配給カード(Lebensmittelkarten)

こんにちは。まだまだ残暑が厳しいですが、夜はだいぶん涼しくなりましたね。
さてドイツ軍ファンとして『月刊アームズマガジン 』の連載記事「リエナクトメントのススメ」をいつも楽しく読んでいるのですが、現在発売中の10月号には戦時中の食糧事情と配給制度について描かれており、今回は便乗で配給カード(Lebensmittelkarten)について記事をアップしたいと思います。

rationcard11.jpg
以前こちらでも記事にしましたが、ドイツは第一次世界大戦中にイギリスの海上封鎖により深刻な食糧難に陥り、76万人の餓死者を出してしまいます。ドイツにとって食糧不足はトラウマであり、1939年に第二次世界大戦が始まると、再び国家による食糧統制が施行されます。

rationcard13.jpg 
「ハムスターのように貯め込む汝を恥よ!」
日本でも太平洋戦争による深刻な食糧不足から配給制度が敷かれ、「米穀通帳」などによって配給が行われていたことは、祖父母や両親から聞かされてなんとなく知っていましたが、この記事を書くにあたり改めて調べてみました。

消費統制(Verbrauchslenkung)
消費統制は、原則として、備蓄の放出、輸入促進、生産統制等の供給サイドの管理措置を講じてもなお十分な効果がない場合に限って実施される。消費統制の目標は、消費量の抑制と公正・均一な分配の達成であり、主な手段には次のものがある。

(ⅰ)一般的な販売統制(Generelle Abgabebeschränkung)
一般的な販売統制とは、店頭での 1 人 1 回当たりの販売量を制限することである。これにより、数量が少ない特定の重要な財に対する買占めを防止し、かつ、配給制の採用に至らない場合でも、財を比較的公正・均一に分配することができる。

(ⅱ)配給制(Rationierung)
長期にわたる深刻な供給危機等の場合に、全国民に対して等量かつ最小限の供給を確保するため、「配給カード」(Bezugsausweis)を個別に支給し、各人がこれと引換えに当該物資を購入する制度をいう。十分な準備期間が必要であり、また、管理コストは膨大になる。

rationcard9.jpg
配給カードは、あくまで購入引き換え券だったんですね。(ずっと無料引き換え券と勘違いしていました)
 
配給制度はドイツ軍がポーランドに侵攻する直前の1939年8月28日に導入され、まずは肉、ラード、砂糖やコーヒから統制が始まり、次にパンや卵も対象となります。
配給カードは、物品によって色が分れていて一目でわかるようになっていました。

rationcard12.jpg

ネットで拾った情報なので確かさは不明ですが、開戦当時は1週間分の配給制限として一人あたり肉やソーセージは700グラム、砂糖は280グラム、ジャムは100グラム、パンは2,400グラム、ラードや脂は1/5リットルだったようです。
ちなみに現代のドイツ成人の一般的な肉の摂取量は男性で103グラム/日、女性で53グラム/日だそうで、もし上記が本当なら十分な量かと思います。(もちろん戦争が進むにつれ、どんどん減っていくわけですが・・・)
なお、より栄養が必要な肉体労働者や育ち盛りの子ども、妊婦用の配給カードもあったようです。

それでは、配給カードを見ていきましょう。まずは主食から。

1. パン(Brot)

brot_1.jpg  
Reichsbrotkarte(赤)
rationcard3.jpg 
こちらはバーデン=ヴュルテンベルク州シュトゥットガルトのVaihingenで発行された配給カードで、使用期限は1939年10月23日から11月19日となっています。切符の単位は1000・500・50グラムで、購入した量の分、マス目を切り取るか、スタンプを押す、もしくはパンチャーで穴を開けることになっていました。

2. 肉(Fleisch)

rationcard18.jpg
Reichsfleischkarte(青)
rationcard2.jpg
この配給カードはヘッセン州のGießenで発行されたもので、期限は上記のパンと同じ1939年10月23日から11月19日となっています。肉(Fleisch)もしくはソーセージなどの加工品(Fleischwaren)用です。

