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ナルヴィク盾章(Narvikschild)

こんにちは、エーデルマン@自宅待機中です。1か月前に更新した時は、まさかコロナウイルスがここまで蔓延するとは思っていませんでした。現在欧米を中心に感染・死者が急増、日本も東京で感染者が一日で60人以上出るなど収束する気配が微塵もありません。東京オリンピックも延期になったし、こうなったら長期戦を覚悟するしかありませんね。

さて、気を取り直して今回はナルヴィク盾章(Narvikschild)を紹介したいと思います。

Narvik00.jpg
こちらはノルウェー北部の港町ナルヴィクをめぐって行われた戦闘、"ナルヴィクの戦い"(1940年4月9日~6月8日)に参加したドイツ軍兵士に授与された盾章です。

ナルヴィク盾章についての説明はいつもの様にWikipediaから引用させていただきます。

1940年8月19日にアドルフ・ヒトラーにより制定されたこの盾章は、ミュンヘンの芸術家リヒャルト・クライン(英語版)によってデザインされた。

主に亜鉛を原料として生産されたが、初期では真鍮を原料として生産されたこともある。盾章は所属組織により盾及び佩用時に使用する当て布の色が異なっていた。

陸軍 - 盾:銀色 当て布:灰色
空軍 - 盾:銀色 当て布:灰青色
海軍 - 盾:金色 当て布:深青色

デザイン
上部に国家鷲章を配し、その下に「NARVIK」と書かれている。盾の部分には、陸軍を表すエーデルヴァイス、海軍を表す錨、空軍を表すプロペラが、ナルヴィクの戦いが勃発した年である「1940」とともに描かれている。

佩用
基本的に軍服の左上に当て布を当てて佩用する。しかし、美しさを求め、盾章単体をピンで直接佩用する者もいた。

授与総数

陸軍 - 2,755人(死後追贈96人)
空軍 - 2,161人(操縦士1,309人、落下傘部隊756人、死後追贈410人)
海軍 - 3,661人(駆逐艦乗組員2,672人、商船乗組員442人、死後追贈432人)
-Wikipedia「ナルヴィク盾章」より-
”陸軍を表すエーデルヴァイス”と書かれていますが、ご存知の通りエーデルヴァイスは山岳部隊のシンボルで、まさにこの戦い“”に参加した山岳猟兵を称えたものとなっています。

まずはドイツがなぜノルウェーに侵攻したのか、非常にざっくりですが説明してみます。

ー1939年9月に英仏との戦争が勃発し、100%輸入に頼っていた鉄鉱石が中立国であるスウェーデンからしか入ってこなくなった。

Narvik10.jpg 
戦争をするには兵器の原料である鉄が必要不可欠です。スウェーデンは良質な鉄鉱石の産地でした。

ースウェーデンの鉄鉱石は夏季はボスニア湾からバルト海を通ってドイツへ海上輸送されていたが、冬季はボスニア湾が凍結する為、ナルヴィク港からノルウェーの領海内を航行して運ばれていた。

 Narvik9.jpg 
ピンクは夏季、青は冬季ルート。ナルヴィクは不凍港として有名でした。

ーヒトラーはイギリスが海上封鎖を目的にノルウェーへ侵略することを懸念、先にノルウェーを占領し輸送ルートを確保すると同時に、イギリスを攻撃するUボート基地として利用する侵攻作成を計画した。

ナチスドイツは英仏による侵略からノルウェーの中立を保護する為という口実で、1940年4月9日(ヴェーザー日)にデンマーク・ノルウェーへ侵攻します。(ヴェーザー演習作戦:ドイツ語: Unternehmen Weserübung)


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ヴェーザー演習作戦でデンマークへ侵攻したドイツ国防軍とデンマーク軍との6時間弱の戦闘は『エイプリル・ソルジャーズ ナチス・北欧大侵略 』、ノルウェー侵攻前夜から国王が降伏要求を正式に拒否するまでの4日間については『ヒトラーに屈しなかった国王』で描かれています。

ノルウェー侵攻の第一目的であるナルヴィク港にはエデュアルト・ディートル少将が指揮する第3山岳師団第139山岳猟兵連隊が上陸、4月9日早朝、ノルウェー防衛軍からの抵抗もなく無血占領に成功します。
Narvik5.jpg
しかしながら、山岳部隊を運んできたドイツ海軍の駆逐艦10隻はイギリス艦隊との二度の海戦(第一次、二次ナルヴィク海戦)で全滅、制海権を奪われたドイツ軍(上陸した山岳猟兵2,000名と海戦で生存したドイツ駆逐艦乗員2,600名)はナルヴィクで孤立します。
Narvik6.jpg
その後、救援の為パラシュート降下した1,000名の降下猟兵が加わり5.600名の規模になりますが、4倍近い戦力の連合軍(ノルウェー、イギリス、フランス、ポーランドの24,500名)に北・西・南の3方から攻められ、ナルヴィクから撤退、スウェーデン国境に近いビョルンフィエル(Bjørnfjell)で辛うじて戦線を維持します。

