M35書類ケース (Meldekartentasche 35) Part4

書類ケースの中身のアップデートとして、今回は筆記用具にスポットライトを当てようと思います。(代表的なモノだけですが)

mapcase5-1.jpg

当時の一般的な筆記具といえば鉛筆ですね。ドイツいや世界的な鉛筆メーカーと言えば、ファーバー・カステル(FABER-CASTELL)をおいて他には無いでしょう。
ファーバー・カステル社(当時の社名はA.W.ファーバー社)は1761年に家具職人のカスパー・ファーバーによって、ニュルンベルグのシュタインで創設されました。六角形の鉛筆や社名を軸にスタンプするといった現在の鉛筆にも通ずるデザインは同社の発明によるものです。

HIST-NEU-bleistiftma.jpg  HIST-NEUlotha2.jpg
ちなみにファーバー・カステル社の〝カステル〟は四代目ローター・フォン・カステルの孫娘オッテリーと結婚したカステル伯爵の名前が由来です。ファーバー家に婿入りしたカステル伯爵は不慣れな鉛筆製造業に最初はとまどいながらも、やがて優れた商才とリーダーシップを発揮し、1905年に自らの名前を冠した緑色の〝カステル9000番〟鉛筆を発表、大ヒット商品となります。この鉛筆によりA.W.ファーバー社の名はますます不動のものとなり、鉛筆の緑色は同社のシンボルカラーに、商品名のカステルは社名の一部となります。(1942年に社名をA.W.ファーバーからファーバー・カステルに変更)

faber_c1.jpg

ところでヨハン・ファーバー(JOHANN FABER)やエバーハード・ファーバー(EBERHARD FABER)というブランドも存在しています。こちらはコピー商品では無く、A.W.ファーバー社が19世紀中ごろに海外(北米・南米)市場に進出した 際、現地に設立した子会社が独立したブランドです。品質は本家に勝るとも劣らずだったので、のちにA.W.ファーバー社とは市場のシェアをめぐって競合するよ うになります。(ヨハン、エバーハードはローターの実弟の名前です。後年、2社はファーバーカステル社に吸収合併)

pencil1.jpg

さてファーバー・カステル社の説明はこれくらいにして鉛筆の紹介です。この4本の鉛筆は書類ケースを購入した際、一番上の写真のようにペンホルダーにささっていました。一番上はエバーハード・ファーバー社の1717番、その下がA.W.ファーバー社のカステル9101番の鉛筆です。(その下の2つは不明)

pencil10.jpg
   pencil11.jpg  
A.W. ファーバー社の鉛筆ケースです。カステル伯爵が考案した〝馬上槍試合をする騎士〟の絵と城のトレードマークが描かれています。余談ですが、左側の倒されて いる騎士が持っている黄色い槍(鉛筆)は当時最大のライバルであった「コヒノール(KOH-I-NOOR)」の鉛筆を意味しているとか。緑色の槍(鉛筆)はもちろんカステル9000番ですね。

pencil9.jpg  
このケース、A.W. FABER "CASTELL"とロゴがあるので1942年に社名が変更される前の製造だと思います。ケースの中にはカステル9000番の鉛筆が12本入って売られていたようです。(なお、A.W.は創設者カスパー・ファーバーの息子の名前「Anton Wilhelm」から来ているそうです)


castellep_20130524080910.jpg

こちらは当時のカステル9000番です(ネットにあった写真を拝借しました)