3. ミルク(Milch)

rationcard15.jpg
Reichismilchilkarte(グレー)
rationcard1.jpg 
ミルクは1/4リットル単位の配給となります。マス目には日付が明記されており、使える日が決まっています。

4. 脂肪(Fett)

bacon2.jpg     
Reichsfettkarte(黄)
rationcard4.jpg 
対象はバターもしくは澄ましバター(Butter oder Butterschmalz)、チーズもしくはクワルク=フレッシュチーズ(Käse oder Quark)、マーガリンもしくは植物油もしくは人工油もしくは食用油(Margarin oder Pflanzen oder Kunstspeisefett oder Speiseöl)、ラードもしくはベーコンもしくは牛脂(Schweineschmalz oder Speck oder Talg)となっています。

5. ジャムと砂糖(Marmelade und Zuker)


rationcard19.jpg rationcard20.jpg 
Reichskarte für Marmelade und Zucker(ベージュ)
rationcard5.jpg 
ジャム(ドイツ語でマーマレードはジャムの意味)と砂糖の配給カードです。長期保存が可能な為、他のカードに比べてマス目の数が少なくなっています。

eggs1.png
rationcard26.jpg 
こちらは卵(Eier)が一緒になった配給カード。購入した会社のスタンプが押されています。

6. じゃがいも(Speisekartoffeln)

rationcard21-2.jpg   
Bezugsausweis für Speisekartoffeln(黄)
rationcard6.jpg 
バーデン=ヴュルテンベルク州Heilbronnで1942年に発行された配給カードです。じゃがいもは長期保存が可能な為、期限が約半年間(6月29日から12月13日まで)です。

7. 栄養食品(Nährmittel)

NF-Oatmeal.jpg  
Nährmittelkarte(ピンク)
rationcard_03.jpg   
こちらはヘッセン州カッセル上級都市で発行された1942年12月14日から1943年1月10日まで有効の配給カードで、オートミールやシリアルなどの栄養食品(Nährmittel)、パスタ(Teigwaren)、澱粉(Sago)、片栗粉(Kartoffelstärkemehl)、プディングパウダー(Puddingpulver)といったいわゆる“粉もの”が購入できました。
droctber1.jpg 
このブログではお馴染みのドクトル・エトカーのプディングパウダーです。以前、油脂も卵も使わない"戦時ケーキ"をこちらで紹介しました。プディングは少ない燃料費で作れるうえに栄養価の高い合理的で経済的な食品だったようです。

このような食糧の他に、石鹸配給カード(Reichsseifenkarte)や衣服配給カード(Reichskleidekarte)なども存在しています。
なお、酒や煙草などの嗜好品は配給カードでは無く20パーセントの税金かけることで消費を抑制したようです。

ration-foods2.png 
終戦までナチスドイツの配給制度は続けられます。当時の事を描いた本には、市民が末期の食糧不足で苦しむ様子が描かれていますが、第一次世界大戦の様な深刻な飢餓状態にはならなかった事を考えると十ニ分に機能していたと思われます。

ベルリン終戦日記―ある女性の記録

白水社
売り上げランキング: 491,345

関連記事
スポンサーサイト


FC2 Blog Rankingに参加しています。

←ポチっと応援お願いします!

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

この記事へのコメント

- 鍛冶屋 - 2017年09月20日 09:17:03

自分達の小さい頃(昭和40年代初め)はまだ、米穀通帳を付けていましたっけ^^;)。

Re: タイトルなし - エーデルマン - 2017年09月20日 21:36:36

鍛冶屋さん

その頃はまだ配給制度があったんですね。

トラックバック

URL :

Profile

エーデルマン

Author:エーデルマン
脳内の99%をドイツ軍が占めている、そんなアラフィフ親父です。
注)当時のドイツ軍の装備・生活用品に興味がありますが、特定の団体・思想を支持するものではありません。

↓管理人へのMailはこちらからどうぞ↓

Category
FC2 Counter
Comments
Archive
Links
eBay
エーデルマンの参考文献
Ss-brigadefuhrer Und Generalmajor Der Waffen-ss Theodor "Teddy" Wisch
Ss-brigadefuhrer Und Generalmajor Der Waffen-ss Theodor "Teddy" Wisch
個人秘蔵の未公開写真が満載でLSSAHファンは必読の書。著者は友人

