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M17 スチールヘルメット (Stahlhelm 17)

こんにちは、エーデルマンです。ロシアがウクライナの東部と南部4州を強制的に併合し"自国"にしてしまいました。ロシア政府の公式発表では住民投票で賛成多数を得た為と言っていますが、兵士が住民を一軒一軒回って投票をさせている映像もニュースに流れており、インチキであることは間違いありません。

さて、本日はM17スチールヘルメット((Stahlhelm 17)を記事にしたいと思います。
M17AUS_3-3.jpg
1914年6月のサラエボ事件をきっかけに勃発した第一次世界大戦でドイツ帝国軍は革製のピッケルハオベより防護性能が優れたスチールヘルメットを導入します。
この時に導入されたヘルメットは、"石炭バケツ"という渾名の通り縦長の形状と、ツノのように飛び出たベンチレーションが特徴的です。
M17AUS_12.jpg
ちなみにベンチレーションの突起部は、防弾シールドを引っ掛ける為にあるということを、恥ずかしながら最近まで知りませんでした。

このドイツ帝国のスチールヘルメットには、M16、M17、M18の3種類が存在しています。

M16:ライナーバンドの材質が革製、スカート部分にチンストラップ金具留めリベットがあり
M17:ライナーバンドの材質がスチール製、スカート部分にチンストラップ金具留めのリベットあり
M18:ライナーバンドが材質がスチール製、チンストラップ金具留めのリベット無し

M16とM17の違いは内側を見ないと判断できませんが、M18とはリベットの有無で識別できます。

なお、非常にマニアックな視点となりますが、映画『西部戦線異状なし』では物語が進むにつれて主人公のヘルメットのタイプが変わっていきます。

Im Westen nichts Neues1
入隊~最初の戦闘シーンはピッケルハオベ。

Im Westen nichts Neues2
二度目の戦闘シーンではM16/17ヘルメットを着用。チンストラップ金具留めのリベットがスカート部に付いています。
ん?ヒムメルシュトースのヘルメットはベンチレーションの突起が無い?

Im Westen nichts Neues3
このシーンでのヘルメットはM18です。M16/17にあったリベットがありません。(〇印のところ)



第一次世界大戦で生産されたスチールヘルメットは750万個。戦後のヴァイマール共和国軍10万人に供給され、余剰となった分はフライコーア(ドイツ義勇軍)で使用されたり他国への輸出されます。

M17AUS_7.jpg

1935年3月にナチスドイツは再軍備宣言し徴兵制を復活させると同年秋までに兵士の数は83万人まで急増、正式モデルのM35スチールヘルメット(1935年6月25日付採用)では足りない分を補う形で再利用されました。
M17AUS_8.jpg
これらのヘルメットはコレクターの間では"トランジショナルモデル"(移行期モデル)と呼ばれており、フェルトグラオの塗装に国家鷲章/国家色のデカールが貼られています。
M17AUS_0-1.jpg
こちらがそのトランジショナルモデルのスチールヘルメットとなります。国家鷲章のデカールが左側、国家章が右側に貼られています。
M17AUS_1-1.jpg
このヘルメット、よく見るとM16/17やM18とは違って、チンストラップ金具留めのリベットが高い位置にあります。このタイプは"オーストリア型M17"と呼ばれており、オーストリア=ハンガリー帝国が採用したモデルとなります。

M17AUS_5s.jpg
オーストリア=ハンガリー帝国兵士の軍装。スチールヘルメットのリベットの位置に注意。

ここからは少し脱線して、ナチスドイツによるオーストリア併合(アンシュルース)について。

オーストリア=ハンガリー二重帝国は第一次世界大戦後に崩壊、ハンガリーやチェコスロバキア、ポーランドなどが独立、オーストリア共和国は経済的に単独では立ち行かなくなり、ヒトラーはナチスが台頭するドイツは併合(アンシュルース)を画策、政治的な駆け引きや、反対派の暗殺など紆余曲折の末、オーストリアをドイツの一州とする法案が1938年3月12日に成立、翌13日にはドイツ「エスターライヒ州」となります(その後、1938年10月14日に「オストマルク州」に改称)

