fc2ブログ

斧(Klauenbeil)

こんにちは、エーデルマンです。全国で感染者が急増、比較的若い世代の人が入院できずに自宅療養中に亡くなるというなんともやり切れないニュースが連日流れております。幸い田舎に住んでいる為か、今のところ周りで感染したという話は聞こえてきませんが、気を緩めず引き続き自粛モードで感染予防に努めたいと思います。

本日はドイツ軍が使用した斧(Klauenbeil)をアップしたいと思います。

axe0-0.jpg
こちらは"Klauenbeil"(直訳で爪斧)という、釘抜きがついた斧です。全長35cm、ブレードの横幅は19cmです。

axe32.jpg
斧は樹木の伐採、枝の切り払い、木材の生成が出来る一方で、その逆の行為も可能な為、陣地構築や障害物の破壊を任務とする工兵部隊へは標準装備として支給されました。

axe3.jpg
ブランデンブルク州Fürstenwaldeで1938年に撮影されたPionier-Lehr-Bataillon 2 (第2工兵教育大隊)の訓練風景。前列左から2人目の兵士が斧を持っています。

axe23-1.jpg
ブレードは鋼の塊からの削り出しで刃はグラインダー等で研いだ程度で鋭利では無い為、切るというよりは、叩き割るという感じです。
axe6.jpg
ハンドルの材料は不明ですが、触感からカシやナラ、またはクルミ材のようです。

axe7-1.jpg
反対側は金槌と釘抜きを兼ね備えた形状になっています。

axe27.jpg
山小屋を建造中の山岳猟兵。屋根の上にいる猟兵が斧で釘を打っています。

axe8-3.jpg
ブレードにある刻印です。"dgu"(メーカー名は不明)と"H41"(陸軍へ1941年に納品)、アムトは判読が難しいですが359のように見えます。

なお、斧は工兵部隊のみならず迫撃砲部隊にも支給されました。
axe5.jpg
こちらは8 cm sGrW 34迫撃砲のマニュアル『Die Ausbildung am s.Gr. Werfer 34 (81 mm).』に掲載されている写真ですが、収納ケースに入った斧をウエストベルトに吊り下げた兵士が写っています。

しかし土木や建築作業が主たる工兵部隊に対して斧が支給されるのは理解できるのですが、迫撃砲部隊の標準装備になっているのがどうも解せません。もし理由をご存知の方がいらっしゃいましたら、情報提供いただけると助かります。

追記:『Die Ausbildung am s.Gr. Werfer 34 (81 mm)』の中に分隊の装備についての記述がありました。
axe28.jpg

axe29.jpg

1. 分隊長 (Gruppenführer)
-拳銃 (Pistole) .
-双眼鏡(Doppelfernrohr), 方位磁石(Kompass)
-標桿 (Richtstäbe).
-携帯スコップ (Kurzer Spaten) 
-書類ケース(Meldekartentasche)

2. 砲撃長 (Werferführer)
-RA35標準器 (Richtaufsatz 35)
-底盤 (Bodenplatte) とその背負子 (Tragevorrichtung)
-弾薬箱 (Patronenkasten)
-拳銃 (Pistole).
-携帯スコップ (Kurzer Spaten) 

3. 兵士1 (Schütze1  *Richtschütze)
-支持架 (Zweibein) とその背負子(Tragevorrichtung)
-拳銃 (Pistole) 
-斧 (Klauenbeil)

4. 兵士2 (Schütze2  *Ladeschütze)
-砲身 (Werferohr) とカバーとその背負子(Tragevorrichtung)
-メンテナンスキット
-拳銃 (Pistole) 
-携帯スコップ (Kurzer Spaten)

5. 兵士3 (Schütze3)
-弾薬箱 x2 (Patronenkasten)
-弾薬携帯用ストラップ (Tragegurt 34)
-小銃 (Gewehr)
-拳銃 (Pistole)
-携帯スコップ (Kurzer Spaten)

6. 兵士4 (Schütze4)
-弾薬箱 x2 (Patronenkasten)
-弾薬携帯用ストラップ (Tragegurt 34)
-小銃 (Gewehr)
-拳銃 (Pistole)
-鋸 (Stichsäge)

