻、英・仏がドイツに宣戦布告し第二次大戦が勃発します。双眼鏡は再び官給品となり下士官や偵察や歩哨、狙撃など特別な任務に就く兵士に支給されました。
 
bino11-2.jpg
黒いペイントで“いかにも”な6 x 30 Dienstglasはドイツ軍で使われた双眼鏡の中で最も一般的かつ大量に支給されたタイプ。コンパクトサイズながら明るく十分な視界を得ることができます。
      bino48.jpg
本体はアルミダイキャスト製で軽量化が図られています。(重量約400g) なお革製のタブを用いて野戦服のボタンに固定することができます。

bino43.jpg  
右側対物レンズの上部1段目には“Dienstglas”という軍用双眼鏡を意味する刻印、2段目には“6x30”(6は倍率、30は対物レンズの口径でこの数字が大きいほど明るくなる)3段目はシリアルナンバー、4段目の“H/6400”はレンジファインダー(距離計目盛り)があることを表しています。

bino5.jpg
今回はレンジファインダーのグリッドがバッチリ撮れました。
双眼鏡の右側レンズにあるグリッドはM35書類ケースの記事の中の「Deckungswinkelmesser」でも説明した通り、通常の360度を精度を上げる為にさらに6400等分したもので単位はミル(ドイツではシュトリヒ)です。

このグリッドを使用すれば距離や標的の大きさを測ることができます。REIBERTにはイラストを用いた次のような説明があります。
bino46.jpg
(REIBERT 43年版の意訳)
双眼鏡の水平グリッドの線と線の間隔は常に距離に対して1000分の1になっている。
例えば標的までの距離(目算もしくは地図からの割り出し)が2000mで、標的が中心から25番目の目盛りの位置にある場合、距離の25/1000すなわち25x 2000÷1000=50mと計算できる。

図2の場合、双眼鏡を持った機関銃手はこう読むべきである。「MGネストは教会の塔から12ミル左にある」と。例えば機銃手から標的までの距離が1000mの場合、MGネストは教会から12m左にあり、2000m離れている場合は24mである。


この計算式を応用し、標的の大きさがわかっている場合(人など)にはこちらから標的までの距離が測ることも可能です。

bino10.jpg
左側にはメーカーコードが刻印されています。写真の“ddx”(Voigtlander & Sohne A-G製)以外に“blc”(Carl Zeiss)や“cag” (D. Swarovsk)などが多く見られます。

bino24.jpg
このレンズカバーは皮製です。他にラバー、ベークライト製のカバーもあります。

bino51-1.jpg
こちらは上記の双眼鏡と同じくddxの刻印のある双眼鏡ですが、後期タイプで43年頃から装備品の標準色となったダークイエローで塗装されています。本体重量はずっしりと重く、680gとなっています。どうやら筐体はアルミではなく亜鉛製のようです。

     bino52-2.jpg
“ddx”(Voigtlander & Sohne A-G)の刻印の横にある“△”の記号はグリース番号です。この記号で製造年がおおよそ判断できます。

K.F.1940年5月~1942年7月
1942年8月に採用された寒冷地用グリース
  1942年11月~43年後半
1943年後半以降

ところでダークイエローの双眼鏡は“アフリカ軍団(DAK)仕様”として売られていることがありますが、グリース番号を見れば嘘であることが一発で分かります。

f53yf7.jpg
ドイツ軍エーススナイパーのマテウス・ヘッツェナウアーが首から提げているのは後期タイプの双眼鏡です。


   bino53.jpg  
こちらはcag(D. Swarovsk)コードの双眼鏡です。
bino50-1.jpg
青い△マークは43年後半以降の製造ですね。青い色はグリースが極寒地仕様の意味とも視認性を高める為とも云われていますが事実は定かではありません。
なお、上記2つの後期タイプにはH/6400のマークはありませんが、どちらにもレンジファインダーがあります。

