双眼鏡 (Doppelfernrohr) Part4

もうすぐ春ですね。今は四季の無い国に住んでいるので、春という季節の変わり目が懐かしいエーデルマンです。
さて、本日はドイツ軍の双眼鏡シリーズの第4弾として、戦争末期に作られた6倍率のベークライト製、軍用双眼鏡(Dienstglas 6x30)を紹介したいと思います。
※双眼鏡について過去の記事はこちら

以前ブログで書いたとおり、双眼鏡の材質はアルミダイキャスト(又は亜鉛)が主なのですが、あらゆる金属物資が枯渇してくる戦争末期には、筐体にプラスチック(ベークライト)を使用した双眼鏡も作られます。

Bakebino1.jpg

ここでちょっとベークライト(フェノール樹脂)について調べてみました。(いつも通りWikipediaからの抜粋)

フェノール樹脂(フェノールじゅし、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ベークライト、石炭酸樹脂)は、フェノールと ホルムアルデヒドを原料とした熱硬化性樹脂の一つで、世界で初めて植物以外の原料より、人工的に合成されたプラスチックである。硬化させた樹脂は、3次元的な網目構造を持つ。電気的、機械的特性が良好で、合成樹脂の中でも特に耐熱性、難燃性に優れるという特徴を持つ。耐油、耐薬品性も高いが、アルカリに弱い。また、これらの性能の割に比較的安価である。

(以上Wikipediaより)

耐熱・耐油性に優れ、安価という特長は軍用にはうってつけですね。実際にドイツ軍が使用した装備にベークライトは大変多く使われています。

Bakebino2-6.jpg
重さを計ってみると590gありました。アルミ製と亜鉛製のちょうど中間の重さです。
しかし末期の双眼鏡とは言え、さすがは工業国ドイツ。造りはしっかりとしており、ベークライト特有のべっ甲に似た色合いで高級感さえ醸し出していますね。
Bakebino5-1.jpg
しかしながら、金属に比べると強度は落ちる為、強くぶつけたりすると簡単に欠けてしまいます。この双眼鏡も戦場で酷使されたようで所々に欠けた跡があります。


bino5-1.jpg  
6倍率の軍用双眼鏡を意味するDienstglasと6x30の刻印。なお、この双眼鏡にはレンジファインダーはありません。

bino6_201503011340339e4.jpg
cxnはEmil Busch A.-G. 社のコードです。ドイツの光学機器メーカーで、双眼鏡のほかにもZF41 狙撃用スコープ (Zielfernrohr 41)などを製造しています。

emil_busch_a_g_optische_industrie_122.jpg

同社の製品ラインナップには、カメラや顕微鏡もあります。ちなみにドイツの光学メーカーのコードの一覧はこちら

bino7-1.jpg  
グリース番号は△です。下記の通り、△は1943年以降の製造を意味します。青い色になっているのは寒冷地仕様のグリース使用もしくは視認性向上のどちらか、もしくは両方と言われています。

K.F.1940年5月~1942年7月
1942年8月に採用された寒冷地用グリース
  1942年11月~43年後半
1943年後半以降
bino8.jpg
シリアル番号は408177です。これはメーカー別の製造番号では無く、ドイツ軍に納品時に付与される管理番号で連番になっています。なお、私が今まで見たベークライト製双眼鏡はすべて406000から上になっています。


後期タイプと末期タイプの比較。こうして比べてみると、末期タイプは軍用に見えませんね。
Bakebino9-4.jpg

現存するベークライト製双眼鏡の刻印はcxnのみなので、Emil Busch A-G 一社のみが製造を行い、それ以外のメーカーは終戦まで金属で双眼鏡を作り続けていたと思われます。
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この記事へのコメント

- エルマー - 2015年03月01日 22:14:35

二回目のコメントになるエルマーです。

自分もドイツ軍のアイテムをコレクションしていて、エーデルマンさんのブログをよく参考にさしてもらっています。特に中身シリーズが一番好きです。
双眼鏡に関しては、ベークライトで出来ているのは初めて見ます。ベークライトといえば自分なりに、ラードコンテナが一番最初に思い浮かびます。(笑)
あと気になることが一つあるのですが、冬の戦場でドイツ兵達は野戦服の上にコートを着るのでしょうか?ゴワゴワで戦いズラいような気がします。どうなんでしょうか?宜しくお願いします。

Re: タイトルなし - エーデルマン - 2015年03月02日 03:37:12

エルマーさん

再度の訪問とコメントありがとうございます。
中身シリーズは自分も気に入ってますのでそう言っていただけると嬉しいです。
ベークライト製品はラードコンテナーが一番身近ですね。1.5リットル水筒のキャップもありました。
あとMP40のハンドガードとかP38のグリップなどの兵器にも使われていますよね。
とにかく当時の製品には多く使用されていて枚挙にいとまがありません。
野戦服着てたと思いますよ。何せ寒いですから、あるものは何でも着ていたでしょう。
『ジェネレーション・ウォー』の中で〝戦争とは待つもの〟というセリフがあったように、
戦っている時間よりも圧倒的に塹壕内でじっとしている時間の方が長かったはずですから、
動きづらいのなんて気にしてられなかったんじゃないかと思います。