一か月後の4月10日にはドイツとオーストリア両国でアンシュルースの是非を問う国民投票が行われ、97%の賛成を得ます。

Stimmzettel-Anschluss.jpg
こちらはアンシュルースの投票用紙。賛成(Ja)を記入する〇は反対(Nein)より大きく中央にあり、最初から賛成を前提とした投票であったことが分かります。冒頭でウクライナ4州の住民投票のことを書きながらこの国民投票が思い浮かび、記事にしようと思った次第です。

M17AUS_9.jpg
ただし、ロシアによるウクライナ4州併合とは違い、当時オーストリア国民の大多数はドイツとの統一を支持しており、進駐したナチスドイツ軍は各地で熱狂的な歓迎を受けます。上記写真で行軍する兵士はリュックサックから山岳部隊と思われますが、一次戦タイプのヘルメットを被っています。

ドイツの指導者兼首相のヒトラーは元々オーストリア人ということもあり、国民からすれば、同郷人がすごい出世して故郷に錦を飾ったような感情もあったのかも知れません。

M17AUS_4_20221001213852426.jpg
ヴィーンでナチスドイツの進駐軍を迎え入れるオーストリア共和国軍。国家章のデカールが貼られています。
オーストリア共和国軍は多くの山岳部隊を保有しており、ドイツ軍の山岳部隊は大幅に強化されることになりました。

話をスチールヘルメットに戻しましょう。
M17AUS_21.jpg

M17AUS_21-2.jpg
M17とM35スチールヘルメットとの比較。M17の方がバイザーとスカート部が長くバイザーとの間のカーブも緩くなっています。一次戦タイプのヘルメットは砲弾の破片から頸部を守る点では優れていますが、反面音が聞き取りづらく、自分の声が反響するという欠点が指摘されていました。その為、M35ではスカート部を短くすることでこの問題を解決、軽量化にもなりました。

M17AUS_22.jpg
黒白赤の三色(トリコロール)国家章は1933年に導入され、最初は左側にハンドペイントされます。その後、国家鷲章が制定されると右側側に移動します。国家章のデカールは1940年3月21日付け通達で廃止されますが、トランジショナルモデルでもシングルデカールのヘルメットは存在しるので、1940年以降も使用され続けたことが分かります。

M17AUS_15.jpg
デカールのクローズアップ。DDヘルメットはフェイクが多く、購入前には十分なチェックが必要です。こちらこちらのサイトでホンモノのデカールの写真が掲載されており、比べて見る事が出来ます。ちなみにこちらの国家鷲章デカールはHuber Jordan & Koerner製で主にトランジショナルモデルに使われるタイプとのこと。

M17AUS_16.jpg
ヘルメットの内側。トランジショナルモデルのヘルメットはM31ライナーに換装されているのが特徴です。
ライナーバンドはアルミニウム製、チンストラップ取り付け部が一重になっているので1938年以前の生産となります。

M17AUS_18.jpg
チンストラップの取付金具は角型です。その後ろには換装前のチンストラップの金具が一部残っており、表側のリベットに繋がっています。
M17AUS_2_20221004215105c4f.jpg
オーストリア型M17は第一次世界大戦中に534,013個生産され、ドイツから購入したヘルメット416,000個と併せて100万個弱がオーストリア=ハンガリー帝国軍に納品されたことになります。戦後どれだけのヘルメットがアンシュルースでナチスドイツ軍に接収されたか不明ですが、第二次世界大戦でも消耗されたことを考えると、100年以上の時を経てもなお現存していることに感動を覚えます。

最後に『西部戦線異状なし』のリメイク版が2022年10月28日にNETFLIXで公開されるようなのでトレイラーを貼っておきます。


映像を見る限りピッケルハオベ着用のシーンは無く、全員がM16/17を被っています。
Im Westen nichts Neues4
このリメイク版はドイツ語で制作されるとのこと、非常に楽しみです。


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脳内の99%をドイツ軍が占めている、そんなアラフィフ親父です。
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