7. 兵士5 (Schütze5)
-弾薬箱 x2 (Patronenkasten)
-弾薬携帯用ストラップ (Tragegurt 34)
-小銃 (Gewehr)
-拳銃 (Pistole)
-ワイヤーカッター (Drahtschere)

axe30.jpg
斧以外にも、鋸やワイヤーカッターといった道具も支給されていたんですね。
迫撃砲の設置場所は平坦である必要があるので、草木を切り払うのと共に、射角に邪魔となる枝の伐採にも使ったのかも知れません。


axe11.jpg
斧をウエストベルトに吊り下げて運搬する為の収納ケースです。こちらは後期タイプで本革と合成皮革の組み合わせになっているのが特徴です。


axe17.jpg
メーカー名”CWW"(Karl Weiss, Lederwarenfabrik, Braunschweig)と"1943"の刻印があります。


axe12-2.jpg
斧はケースの上部のフラップを上げて差し込みます。

axe13.jpg
収納ケースの底部です。ハンドルを通す穴と巻き尺が入るスペースがあります。



axe15-1.jpg


軍用の20m巻き尺(Maßband 20)。こちらは初期の革タイプで、本体には"HEERESEIGENTUM"(陸軍所有物)と"1937"、メーカー名の刻印、真鍮製のハンドル部分には"20m"と"WaA29"(R. EHRHARDT POESSNECK)の刻印があります。
axe16.jpg
(Courtesy of http://www.mp44.nl/)
上記は後期タイプの陸軍所有物の刻印の入った巻き尺で、スチール製となっています。

axe14.jpg

巻き尺がすっぽりと収まります。それにしても、斧と巻き尺の組み合わせには若干の違和感がありますが、ひょっとすると迫撃砲部隊へ支給されたことに関連するのかも知れません。

斧の収納ケースにはいくつかバリエーションがあるようです。

Bundesarchiv_Bild_101I-136-0873-20A2C_Russland2C_Soldaten_bei_Besprechung_vor_Schützenpan
こちらの部隊は迫撃砲小隊と思われますが、中央の兵士が迫撃砲のマニュアルと同じタイプの収納ケースを吊り下げているのが分かります。

axe19.jpg
image_4708287.jpg
こちらもネット拾った写真ですが、巻き尺ポケットが有りで、ハンドルと銃剣を固定するループが無いタイプです。

axe21.jpg
ウエストベルトに銃剣と一緒に吊り下げた状態です。
axe0.jpg
工兵装備に共通するのは、中身よりも収納ケースの方が入手困難なことですが、今回は特にそう感じました。
沼装備である工兵シリーズは一応コンプしたので、この記事で最後にしたいと思います。


FC2 Blog Rankingに参加しています。

←ポチっと応援お願いします!

この記事へのコメント

承認待ちコメント - - 2021年09月03日 11:29:05

このコメントは管理者の承認待ちです

Re: タイトルなし - エーデルマン - 2021年09月05日 12:13:06

hidetonoさん

いつも訪問いただきありがとうございます。
米軍の迫撃砲部隊に関する貴重な情報ありがとうございます。
国が違っても斧が標準装備になっているのは興味深いですね。
記事にも書きましたが、整地・斜線確保が濃厚な線かも知れません。

- - 2021年09月05日 17:24:14

自衛隊で迫撃砲部隊経験者です。
手斧の使用に関しては、記述通りだと思います。自衛隊では鉈でした。
巻き尺は、砲分隊間隔の保持のために必要な物です。
数門で構成される関節照準の火砲の射撃方向は、主に第2分隊を基準として与えられます。攻撃目標が砲列に対し平行ならば2分隊の方向のままで良いのですが、機関銃陣地のような点目標だと、着弾を集中させなければなりません。射距離と砲間隔がわかれば、方向を詰める角度(度数)が算出できます。
射弾散布が広い迫撃砲は、点目標への攻撃は向かないのですが、火力が集中すると、制圧効果が上がります。

Re: タイトルなし - エーデルマン - 2021年09月07日 08:20:58

おお、本職の方にコメントいただけるとは!
なるほど、鉈の方がより草木や枝を払うには向いていると思います。
当時も鉈はあったと思いますが、多目的に考えて斧が装備されたのかも知れません。
おかげでスッキリしました。
加えて、巻き尺が迫撃砲部隊に必要な装備なのも合点です。
専門の方で無いと絶対に分かり得ない情報でした。大変感謝いたします。

トラックバック

URL :

Profile

エーデルマン

Author:エーデルマン
脳内の99%をドイツ軍が占めている、そんなアラフィフ親父です。
注)当時のドイツ軍の装備・生活用品に興味がありますが、特定の団体・思想を支持するものではありません。

↓管理人へのMailはこちらからどうぞ↓

Category
検索フォーム
FC2 Counter
Comments
Archive
Links
エーデルマンの参考文献
Ss-brigadefuhrer Und Generalmajor Der Waffen-ss Theodor "Teddy" Wisch
Ss-brigadefuhrer Und Generalmajor Der Waffen-ss Theodor "Teddy" Wisch
個人秘蔵の未公開写真が満載でLSSAHファンは必読の書。著者は友人