- エルマー - 2015年03月03日 00:35:49

エルマーです。

質問の返答をありがとうございます‼️

確かに極寒の戦場に自分がいたら、動きづらいなんて言ってられないですね。「ジュネレーション・ウォー」の兵士達も着込んでいて、しかも、兵士のフリードヘルムは死んだソ連兵が履いていたワレンキを頂こうとしたくらいですから、実際の兵士達はどんなに寒かったことか想像がつきません。
話が少々変わるのですが、アメリカ兵の体験でM1カービンでドイツ兵達に攻撃した時、ドイツ兵達が着込みすぎて弾が貫通しなかったという噂を聴いたことがあって最初は嘘と思っていたのですが、本当かもしれないですね。

すごく勉強になりました‼︎ありがとうございます。

Re: タイトルなし - エーデルマン - 2015年03月03日 01:57:38

エルマーさん

当時はヒートテックなんて無いのでとにかく重ね着するしかなかったと思います。
しかし靴は重ねて履くわけにはいかず、半長靴のままでいると靴底に打った鋲から
冷えが直に伝わってきて、酷いと凍傷になったりしたそうです。
ドイツ兵が弾が貫通しないという噂、たくさん着込むにしても、せいぜい野戦服にコートくらい。。。
当時、野戦服にフェルトを採用したのも、防寒以外にある程度の防弾効果を期待していたのかな?

- 鍛冶屋 - 2015年03月03日 16:11:24

まいどです エーデルマンさん。

昔の民生品でも、玩具のようなベークライト製の双眼鏡や
カメラは見ますが、軍用品で使われていたとは。
たしか、ベークライトって何かに染み込ませて固める樹脂
(FRPのような)だったと思うのですが、骨組(?)は何で
作ってあるんでしょうね。

話は変わって、"The Man in the High Castle "って
ドラマ知ってます?。是非一見アレ!。

Re: タイトルなし - エーデルマン - 2015年03月04日 06:38:44

まいどです鍛冶屋さん。

ベークライトの作り方は下記サイトに詳しく載っています。
http://www.asahi-yukizai.co.jp/product/thermosetting-resin-material/about-plastic.html
この双眼鏡、レンズ周り以外は全部ベークライト製みたいです。

"The Man in the High Castle "ってなんだろう?と思って調べたら、
「高い城の男」の原題だったんですね。
昔フィリップ・K・ディックにハマっていたことがあって、もちろん読みました。
しかも製作は「ブレードランナー」のリドリー・スコット監督じゃないですか!
ぜひ一度見てみます。お奨めありがとうございました。

- ky - 2015年03月07日 16:30:37

ベークライトは熱硬化性樹脂とはいえ、金属に比べて温度による体積変化が大きいので光学製品の筐体には適してません。(酷寒酷暑以外では問題無かったとは思いますが)
この双眼鏡は下士官や新任将校への官給用に作ったのでしょうか?
ドイツだからレンズの品質は変えてなかったと思いますが。

Re: タイトルなし - エーデルマン - 2015年03月08日 12:44:52

ky・さん

コメントありがとうございます!
> ベークライトは熱硬化性樹脂とはいえ、金属に比べて温度による体積変化が大きいので光学製品の筐体には適してません。(酷寒酷暑以外では問題無かったとは思いますが)
そうなんですね。。戦争末期の物質が枯渇した状態なので、仕方なく使ったんでしょうか。技術的に難しいので一社しか作らなかったのも理解できます。
> この双眼鏡は下士官や新任将校への官給用に作ったのでしょうか?
> ドイツだからレンズの品質は変えてなかったと思いますが。
基本的に双眼鏡は下士官(分隊長)以上の装備品ですが、職務に応じて兵士にも貸与していたようです。

- ky - 2015年03月09日 17:09:09

当時の日本軍も本来金属製のものを代用材料で置き換えていたようです。
ベークライト製の水筒や陶器製の手榴弾の写真を見たことがあります。
そこまで物資が不足してるのに、まだ戦争を続けようというメンタリティ
が謎ですが。(ドイツのように本土が攻められなかったからか?)

Re: タイトルなし - エーデルマン - 2015年03月10日 08:33:25

kyさん

日本軍も末期には金属をいろんな材料で代用していたのは有名な話ですね。
戦争は始めるより終わらせる方が難しいという言葉を聞いた事があります。
当時は負けたら酷い目に合わされるという心理もあったと思います。
(実際にそういう事もありましたが)
ただ日本はドイツのように本土決戦にならなかったことがせめてもの救いですね。

- 無名戦士 - 2016年11月01日 11:29:57

DienstglasのかわりにD.F.の刻印が入れられている物をたまにみかけるのですが、同じ意味でしょうか。

Re: タイトルなし - エーデルマン - 2016年11月05日 08:06:27

> 無名戦士さん

D.F.って何かの略でしょうか?すみません、ちょっと分らないですね。Doppelfernrohrかな?

- 無名戦士 - 2016年11月05日 13:18:52

ヤフオクの出品者いわくDoppelfernrohrのことで、最初期の軍用双眼鏡にD.F.の刻印が使われていたそうです。

Re: タイトルなし - エーデルマン - 2016年11月06日 10:51:46

> 無名戦士さん
そうなんですね。確認いただきありがとうございます。ちなみに私はD.F.という文字を見ると、つい「メキシコシティ」を想定してしまいます。

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