bino14.jpg
bino13.jpg
工数の削減でしょうか?接眼レンズの視度調節の目盛りが上記は0から10まであるのに対し、後期型は+-のみです。

最後に収納ケースを紹介します。

bino16.jpg
6x30双眼鏡の収納ケースは初期は革製でしたが、1942年頃からベークライト製となります。


bino54-2.jpg  
収納ケースの表裏です。開閉ラッチはガスマスク収納缶と同じタイプです。背面のストラップでウエストベルトに装着します。

bino20-1.jpg  
ケースの底面にはストラップを着脱するポッチが付いております。アムトWaA14とラッチのhft 42の刻印からBecker & Co. Berlin社42年製であることが分かります。

bino55-1.jpg  
ケースの上蓋には人工皮革が内張りしてあり、蓋を閉めると対物レンズを適度に押さえている為、双眼鏡がケースの中でガタガタ動くことはありません。

bino15.jpg
収納ケースのキャリングストラップです。前述の『Military Binoculars and Telescopes for Land, Air and Sea Service』によると1942年9月の通達により半分はストラップ無しの状態で支給されたようです。ウエストベルトに装着することが規定されていたのか、あるいは革素材の節約の為か判りませんが、実際ストラップ付きのケースはあまり見ないですね。

bino17.jpg
この収納ケースには非常に珍しいストラップが取り付けられております。一般的に取替え可能なベルトタイプのストラップは一年に一回くらい見かけますが、このようにリベットで固定されているものは初めて見ました。

bino23.jpg

真ん中の収納ケースの上部には丸い窪みが見えますが、コンパスを嵌めるためのかも知れません。

これで双眼鏡は終了です。前回の記事を書いた頃と比べてだいぶ判ったつもりでいましたが、こうやって書いてみるとまだまだ判らないことがたくさんありますね。新規ネタばかりではなく、こうやって古い記述を見直すのも定期的にしていきたいと思います。
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この記事へのコメント

- masayuki - 2015年07月31日 22:05:40

自分の手元にある双眼鏡はCAGで、グリスナンバーが+と△が並んで刻印されてます。
当時、実在していたものなのでしょうか。

Re: タイトルなし - エーデルマン - 2015年08月02日 14:25:03

masayukiさん
コメントありがとうございます。
> 自分の手元にある双眼鏡はCAGで、グリスナンバーが+と△が並んで刻印されてます。
> 当時、実在していたものなのでしょうか。
CAGはD. Swarovskのコードですね。グリースナンバーの+と△が並んで刻印されている例は多数存在しています。
グリスナンバーは照準眼鏡と共通なのですが、TOMOさんのサイトに詳しいデータがあるので参照してみて下さい。
http://homepage3.nifty.com/zielfernrohr/ZF41database.pdf

- masayuki - 2015年08月02日 23:21:02

双眼鏡の資料が少なくて調べようがなかったのですが、大変興味深い資料です。紹介頂き感謝いたします。
記号が並んでいる理由が解らないのですが、どれか一つだけでよいと考えてしまいますが、なぜでしょうか。

Re: タイトルなし - エーデルマン - 2015年08月03日 01:27:06

masayukiさん

TOMOさんがサイトの中で説明されていますが、光学機器は製造後も修理や調整で新たなグリースが施されると、そのグリースの記号が追加されたようです。よって一つの機器に2つ以上のグリース記号が見られることもよくあるようです。
http://homepage3.nifty.com/zielfernrohr/zielfernrohr_040.htm

- masayuki - 2015年08月03日 22:24:03

まだ解明できていないこともあるようですが、刻印で当時の事が解かりますね。
手元の双眼鏡を資料にもつずき自分なりに分析すると、本体は黒で記号は、+なので42年~43年に製造されて、43年~44年以降に修理、改修されたことになりますか。
疑問に思った事が解かり始めると、楽しく嬉しくなりますね。
お忙しいことと存じますが、わざわざ質問にお答えいただきありがとうございました。
ブログの更新も楽しみにしています。

- bsk - 2015年11月15日 18:17:19

軍用双眼鏡にはレティクルは、必ず入っているものでしょうか。
入ってないのも存在するのでしょうか。

Re: タイトルなし - エーデルマン - 2015年11月15日 22:35:11

>bskさん
自分の持っている双眼鏡を見るとレティクルが入っているものと、入っていないもの両方存在しています。
理由は不明ですが、後期の双眼鏡は入っていない場合が多いようです。

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