第5SS装甲師団「ヴィーキング」写真集 大平原の海賊たちI

著者は日本有数のコレクター。ヴィーキング師団隊員の生き生きした表情が印象的

第5SS装甲師団「ヴィーキング」写真集 大平原の海賊たちII


SSの軍装―UNIFORMS OF THE SS 1938‐1945

SSの軍装のすべてがこの一冊に

WWII ドイツ軍兵器集 〈火器/軍装編〉 (1980年) ワイルドムック
WWII ドイツ軍兵器集 〈火器/軍装編〉 (1980年) ワイルドムック
長年教科書だった本。小宮氏の「ドイツ軍の全貌」の解説がすごい

最強の狙撃手
最強の狙撃手
ドイツ軍No.2スナイパーの回顧録。狙撃シーンもすごいが、当時の兵士の生活も垣間見れる一冊

第2次大戦ドイツ軍装ガイド
第2次大戦ドイツ軍装ガイド
鮮明な写真による軍装品説明はブログ写真撮影の参考にしています

ドイツ軍装備大図鑑: 制服・兵器から日用品まで
ドイツ軍装備大図鑑: 制服・兵器から日用品まで
軍装品のカタログとも言えるボリュームは圧巻。実は密かに打倒を狙っていたり・・・

第2次大戦ドイツの自動火器
第2次大戦ドイツの自動火器
実物のFG42実射レポートを読めるのはこの本だけ

“グロースドイッチュランド”師団写真史―東部戦線におけるGD機甲擲弾兵師団1942‐1944
“グロースドイッチュランド”師団写真史―東部戦線におけるGD機甲擲弾兵師団1942‐1944
ドイツ国防軍好きなら買って損はなし

図説ドイツ軍用銃パーフェクトバイブル (歴史群像シリーズ Modern Warfare MW)
図説ドイツ軍用銃パーフェクトバイブル (歴史群像シリーズ Modern Warfare MW)
ドイツの軍用銃の専門書でビジュアル的に見ていて楽しい

ドイツの小銃拳銃機関銃―歩兵兵器の徹底研究 (光人社NF文庫)
ドイツの小銃拳銃機関銃―歩兵兵器の徹底研究 (光人社NF文庫)
ドイツ軍用銃のバイブル的な書。ドイツ軍スナイパートップ3への一問一答が興味深い

Feldbluse: The German Soldier's Field Tunic, 1933-45
Feldbluse: The German Soldier's Field Tunic, 1933-45
M33からM44までドイツ陸軍の野戦服を網羅。特にM36以前の野戦服は必見

Rations of the German Wehrmacht in World War II
Rations of the German Wehrmacht in World War II
とにかく当時のドイツ兵が食べていた糧食にこだわった一冊

武器と爆薬―悪夢のメカニズム図解
武器と爆薬―悪夢のメカニズム図解
迫撃砲はどうやって砲弾を飛ばすのか?小銃擲弾は?ほかにも大砲や爆弾のしくみを源文マンガでわかりやすく解説

グラフィックアクション GRAPHIC ACTION 1993年 No.17
グラフィックアクション GRAPHIC ACTION 1993年 No.17
このシリーズは市場で見つけたら買うべし

ドイツ武装親衛隊軍装ガイド (ミリタリー・ユニフォーム)
ドイツ武装親衛隊軍装ガイド (ミリタリー・ユニフォーム)
WSS専門だけど全部実物!

鼠たちの戦争〈上〉 (新潮文庫)
鼠たちの戦争〈上〉 (新潮文庫)
映画「スターリングラード」の原作本的な内容だが100倍面白い

鼠たちの戦争〈下〉 (新潮文庫)
鼠たちの戦争〈下〉 (新潮文庫)


スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943 (朝日文庫)
スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943 (朝日文庫)
塹壕から故郷へ送った兵士の手紙が興味深い「クリスマスはドイツ風に」の章は涙なくしては読めません

ケルベロス 鋼鉄の猟犬 (幻冬舎文庫)
ケルベロス 鋼鉄の猟犬 (幻冬舎文庫)
ヒトラーが暗殺された後の撤退戦を描いた架空小説。小道具にこだわるところがマニアっぽい

泥まみれの虎―宮崎駿の妄想ノート (大日本絵画)

ナルヴァ戦線で活躍したオットー・カリウスの自伝を宮崎駿監督が漫画化。「ティーガー薬局」を営むカリウスを訪問しインタビューという企画が素晴らしい

Flag Counter