WWII ドイツ軍兵器集 〈火器/軍装編〉 (1980年) ワイルドムック
WWII ドイツ軍兵器集 〈火器/軍装編〉 (1980年) ワイルドムック
長年教科書だった本。小宮氏の「ドイツ軍の全貌」の解説がすごい

最強の狙撃手
最強の狙撃手
ドイツ軍No.2スナイパーの回顧録。狙撃シーンもすごいが、当時の兵士の生活も垣間見れる一冊

第2次大戦ドイツ軍装ガイド
第2次大戦ドイツ軍装ガイド
鮮明な写真による軍装品説明はブログ写真撮影の参考にしています

ドイツ軍装備大図鑑: 制服・兵器から日用品まで
ドイツ軍装備大図鑑: 制服・兵器から日用品まで
軍装品のカタログとも言えるボリュームは圧巻。実は密かに打倒を狙っていたり・・・

第2次大戦ドイツの自動火器
第2次大戦ドイツの自動火器
実物のFG42実射レポートを読めるのはこの本だけ

“グロースドイッチュランド”師団写真史―東部戦線におけるGD機甲擲弾兵師団1942‐1944
“グロースドイッチュランド”師団写真史―東部戦線におけるGD機甲擲弾兵師団1942‐1944
ドイツ国防軍好きなら買って損はなし

図説ドイツ軍用銃パーフェクトバイブル (歴史群像シリーズ Modern Warfare MW)
図説ドイツ軍用銃パーフェクトバイブル (歴史群像シリーズ Modern Warfare MW)
ドイツの軍用銃の専門書でビジュアル的に見ていて楽しい

ドイツの小銃拳銃機関銃―歩兵兵器の徹底研究 (光人社NF文庫)
ドイツの小銃拳銃機関銃―歩兵兵器の徹底研究 (光人社NF文庫)
ドイツ軍用銃のバイブル的な書。ドイツ軍スナイパートップ3への一問一答が興味深い

Feldbluse: The German Soldier's Field Tunic, 1933-45
Feldbluse: The German Soldier's Field Tunic, 1933-45
M33からM44までドイツ陸軍の野戦服を網羅。特にM36以前の野戦服は必見

Rations of the German Wehrmacht in World War II
Rations of the German Wehrmacht in World War II
とにかく当時のドイツ兵が食べていた糧食にこだわった一冊

武器と爆薬―悪夢のメカニズム図解
武器と爆薬―悪夢のメカニズム図解
迫撃砲はどうやって砲弾を飛ばすのか?小銃擲弾は?ほかにも大砲や爆弾のしくみを源文マンガでわかりやすく解説

グラフィックアクション GRAPHIC ACTION 1993年 No.17
グラフィックアクション GRAPHIC ACTION 1993年 No.17
このシリーズは市場で見つけたら買うべし

ドイツ武装親衛隊軍装ガイド (ミリタリー・ユニフォーム)
ドイツ武装親衛隊軍装ガイド (ミリタリー・ユニフォーム)
WSS専門だけど全部実物!

鼠たちの戦争〈上〉 (新潮文庫)
鼠たちの戦争〈上〉 (新潮文庫)
映画「スターリングラード」の原作本的な内容だが100倍面白い

鼠たちの戦争〈下〉 (新潮文庫)
鼠たちの戦争〈下〉 (新潮文庫)


スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943 (朝日文庫)
スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943 (朝日文庫)
塹壕から故郷へ送った兵士の手紙が興味深い「クリスマスはドイツ風に」の章は涙なくしては読めません

ケルベロス 鋼鉄の猟犬 (幻冬舎文庫)
ケルベロス 鋼鉄の猟犬 (幻冬舎文庫)
ヒトラーが暗殺された後の撤退戦を描いた架空小説。小道具にこだわるところがマニアっぽい

Flag Counter
QR CODE
QR