さて、次は鉛筆削りです。
           

sharpner10.jpg
革製ケースに入った真鍮製の鉛筆削りでファーバー・カステル社のライバル、コヒノール社製です。鉛筆を削る穴が二つあり、それぞれに長短の刃が付いています。

sharpner16.jpg
当時の広告には刃の使い分けによる芯の削り方のイラストが載っています。1と3はすぐに折れそうですね・・・

sharpner18.jpg

sharpner19.jpg  
刻印のクローズアップです。「TUTIOR JUWEL PATENT MADE IN GERMANY」の刻印があります。この「TUITOR JUWEL PATENT」はA.W.ファーバーや他社の鉛筆削りにもあるので2つ穴に対する特許かも知れません。

sharpner15.jpg

こちらは大戦当時使われていたオーソドックスな形の鉛筆削りです。輸出用でしょうか?上のものにはGERMANYの刻印があります。

次に消しゴムも必需品ですね。


eraser3.jpg  

どれも小型で使いやすそうです。よく見かけるのは〝Rona〟と〝KORREKTOR 500〟でしょうか。

最後の筆記用具は色鉛筆です。ドイツ軍では地図にマーキングをする際、色鉛筆を使いました。

map2_20130525095131.jpg
上記はスターリングラード近郊の1942年12月24日の前線地図です。青もしくは黒は友軍の前線、赤は敵の前線を示すようです。

map3_20130525102845.jpg
こちらは手書きの地図です。赤い矢印はソ連軍の攻撃で真ん中にはPanzer T34の文字が!青い矢印は友軍を示すようですが、逆向き・・・撤退したのでしょうか?

colorpen12-1.jpg   
上記のような地図にマーキングするのは色鉛筆の出番となります。上記はメカニカルなペン、いわば当時のシャープ・ペンシルであるエバーハード・ファーバー製「TAKTIK No.542」です。革製のケースに赤・青・黒・黒鉛のペンと替芯ケース、消しゴムが収納できるようになっています。

taktiketui06wf4.jpg taktiketui07qa8.jpg
当時の広告。『Taktik-Etui 542』というのが正式名称です。
colorpen17.jpg
colorpen10.jpg  
頭部の丸い部分を回すと芯が出てくる仕組みになっています。なお黄色いペンは黄色い芯ではなく黒鉛です。

 meldeblock01.jpg
こちらはケースの裏表です。裏側にはベルトループと野戦服のボタンに留める為のホールがあります。


meldeblock02.jpg
エバーハード・ファーバー社のロゴとNo.542の刻印があります。ちなみに540番と541番は通常の色鉛筆のセットとなります。

map1_20130525095104.jpg
「軍は自前の地図ばかり使っていたわけではなく、定期的に更新される市販の道路地図も頼りにした」ということでミシェランガイドにもマーキングされています。

筆記用具とくればノートですね。書類ケースに入っていたのは野戦報告ノート(Meldeblock)です。
meldeblock6.jpg  
野戦報告ノートは書類ケースに必ず入っており、これで行動を本部へ報告することになっていました。ちなみにインクは水に濡れると流れる為、必ず鉛筆を使うこととされていました。

meldeblock1.jpg
一枚目は地図の記号一覧です。裏にも同様になっています。



こちらのフォーマットに部隊の出発、到着地点の座標とその名称、日時や詳細を記入します。
(マウスを画像に当てると作成例が見えます)

meldeblock8.jpg

裏はグリッドが付いており記号を参考に手書きの地図を書き込めるようになっています。

以上、ざっと当時の筆記用具を紹介しました。各国の軍隊ではタイプライターが既に多用されていましたが、前線、特に移動を頻繁に行う歩兵部隊においては、重い・メンテナンスが必要なタイプライターなど無用、やはり持ち運びの容易さで一本の鉛筆に勝るものはありませんね。
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この記事へのコメント

- ノイスコプフ - 2013年06月18日 07:27:41

興味深く拝見しています。特にMeldeblockは実物初見ですので、一層気が惹かれます。やはりA5サイズでしょうか。しかも、軍の用箋ではなくて民間の製品のようですし。いやー、勉強になります。

Re: タイトルなし - エーデルマン - 2013年06月18日 22:05:53

> ノイスコプフさん
コメントありがとうございます。よこ21cm x たて21cmなのでサイズはちょうどA5サイズですね。このMeldeblockですが、他のメーカーのものも見ましたが同じ仕様になっており、統一規格であったようです。まぁ、そうでないと報告する側もされる側も困るわけですが・・・

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