M44野戦服(Feldbluse 44)

1944年、ナチスドイツに対する敵の攻撃は日増しに激しくなり、6月には西からの連合軍のオーバーロード作戦、東からはロシアによるバラクチオン作戦とまさに四面楚歌の状況となります。
両戦いで損失した兵員を補充するべく、同年7月には国民擲弾兵師団が、またその3ヶ月後には国民突撃隊が結成され国土防衛に駆り出されることになります。

本日はそんな切羽詰った状況の中、1944年に導入されたM44野戦服(Feldbluse 44)の実物と、海外のコレクターRamsey氏の写真コレクションの一部を氏の許可を得て紹介したいと思います。
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M44野戦服は〝Neue Uniform〟(新しい制服)として、1944年10月21日に9月25日付けAHM(一般陸軍通達) Nr.603 において導入されます。
特徴としては丈がぐっと短くなり、それに伴い腰のポケットは省かれました。
当初は全軍共通の野戦服として規格され、当時の写真を見ると陸軍以外に武装親衛隊、空軍そして警察での使用が認められます。
ただ実際にはこれまでの野戦服も在庫がある限り使い続けられた為、最終的には全部隊に行き渡らないまま戦争が終わってしまいました。

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後ろから見ると、とてもドイツ軍の野戦服には見えませんね。
通常、野戦服は耐久性の観点から、背中部分が一枚布で作られていますが、このM44野戦服は真ん中で張り合わせになっています。ただし腰部分は一枚布になっており、横方向の引っ張りには若干強くなっています。
両サイドにザイテンハーケン用の穴が見えます。

M44-15.jpg
インナーも背中の部分は省略されていますが、腰ポケットが無くなった分、内ポケットが両側に付けられました。
かろうじてザイテンハーケン用のベルトループも残されています。(末期タイプはベルトループが省略されます)

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M43野戦服までは詰襟がデフォルト仕様でしたが、M44野戦服は逆に開襟がデフォルトになったようで、襟の幅が広くとられ、襟どうしを留めるホックが標準でありません。もちろん、従来通り第一ボタンまで留めることは可能ですがどこか変ですね。

M44-11.jpg
オーバーコートのように襟の裏側にはフラップとボタンが付けられており、写真のように襟を立てた状態にすることができます。


M44-4.jpg  
襟章は1940年5月9日に採用となったマウスグレー各兵科共通タイプです。
なお下士官以上になると野戦服の襟の淵には通常トレッセを取り付けることができるのですが、M44野戦服の場合、取り付けられていないケースが多く存在しています。


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肩章のトレッセから階級は伍長と思われますが、襟にはトレッセが付いていません。Photo by coutesy of Ramsey


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国家鷲章は逆三角形のBEVOタイプで、M43規格帽と同様に縫い付けを簡単にすることができます。


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こちらは工兵科?の軍曹の写真ですが、国家鷲章が刺繍タイプになっています。Photo by coutesy of Ramsey


M44-7-1.jpg  
袖口のサイズをボタンで調節できるようになっていますが、ボタンの数が2個から1個に減っています。
ただしその分、ボタンホールが2個に増えているので機能は変わりません。
(ところが最末期タイプになると、袖口のサイズ調整機能の無い筒型の袖になります)


前述した通り、M44野戦服が採用されたのは敗戦の7ヶ月前という状況だった為、当時の写真は少なく、今回掲載したような写真館で撮影したポートレートか連合軍に投降した時に撮られたものが大半を占めます。

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M44野戦服を着た山岳猟兵。どこか駐屯中の街で撮影されたものでしょうか?袖をまくっているのと、中にシャツを着ていないことから、比較的温暖な地域と思われます。Photo by coutesy of Ramsey

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こちらも前線で撮影された貴重な写真。M43規格帽にM44野戦ズボンというまさに末期のスタイルです。Photo by coutesy of Ramsey


こちらはYoutubeにアップされていたカラー映像ですが、2分50秒あたりでM44を着た若い兵士の映像が出てきます。

M44-19.jpg

これまでのドイツ軍野戦服の変遷とM44野戦服が開発された時代背景を知っているだけに、これまでなんとなく末期に作られた貧相な服というイメージを持っていましたが、実際に手に取って見てみると、結構手の込んだ作りになっていると感じました。
もしこれが何の予備知識も無く、はいっと渡されたら別の感想になっていると思います。
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