5月27日の戦線
Narvik30.jpg

物資は航空投下に頼るのみ、追い詰められたドイツ軍は降伏かスウェーデンへの逃避か、決断を迫られますが、幸運にも5月10日にドイツがフランスへ侵攻を開始、英仏軍はノルウェー防衛から手を引かざるを得なくなります。
Narvik12.jpg
連合軍は6月8日までに撤退、ドイツ軍は再びナルヴィクを占領します。英仏が離脱し孤軍となったノルウェー軍はドイツ軍に休戦を申し込み、ナルヴィクの戦いは終了しました。

Narvik11.jpg
ナルヴィクの戦いで生き残ったドイツ軍兵士。山岳猟兵の他に海軍歩兵、降下猟兵が写っています。


Narvik00.jpg
それではナルヴィク盾章の細部を見て行きましょう。こちらは銀色の盾にフィールドグレイの当て布から、陸軍・山岳猟兵部隊に授与された盾章となります。

Narvik19-3.jpg

国家鷲章と"NARVIK"の文字。

Narvik18.jpg
"1940"とエーデルヴァイス、海軍を表す錨、空軍を表すプロペラのレリーフ。

なお欧州のコレクターの調査では、ナルヴィク盾章のバリエーションは6つあるとされています。上記のものはType 3と呼ばれており、スリムな鷲の足爪に小ぶりな"4"が特徴です。(バリエーションについて書かれているフォーラムはこちら
Narvik2.jpg
背面には亜鉛製のバックプレートに4つの爪で固定されています。当て布は二重になっており膠(にかわ)で接着されています。

Narvik24.jpg 
ナルヴィク盾章を佩用する山岳猟兵。

Narvik4.jpg
ナルヴィク盾章を授賞した山岳猟兵部隊を閲兵するエデュアルト・ディートル少将。ディートル少将はナルヴィクの戦いで勝利した功績により、1940年5月9日に騎士鉄十字章を授賞、さらに6月19日には柏葉付き騎士鉄十字章の初授与者となります。

ところでナルヴィク盾章は他の勲章と同様にフェイクが存在しています。典型的なフェイクはType3に似ているということで、オリジナルとフェイクの比較写真を載せたいと思います。

Narvik29.jpg   
まずはNARVIKの文字です。オリジナルはNとAとRが底辺でつながっていますがフェイクは離れています。

Narvik21.jpg
Nのクローズアップ。フェイクは文字の角の部分が厚くなっています。

Narvik22.jpg

数字も角が幅広くなっています。また非常に分かりづらいですが、40の"4"が"0"よりも僅かに低い位置にあります。このタイプは"Small 4"や"Low 4"と呼ばれております。

もちろんフェイク業者もこの点は認識しており、最近では3Dプリンターなどを駆使しミクロン単位で本物そっくりに作ってくるので判別が難しくなってきています。フェイクを避けるのは、できるだけ信頼できる業者やコレクターから購入、そして入手後は"信じる者は救われる”、で忘れてしまいましょう。

最後にナルヴィクの戦いを描いた映画『Narvik - Hitlers First Defeat(仮題)』がノルウェーで制作中とのこと。2020年12月末には公開予定のようです。(映画に関するニュースはこちら

Narvik26.jpg
ナルヴィク湾に佇むノルウェー兵士。炎上しているのはドイツ駆逐艦でしょうか。


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この記事へのコメント

- otto - 2020年04月03日 15:17:56

初期における陸軍の物はボトルグリーンウール生地の物も散見されます。

Re: タイトルなし - エーデルマン - 2020年04月03日 17:26:34

Ottoさん

> 初期における陸軍の物はボトルグリーンウール生地の物も散見されます。
そうなんですね!当然、盾は真鍮製でしょうね。

- otto - 2020年04月03日 18:40:27

その通りです!1985年頃の国内で、高価で買えませんでしたが....神々しい美しさが有りました。

Re: タイトルなし - エーデルマン - 2020年04月04日 01:29:38

Ottoさん

> その通りです!1985年頃の国内で、高価で買えませんでしたが....神々しい美しさが有りました。

国内にあるなら、いつか実物を見たいですね。
(所有者様、弊ブログを見られたら、ぜひ写真送ってください!)

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